日本古来の呼び方では10月は神無月となります。
10月が「神の無い月」と呼ばれているのはどうしてなのだろうと疑問に思ったことはありませんか?
また、島根では10月は神無月ではなく神在月と呼ばれます。
そして、神在祭という祭も行われているのです。
この記事では、島根(出雲)でだけ神在月と呼ぶ理由や神在祭について詳しく解説していきます。
また、神在月や神在祭に関する豆知識、2021年の神在祭がいつなのか、神在祭の時期に訪れたい神社や一緒に参拝したいお祭りについてもご紹介していきます。
神在月に興味がある人や神在祭に行ってみたい人、必見の記事です。
日本の神道についての理解を深めていきましょう。
目次
神在月と神在祭って?10月を神無月という意味
旧暦10月は神無月、ある地域だけは神在月と呼ぶ
旧暦の10月の異称は神無月(かんなづき)です。
その語源は不明ですが、神無という字が使われていることからさまざまな伝承が生まれたとされています。
本来、神無月の無は「の」を意味しているという考えもあります。
旧暦6月の水無月が水の月であることからも、その考えの正当性が分かるでしょう。
神の月であったはずの神無月が神が無いと捉えられたのは、平安時代以降だと言われています。
神々が10月になると集まって会議をするので、神無月だと言われ始め信じられるようになりました。
日本人の信じる神道では、たくさんの神々がいます。
神は一人しかいないとする宗教ではなく、日本人は八百万の神々を信仰して生きてきたのです。
そして、その神々たちは10月になると集まって会議をします。
神様たちがひとところに集まってしまうため、普段私たちの周りにいる神々たちはいなくなってしまいます。
そうしたことから10月は神無月だと考えられてきました。
ですが、日本で唯一神様の会議の場所となる地だけは、神様がたくさんいる月となります。
そこでは神無月という名称はふさわしくないと考えられ、その地でだけは10月は神在月と呼ばれるようになったのです。
その地域については、次の章で詳しくご説明していきます。
島根県だけ神在月と呼ばれる理由
神無月である10月を神在月と呼ぶのは島根県だけです。
それは八百万の神々が集まる会議が島根県の出雲大社で行われると考えられているから。
神在月に出雲に集まった神様たちは、何についての会議をしているのでしょうか。
それは、人の縁に関することがメインだとされています。
八百万とは無限に近いほど多いという意味。
八百万の神々は私たちのことを見てくれていて、男女の縁結びについてもこの時に決めていると言われています。
神様が集まって私たちの縁について決めていてくれるのならば、一月神様がいなくなるのも仕方がないと思えてきますね。
旧暦10月、出雲にやってきた神々は、まず稲佐の浜に上陸します。
それから出雲大社に向かい会議を行うのだそうです。
会議の期間中、神々は出雲大社の本殿東と西にある十九社に泊まり、期間中は毎日、会議場である上の宮と十九社を往復しています。
神在月に神様が出雲大社に集まる理由
1年に1度神様が集まる場所に出雲大社が選ばれたのは、どういうわけなのでしょうか。
それは出雲大社が生まれた理由が関係しています。
日本最古の歴史書と言われる古事記と日本書紀によると、出雲大社が作られたのは大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)の国譲りがきっかけです。
国譲りというのは出雲の土地を天照大神に譲る代わりに大国主大神が幽世(かくりよ)を治めることを認められたということ。
幽世とは目に見えない神々の世界のことで、幽世統治のための宮殿として与えられたのが出雲大社なのです。
幽世では人の縁や運命が決められると考えられていました。
だから、1年に1度人の縁について神様が話し合う会場には出雲大社がぴったりなのです。
神在月に出雲大社で行われる神在祭
出雲大社では神在月に神在祭が行われます。
日本中の神々が集まるので、それを丁重にお迎えする必要があるというわけなのです。
神在祭はまず稲佐の浜の神迎神事、神楽殿の神迎祭から始まります。
稲佐の浜から神楽殿までを龍蛇神を先頭に導かれて進んでいきます。
そして、神楽殿では出雲大社の宮司である出雲国造は祝詞を奏上し、巫女が舞を踊り神々たちを歓迎するのです。
その後、神在祭、龍蛇神講大祭、縁結大祭、神等去出祭、夜神楽祈祷が行われ神在祭は終了します。
他の場所では神様が出かけてしまいますが、出雲では全国から八百万の神が集まってきます。
それをもてなすために、出雲大社は神在祭を行うのです。
出雲地方に残る神在月の風習「お忌みさん」
出雲以外の地域では神無月にまつわる風習というのは特にないでしょう。
ですが、神在月を迎える出雲ではお忌みさんと呼ばれる、神在月特有の風習があります。
その風習のことをお忌みさんと言います。
これは出雲に集まり会議をしている神々の邪魔をしないようにという気持ちから生まれたものです。
偉い人たちが近くで会議をしていると知ったら、騒がず静かにしているのが常識ですよね?
