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キリスト教では神の愛、隣人愛を意味し、心理学においては自己犠牲的な愛を意味する“アガペー”。
今回は、このアガペーについて気になっている人のために、その言葉の意味や、どんなときに“アガペー”という言葉を使うのか、また同じ愛を指す言葉である“エロース”や“フィリア”“ストルゲー”、そして仏教における“慈悲”とはどのような違いがあるのかを説明していきます。
また、どのようにしてアガペーをを実践すれば良いのかについて併せて説明していくので、アガペーを深く理解し、実践したい人はぜひ参考にしてください。
目次
「アガペー」とはどんな意味？どのような愛か簡単に解説
アガペーは“愛”を意味する言葉です。
しかし、世の中に溢れている“愛”にはさまざまな種類が存在しています。
アガペーはその中のひとつであり、“愛”すべてを指すものではありません。
そこでまずは、アガペーがどのような愛なのかをわかりやすく説明していきたいと思います。
- キリスト教における神の愛と隣人愛
- 無条件で無償の愛
- 心理学では自己犠牲的な愛
- アガペーの類義語と対義語
キリスト教における神の愛と隣人愛
アガペーは、キリスト教において神の愛、または隣人愛を表す言葉とされています。
神様は無限の愛を持って人を愛しているといわれますが、人を愛することによって神が得られるものは特に何もありません。
そのため、神の愛・アガペーは“無償の愛”であると考えられるのです。
また、アガペーが表す“隣人愛”ですが、これもキリスト教の教えによるもので、神様が人を愛することができるように、人同士もまた、お互いに愛を持って接しあうことが望ましいとされる考え方であり、この愛もひとつのアガペーとして捉えられています。
無条件で無償の愛
アガペーは、自分にとって見返りのない、無償の愛となります。
神が人を愛することで何も得るものがないように、自分が隣人を愛することで何も得られなかったとしても、変わらない“不変の愛情”を注ぎ続けることが、アガペーだとされているのです。
人は自分が愛されるために人を愛するなど、見返りを求めてしまいがちですが、そういった損得勘定を一切手放した愛情こそアガペーと呼べるものなのだということを理解しましょう。
心理学では自己犠牲的な愛
アガペーは心理学においては神の愛や隣人愛という解釈ではなく、“自己犠牲的な愛”という意味を持っています。
愛する相手の利益を第一に考えることで、例え自分にマイナスになるようなことが起こっても、自分の身を犠牲にしなければならないことがあっても、変わらずに相手に献身的に尽くすことこそがアガペーであると考えられているのです。
相手を尊重し、相手の幸せだけを願うこと、自分を尊重することや自分が幸せになることは二の次…そういった叶えかたが心理学におけるアガペーとなります。
アガペーの類義語と対義語
アガペーには、神の愛や隣人愛、そして無償の愛の他にもいくつかの類義語があります。
例えば、“見返りを求めない愛”や“慈悲”、“本当の愛”や“真実の愛”とされることもあるのです。
見返りを求めず自分をひたすらに犠牲にしてまでも人を愛する気持ちこそ、本当に愛する相手がいて、本当に愛する心が存在してこそ与えられる愛であるという考えが基本となって、これらの言葉に言い換えることができるのでしょう。
また、アガペーの対義語としては“エロース”があります。
これは、性愛や情熱的な愛など、自らの欲望を持って、相手に強い欲求や情熱をぶつけるようなアガペーとは正反対ともいえる愛のことを指すとされています。
アガペーはギリシャの愛の種類の一つ
アガペーという言葉に少し不思議な響きを感じた人もいるのではないでしょうか。
一体何語なの？語源は？と気になる人もいることと思います。
実はアガペーという言葉は、ギリシャ語が語源となっています。
そして、そのギリシャ語にはほかにもエロースやフィリア、そしてストルゲーという愛が存在するのです。
ここでは、これらにアガペーを加えた4つの愛の特徴や違いについて説明していきましょう。
エロース（エロス）とアガペーの違い
エロースは、“エロス”ともいわれ、ギリシャ神話に出てくる愛と性を司る神の名前が語源となっています。
アレスとアフロディーテの息子であるとされることもあり、弓と矢を持った麗しい青年の姿で描かれることが多いようです。
“エロース”は、私たちが生きている中で最も想像しやすい愛のひとつだといえます。
愛する人へ情熱を持って、そして自らの欲望や欲求を持って与える愛とされており、主に男女間に芽生える愛がエロースであると考えられているのです。
肉体的な愛情…現代でいえばセックスをしたいと思える相手に抱く愛情がエロースだと解釈すると、受け入れやすいのではないでしょうか。