出雲の人たちもそのような考えで、なるべく神々の会議の邪魔をしたくないと考えました。
だから、神在月の間は出雲では大きな拍手や歌舞音曲は慎まなければいけないとされています。
神様をおもてなしする神楽以外の大きな音を立てるのは遠慮するのが当たり前で、出雲の家庭では「神在祭の期間はなるべく静かに」と言い聞かせられて育つ家庭もあるようです。
この期間は悪ふざけをせずにつつましく暮らすのが出雲の習わしです。
特に神様をお見送りする神等去出祭の夜は、あちこちに神様がいるので夜遊びはせずに真っ直ぐ帰るのが習慣となっています。
神在月や神在祭にまつわるアレコレ豆知識
神在月の禁忌|歌舞音曲・家を建てる・騒ぐ
神在月ではタブーとされることがいくつかあります。
それは歌舞音曲、家を建てること、騒ぐことです。
これらはすべて大きな音が出るものです。
八百万の神々が出雲に集まる理由は、神議り(かみはかり)と呼ばれる会議をするため。
神様たちは縁についての話し合いを真剣にしてくれています。
縁というのは私たちの生活にとても関係があるもの。
その話し合いを邪魔してしまったせいで、本来まとまるはずの話がまとまらなくなってしまってはたまりません。
だから、神々の会議を邪魔しないためにも大きな音を立てることはタブーとされているのです。
出雲の人たちは神在月は音を出して騒ぐことを慎み、家を建てる予定もなるべく神在月を避けるように進めています。
この神在月のタブーは、出雲に住む人だけが知っていればいいというものではなく、神在月に出雲を訪れようとする人も知っていなければなりません。
「せっかくなら神様の集まる10月に出雲を訪れたい」と考える人は多くいるでしょう。
神在月に出雲を訪れるのなら、やってはいけないことは頭に入れておいてくださいね。
神様も楽しんだ新酒|出雲には国の新酒第一号がある
出雲に来る神様たちは出雲大社にだけ行くのではなく、寄り道もするようです。
出雲市にある佐香神社(松尾神社)には、こんな伝説が残っています。
佐香神社に祀られている神は、酒造りの神として有名です。
ある年、出雲神社に話し合いに来ていた神様たちは、たまたま佐香神社に立ち寄りお酒を飲んだそうです。
そして、そのお酒が美味しかったことから、その場に留まり180日間も酒盛りを楽しみました。
この伝説が元になって、佐香神社では神田で採れた新米を使い宮司がお神酒を作っています。
そしてそのお酒は10月13日の秋季大祭で参拝客に振る舞われます。
神様が虜になってしまうお酒、ぜひ私たちも味わってみたいものですね。
佐香神社で作られたお神酒は、国税庁の新酒第一号となります。
神様だけでなく、国にも認められる酒というわけです。
神在月に出雲を訪れるなら出雲大社だけでなく、佐香神社にも立ち寄ってみましょう。
会議に参加せず酒盛りをしている神様たちがもしかしたらいるかもしれません。
十九社は八百万の神々の宿泊所
神在月に出雲大社に集まった神々はどう過ごしているのでしょうか。
神在祭の期間は一週間で、その間神様たちは十九社に宿泊します。
十九社の扉は普段は閉じられていますが、神在祭の期間だけは開かれています。
旧暦10月10日から旧暦10月17日までの期間だけが、神様たちのために十九社の扉が開かれ、神様たちが十九社を出入りしていることがわかるでしょう。
神々のために十九社の扉は開かれていますが、私たちにとっても十九社の扉が開かれている状態を目にするまたとないチャンスとなります。
十九社は出雲大社の本殿の東と西に一棟ずつ、南北に伸びる形で建っています。
神々の宿泊所としての役目しかないため、扉が開かれるのは神在祭の間だけです。
ぜひ、神在祭に出雲大社を訪れるのなら、十九社に注目してみてください。
十九社には19枚の扉があり、それが十九社という名前の由来だとされています。
さらに深い由来もあり、1と9という始まりと終わりを表す数字が組み合わさっているから無限大や永遠を意味しているというものです。
「日本中から集まった八百万の神々が宿泊できるの?」と疑問に思った人もいるかと思いますが、十九社は無限大を意味する名がつけられているので多くの神様が宿泊できるのです。
十九社の配置にも深い意味が込められています。
本殿を挟んで東西の二カ所に設けられているのは、出雲より東から来た神様たちは東の十九社に、西から来た神様たちは西に泊るからです。
この時期に出雲大社を訪れれば、自分の出身地の神様をお参りしていることにもなります。
神在月の出雲大社が縁起がいいとされるのは、出雲大社の神様だけでなく全国の神様と繋がることができるから。