無償の愛や自己犠牲の愛、そして人類すべてに抱く愛というイメージが強いアガペーとはまさに正反対の愛情であると考えられます。
フィリアとアガペーの違い
フィリアは古代ギリシャ語における“友愛”や“友情”、“親友”という言葉が語源となっています。
愛情の種類に関しても、アガペーの隣人愛と似ている部分があります。
フィリアは、いわば仲間に抱く愛情です。
アガペーと違うのは、親しい相手である友人、親友に向けられる愛情であるということ。
同じ“隣人”とはいえ、フィリアの場合にはより親しい仲間内だけに向けられる愛のことを指すのです。
ストルゲーとアガペーの違い
ストルゲーは、古代ギリシャ語で“愛情”や“慈愛”という意味を持っている言葉です。
ストルゲーは家族愛を指しており、親子や兄弟の間でお互いに抱かれる愛のことを指しているとされています。
アガペーと比べると、やはり対象がはっきりと決まっている点は違うといえるでしょう。
家族に対して抱く愛情も無償の愛であるという点では共通していますが、アガペーの場合には愛を与える対象を絞っていないため、ストルゲーのほうが愛情を抱く範囲が狭いということになります。
キリスト教のアガペーと仏教の慈悲の違い
アガペーはキリスト教の教えとなりますが、仏教においてアガペーと共通している部分があるとされる言葉が“慈悲”です。
これらの共通している部分は、自分以外の誰かの幸せを願いそのためにいい行いをするという点でしょう。
基本的に仏教において、“愛”という言葉は人を優しく包み込むような意味合いの言葉ではなく、むしろ執着のようなドロドロした重たい感情として捉えられることが多いとされています。
そこで、良い意味での“愛”とイコールで結ばれる言葉となるのが“慈悲”なのです。
仏教における慈悲は、そもそもブッダから人に対して与えられる愛のひとつとされているため、その点からもアガペーと共通している部分があると考えることができるでしょう。
少し違いがあるとすれば、人同士の間で愛情を与える際には“慈悲”という言葉を使うことがないところだといえます。
アガペーの使い方や例文
アガペーという言葉は、生まれた当時でもそんなに頻繁に使われる言葉ではなかったといわれています。
しかし、現代においてはキリスト教においてはエロースと比較して使われることもあり、また心理学においても無償の愛を表す言葉として使われるようになっているのです。
では、実際にアガペーという言葉を使うときにはどのような使い方をすれば良いのでしょうか。
正しい使い方を確認してみましょう。
- 「キリスト教におけるアガペーは、神が人間に対して注ぐ無限の愛を指す。」
- 「神はアガペーの愛によって私たちを愛している」
- 「アガペーの愛を実践することで、互いへの理解を深めることができる」
- 「彼のボランティア活動はアガペー以外の何物でもない」
- 「母親の子供へのアガペーは、行動に明らかだった」
- 「アガペーによって人類に平和が訪れるようになる」
実際のところ、“アガペー”という言葉自体を聞きなれない、見慣れないと感じるため、例文でも違和感を感じることはあるかもしれません。
一般的な日本語での会話や文面でのやり取りに使われる言葉ではなく、ほとんどが「無償の愛」や「無条件の愛」などといった言葉に置き換えて表現されるようになります。
アガペーという言葉を使うことで反対に専門的に、堅苦しい表現になってしまう場合には、日本語に訳して使うようにしても良いでしょう。
アガペーの愛を実践する方法
日常生活において、アガペーの愛を実践するためにはどのようにすれば良いのか考えている人もいることでしょう。
無償の愛、献身的な愛といっても、それが今までの人生の中で自分が抱いてきた愛とどのように違うのかを考え始めると、余計にアガペーを理解することが難しくなってしまいます。
ここでは、アガペーの愛を実践できる人になるためにはどのように考えて行動していけば良いのかについて説明していきましょう。
小さな親切を積み重ねる
小さな親切を積み重ねることがアガペーの愛を実践する最初の一歩となります。
相手にとって大きなメリットになること、大きな利益を与えることになるほどの親切でなくてもかまいません。
落とし物を拾って届けてあげる、道を譲ってあげる、電車やバスで席を譲ってあげるなどといったほんの小さな親切を日々積み重ねていくことで、「ありがとう」という言葉をもらえる回数も増えていくはずです。
その言葉により人に対して何かしてあげられることの喜びを感じられるようになり、もっともっと人にために尽くしてあげようと思えるようになっていくでしょう。
自分自身を愛する
自分自身を愛して、大切にしてあげることもアガペーを理解し、実践する方法のひとつとなります。
自分を大切にしてあげることや自分を愛することによって、神様からの愛を感じられるようになっていきます。