ぜひ、機会があったら神在月に出雲大社を訪れてみてください。
また十九社は神様たちが寝泊まりをするための場所で、神様たちの会議は別の場所で行われます。
神様たちの会議場は上宮(かみのみや)という、出雲大社の境内から少し西に行ったところです。
この上宮も神在祭の期間だけは参観が可能となりますので注目してみてください。
出雲阿国と出雲大社の意外なつながり
出雲阿国は歌舞伎の創始者として有名な人物ですが、実は出雲大社とつながりを持っています。
出雲阿国という名前からも分かる通り、出雲阿国は出雲出身です。
出雲阿国の父親は出雲大社の鍛冶職人でした。
そして、阿国自身も出雲大社の巫女を務めていたとされています。
出雲阿国が出雲を出るきっかけとなったのも、出雲大社にあります。
阿国は出雲大社の本殿が修理されることになり、巫女としての仕事がなくなったため京都へ行きました。
元々踊りの才能を持っていた阿国は、京都で念仏踊りを上演するなどし評判となっていきます。
そして、阿国は波乱万丈の人生を送った後、出雲に戻ったとされています。
出雲阿国が江戸で消息を絶った後、どこに行ったのかについては諸説ありますが、出雲に戻って尼になり死んだという説が一般的です。
今でも出雲大社の近くには出雲阿国のものとされる墓があります。
しかし、京都にも阿国のものとされる墓があり、正確なことは分かっていません。
ですが、出雲阿国が出雲大社にゆかりのある人物であることは間違いありません。
出雲大社を訪れるときには、そのこともぜひ思い出してみてくださいね。
2021年の神在祭とは?いつ?見どころについて
2021年の出雲大社で行われる神在祭の日程
神在祭は旧暦の10月10日から10月17日に行われます。
伝統的な行事なので日程は旧暦になっており、新暦で考えると毎年違う日付となるのです。
2021年の神在祭の日程は11月14日から11月21日となります。
コロナウイルスの影響もあり、スケジュールや詳細については変更があるかもしれませんが現在のところの予定は次のようになっています。
11月14日 19時 神迎神事・神迎祭
11月15日 9時 神在祭
11月19日 10時 神在祭・縁結大祭
11月21日 10時 神在祭・縁結大祭
11月21日 16時 神等去出祭
この期間の出雲大社は非常に強力なパワースポットであり、普段は見られないものが見られます。
ぜひ、神在祭の時期の出雲大社を訪れてみてください。
神在祭の見どころは神様を感じられる神迎神事
神在祭に参加するのなら、神迎神事がおすすめです。
神在祭は祭というもののにぎやかさや華やかさはありません。
神様を丁重におもてなすのが重要で、行事は粛々と行われます。
そして、神様を一番感じられるのが神迎神事ではないでしょうか。
神迎神事は神在祭の初日、11月14日に行われます。
八百万の神がたどり着くのが稲佐の浜だと言われており、そこから神楽殿までお迎えするのが神迎神事です。
午後7時、暗くなった浜辺にはかがり火が焚かれ、神職が祝詞を奏上します。
稲佐の浜の北側の入り口では数に限りはありますが、神迎御幣がもらえます。
これを持ってお祈りすればご利益があるとされていますので、ぜひもらってください。
到着した八百万の神々は二本の神籬(ひもろぎ)に宿り、龍神さまを先導に出雲大社へと向かいます。
参拝者も神迎御幣を持ち、それに続いて進んでいきます。
派手さはありませんし、前もって知識がなければ、何をしているのかもよく分からない神事ですが、神の先導で歩いていることを知っていると神の存在をより強く感じられるものとなるでしょう。
神迎神事は人気の行事なので、大変混み合います。
稲佐の浜から出雲大社までは30分ほど歩きますし、砂浜にも行くことから歩きやすい格好を心掛けてください。
準備を整えて神迎神事に臨み、神様を近くに感じてみましょう。
神在祭の祭事は神職のみで一般参列は不可|境内の参拝は可能
神在祭の祭事は神職のみで行うので、一般の方が見ることはできません。
しかし、境内の参拝は可能なので、神在祭を身近に感じることはできます。
例えば、初日の神迎神事は後ろをついて歩くことができます。
次の日9時から始まる神在祭は本殿で行われ、本殿手前の八足(やつあし)門内には椅子席が1200ありますが、すぐに埋まってしまうので注意が必要です。
神在祭と一緒に行われる縁結大祭では事前申し込みが必要となりますが参拝可能です。
次の章で詳しくご説明していきますので、興味があれば参加してみてください。
神在月のパワーの高まる出雲大社で、良縁を手にしていきましょう。
神在祭と一緒に行われる縁結大祭とは?
縁結大祭は旧暦10月15日と17日に行われる
出雲大社は縁結びにご利益があることで知られています。
縁とは何も人と人との縁だけをいうのではなく、私たちはお金やものとも縁でつながっているのです。
つまり縁結びとは恋愛関係だけでなく、さまざまな願いを叶えるのに効果的ということです。
神在祭の期間中には縁結大祭が行われます。
日程は旧暦の10月15日と17日で、午前10時から行われます。
2021年でいえば、11月19日と21日です。
神在祭の神事は神様をお迎えするためのものですが、この縁結大祭だけは参拝者のために行われているといえるでしょう。
ただし、神在祭中の出雲大社には多くの人が訪れます。
この縁結大祭も誰でも参列できるというわけではなく、事前の申し込みが必要となりますし定員は2000名と限られています。
申込方法や当日の受付方法については、後ほど詳しくご説明しますのでチェックして忘れずに申し込んでくださいね。
縁結大祭のご利益は幸縁を結べること
縁結大祭は日本全国から集まった八百万の神々が、あらゆるものの縁をいい方向で結びつけてくれるという趣旨のお祭りです。
出雲大社の縁結大祭のご利益は、幸縁を結べるととなります。
あらゆるものの縁を結んでくれるとされていますが、出雲地方では古くから五縁という五つの縁があると言い伝えられています。
それは良縁・美縁・幸縁・守縁・愛縁の5つです。
良縁は素敵な縁に巡り合えること、美縁は心身ともに美しくなれること、幸縁は幸せをもたらす縁に巡り合えること、守縁は巡り合う縁を切らさないよう守ってくれること、愛縁は愛に包まれることを示しています。
縁と一口に言っても、たくさんのご利益があることが分かりますね。
神在祭の期間の出雲大社で縁結びを願うということは、出雲大社に集まる神々の力をすべて受けられるということ。
普段の出雲大社や他の神社で願うのとは違い、たくさんの神々があなたに幸せな縁を結んでくれるでしょう。
縁結大祭の申込方法と当日の受付方法
縁結大祭は事前に申し込みをしなければ参列することはできません。
しかも、先着順に2000名となりますので、確実に参列するためには早めに申し込みを済ませるようにしておきましょう。
申し込みに必要なのは往復はがきです。
はがき1枚につき申し込めるのは1名となり、参列は申し込んだ本人のみで同行者は参列できません。
二人で縁結大祭に参列したいのなら、はがきは2枚必要となるというわけです。
はがきに記入するのは、住所、電話番号、参列希望日の3点。
それらの情報を間違いなく書いたら、出雲大社の縁結大祭係まで送付します。
宛先は下記の住所です。
郵便番号699-0701 島根県出雲市大社町杵築東195 出雲大社社務所内 縁結大祭係 宛
申し込みが受け付けられたら、参列通知が返ってきますので参列の日まで大事に取っておきましょう。
縁結大祭の日は午前8時から受付が開始されます。
参列通知の葉書を持参し、祈祷料の5000円を納めれば幸縁むすび祈念絵馬とお守りを授かります。
絵馬には願いを記入しましょう。
受付時には、幸縁むすび御祈絲(みほぎいと)も授かることができ、これはブレスレットとして身につけることも可能です。
紅白の縁結び糸に青(緑)が加わった特別な結び糸となっています。
縁結大祭では各県から1名ずつ代表者が選ばれ、玉串拝礼と絵馬を捧げて拝礼を行います。
代表者に選ばれるのは非常に幸運なことなので、それを目指して早めに受付をしようとする人がたくさんいるでしょう。
縁結大祭は早めの受付をするのがおすすめです。
出雲の神在祭を巡るツアー|神在月に訪れたい神社
出雲大社は外せない!神在祭を体感しよう
神在月に出雲を訪れたのなら、出雲大社は必ず訪れるべき場所です。
八百万の神々はこの出雲大社に集い滞在し、会議を行います。
たくさんの人が訪れて混み合うからといって、出雲大社を神在祭ツアーから外してはいけません。