実際に自分が愛されていることを理解し、どのような愛を受け取っているのかを理解できると、自分自身もアガペーを実践できるようになっていくのです。
まずは自分を大切に、自分を好きになって愛してあげることから始めてみるのも良いでしょう。
人の言葉に耳を傾ける
人を愛することは、何かを与えることだけで表現できるものではありません。
人の言葉に耳を傾け、必要であれば人が望む言葉を贈ること、その人の背中を言葉で押してあげることも、愛のひとつであると考えることができます。
そのため、人の言葉に耳を傾けることもアガペーの実践となると捉えられるのです。
相手の話を遮って自分の話に置き換えてしまうとか、話を聞いているときにどんな返事をしようか考え始めて相手の話が半分程度しか自分の頭に入ってこないとか、そういった状態は相手を愛することにはなっていません。
相手の話をすべて受け入れる状態で聞くことこそ、アガペーなのです。
周りとの関係を大切にする
自分の周りにいる家族や友人との関係を大切にすることもアガペーの実践に繋がります。
自分の周りにいる人と過ごす時間をこれまで以上に質が高いものにしようとする気持ちや、少しでも長く一緒にいようとする気持ちは、相手への愛情に直結すると考えていいでしょう。
他の物事に追われることなく、大切な人と過ごす時間を作ろうとする行動自体がアガペーとなり、そして一緒にいる時間での会話や、相手を思いやる行動ひとつひとつがすべてアガペーに繋がっていくことになります。
神に祈りをささげる
神に祈りをささげることも、アガペーの実践となります。
神がまずアガペーの愛を人に与えてくれている、自分には何も得るものがなかったとしても、それでも深い愛情で包んでくれていることを認めて受け入れ、理解していく。
それこそが、アガペーを理解して自身も実践できるようになる一歩となるのです。
人より先にアガペーは神が授けてくれていたものであるという認識ができれば自然と神へ感謝の気持ちを持ち、自分も同じように…と考えることができるようになっていくでしょう。
アガペーに関するよくある疑問
ここでは、アガペーについての質問をまとめてみました。
同じような疑問を持っていた人は、こちらでその疑問を解消してください。
“カリタス”は、ラテン語で神の愛や隣人への愛、そして無条件の愛や無償の愛を表す言葉です。
つまり、意味することはアガペーとまったく同じとなります。
アガペーが元の言葉であり、カリタスはそのラテン語訳となるため、持っている意味はまったく同じなのです。
アガペーはギリシャ語ですが英語圏の国においてもアガペーはそのままの言葉で使われ、理解されています。
あえて英語で表現するのであれば、「unconditional love」や「divine love」などと表現すれば良いでしょう。
無条件の愛、無償の愛を表現したい場合には「unconditional love」、神からの愛を表現したい場合には「divine love」を使います。
アガペーは特定の個人が作った造語というわけではありません。
もともと古代ギリシャにおいては「愛」を意味する言葉だったものが、新約聖書において、イエス・キリストの「汝、敵を愛せよ」の教えの中で使われるようになり、広く浸透していったと考えられています。
宗教や哲学、ときには個人の価値観によって男女の間にアガペーが存在するのか、しないのかは意見が分かれるところであり、正式な答えはないというのが事実です。
付き合いたてのカップルであればエロースの愛が強いと考えられますが、同じ男女であっても長年連れ添った夫婦の場合にはアガペーが存在する場合もあります。
このように男女間にアガペーは決して存在しないとは言い切れないのです。
アガペーが聖書の中で登場するのは、「愛」がテーマとなった教えのときです。
そのため、“マタイによる福音書”や“ヨハネによる福音書”において、アガペーという言葉が頻繁に出てくるようになります。
・ヨハネによる福音書 13章34節
・マタイによる福音書 5章（山上の垂訓）
・マタイによる福音書 5章46-48節
・レビ記 19章18節
・ルカによる福音書 10章（善きサマリア人のたとえ）
こちらにはそれぞれ無償の愛や見返りを求めない愛、普遍的な愛を説くうえでアガペーという言葉が出てきています。
占い師CRISSのワンポイントアドバイス「アガペーの精神を日常生活に取り入れよう」
人を愛することでまた自分も愛してもらうことができる…どうしても日々の生活の中でそのようにして見返りを求めてしまったりギブアンドテイクの精神が強くなってしまうことはあるわよね。
もちろんそれは決して悪いことではないけれど、まずは自分がちゃんと人を大切にして、愛することを心がけてみることが大切よ。
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