混み合っているというのは、出雲大社がそれだけ魅力的な場所だからなのです。
出雲大社へは飛行機・電車・高速バス・車の4つのアクセス方法があります。
飛行機の場合は出雲縁結び空港というご利益のありそうな空港を利用します。
出雲縁結び空港からは1日に2本、出雲大社直通のバスが出ているので便利です。
直通バスを逃した場合はJR出雲市駅まで行きましょう。
JR出雲市駅へは全国各地の高速バスも運行しています。
高速バスも出雲大社直通のものがありますので、そちらに乗れば乗り換えはいりません。
自家用車で行く場合は無料の駐車場もあるのでチェックしておいてください。
他に観光をすることも考えると自家用車があると便利です。
神様も立ち寄った佐香神社
出雲の神在祭を巡るツアーとして訪れて欲しいのは佐香神社(さかじんじゃ)です。
佐香神社は通称松尾神社で、酒造り発祥の地とされています。
佐香神社の歴史は古く、出雲風土記には次のような記載があります。
「たくさんの神々が集まられて、煮炊きする調理場を建て、酒を造らせた。そして長い間、毎日酒宴を開いた後、去って行かれた。そこで酒みずきのさかによって佐香という」
どうやら出雲に集った神々は、真面目に会議だけをしていたのではなさそうです。
佐香神社に集まり酒宴を開き、神在祭が終わってもその場に留まっていたという伝説が残っています。
酒造り発祥の地である佐香神社では、今でも年に一石のお酒がつくられているのが他の神社とは違う特徴です。
神主自らがお酒を造り、室町時代から続く特殊な祭事である濁酒祭が行われています。
そのお酒は秋季例祭で参拝客にふるまわれます。
秋季例祭は10月13日なので、神在祭の時期とはずれてしまいますが、それでも訪れたい神社の一つでしょう。
酒造り発祥の地とされている場所なので、お酒好きの人は外せない参拝場所となります。
神々が最後に立ち寄る場所「万九千神社」
出雲の神在祭を巡るツアーとしておすすめなのが万九千神社(まくせのやしろ)です。
神在祭を巡るツアーであれば、神在祭と関連があるところを巡りたいと考えるのが自然でしょう。
この万九千神社は、神在祭の最後に八百万の神が立ち寄る場所だとされています。
八百万の神は万九千神社で神在祭を締めくくり、神宴を催し、それぞれの土地へ帰っていくのです。
万九千神社でも神在祭は行われますが、特に力を入れるのが神等去出祭です。
神等去出祭の前日である旧暦10月25日には神職のみで前夜祭を行います。
その時宮司は社殿内に寝泊まりをし、そのことはお籠もりと呼ばれます。
翌26日は大祭で「万九千さん」や「からさでさん」と呼ばれ親しまれている祭事です。
たくさんの参拝客が集いますが、万九千神社内はとても静かです。
神職がふる鈴の音が響くのみの静寂な空間が広がり、とても神聖な雰囲気を味わうことができるでしょう。
御神前では特別祈願やご祈祷が行われます。
この時、来年の稲の出来高を占う「御種組」(おたねぐみ)や物事の吉兆を占う「神在みくじ」も行います。
祈願者には、神占による御札や神在月限定の梅酒の御神酒などがふるまわれるので、ぜひ神在祭には万九千神社を訪れてみてください。
26日夕刻、いよいよ八百万の神が帰る時が近づく頃、湯立神事が行われます。
忌み火で湯釜を沸かして、神々と人々の前途にまつわる全ての物事を祓い清める神事です。
そして、神等去出神事(からさでしんじ)が厳かに行われ、神々は帰る時が来たことを知らされます。
八百万の神々は万九千神社で直会(なおらい)と呼ぶ酒宴を開き、翌年の再会を期してから帰途につきます
神様たちが帰っていくのは、翌朝早くです。
その日には、大風が吹いたり、雨や雪が降って天気が荒れることが多いようです。
神在祭に出雲を訪れたのなら、万九千神社で神様が帰るまでを見送ってみるのはいかがでしょうか。
出雲神話ゆかりの地「朝山神社」
神在祭の頃に出雲に来たのなら、ぜひ朝山神社も訪れてみてください。
朝山神社も出雲大社と関りが深い場所です。
朝山神社の主祭神は神魂命(カミムスヒノミコト)の娘神である眞玉著玉之邑日女命(マタマツクタマノムラヒメノミコト)です。
神魂命は大国主命(オオクニヌシノカミ)の妻と神話では書かれています。
大国主命は出雲大社の主祭神。
つまり朝山神社は妻の娘の神社ということになります。
朝山神社と呼ばれるようになったのも大国主命が、朝ごとに姫様のところへ通ったからだとされています。
そして、この神社は八百万の神が神在祭の前に立ち寄る場所です。
朝山神社に神々が立ち寄るのは、旧暦の10月1日から10月10日までの期間です。
神在祭で出雲大社に滞在する期間よりも長く、神様たちは朝山神社にいることが分かりますね。
朝山神社にも神様が長期間滞在するため、十九社が建てられています。
神様が宿泊することになるので、十九社は必要なのです。
ここを訪れるのなら神在祭の前、朝山神社に八百万の神が集っているときがいいでしょう。
たくさんの神様が集まっているので、ご利益もいつも以上にあります。
朝山神社では良縁や美しい女性としてのたしなみなどのご利益が期待できますが、全国から神様が集まっている時に参拝すればそのほかのご利益も期待できるでしょう。
ぜひ、神在祭前に朝山神社を訪れてみてください。
霊験あらたかな「日御碕神社」
出雲を訪れたなら、ぜひ立ち寄ってほしいのが日御碕神社(ひのみさきじんじゃ)です。
日御碕神社は美しさでも有名で、朱色の社殿は竜宮城と称されることもあります。
出雲国風土記にも「美佐伎社」と記されており、美しく歴史ある神社です。
日御碕神社にはスサノオノミコトとアマテラスオオミカミが祀られています。
スサノオノミコトは出雲の国づくりをしたとされており、アマテラスオオミカミはスサノオの姉です。
日御碕神社は伊勢神宮と並ぶほどの歴史があり、伊勢神宮が日本の昼を守るのに対し、日御碕神社は日本の夜を守る目的で建てられています。
スサノオノミコトもアマテラスオオミカミも日本神話に出てくる有名な神様。
厄除けや縁結びにご利益があるとされています。
日御碕神社での神在祭は旧暦の10月11日~17日に行われます。
旧暦10月14日に行われる龍神祭が、日御碕神社では注目の神事です。
これは浜に龍神が到着したことを祭神に奏上する祭儀で、龍神というのはセグロウミヘビのことを指しています。
日御碕神社ではセグロウミヘビは龍宮から遣わされた神々の先導役として信仰されています。
11月25日に神在祭が行われる「多賀神社」
多賀神社は島根県松江市朝酌町にある神社で、神在祭が行われる出雲の神社です。
旧暦10月に行われる神在祭のうち、11月25日の祭礼を多賀神社では執り行います。
八百万の神はこの場所で釣り見学をすると言われています。
神々は佐太神社から多賀神社に移動をして、神社の裏にある魚見山に登ってエビスが魚を釣るのを見物するのです。
『雲陽誌』には次のようなことが書かれています。
旧暦の10月11日になると八百万の神々が佐太神社に集い、25日に当社に移ってくる。
エビスが神饌に使う魚を獲る目的で、猿田彦命が漕ぐ船に乗って漁場まで行く。
坤の方角の水中に竹を刺して魚を釣り、神々はこれを見物する。
その見物場所のことを魚見山といい、昔から10月25日になると魚見山に幣を立てて場を清め、またその夜は誰も境内には入らない。
こういった言い伝えがあるので、神在祭の期間氏子たちは漁をしないのがならわしとなっています。
11月25日の夜には多賀神社で直会が催され、参道にはしめ縄が張られ境内には誰も入れませんので参拝に行く場合は注意してください。
翌26日にしめ縄が外されて祭りが終わります。
八百万の神が立ち寄る場所も、あなたも訪れてみてください。
出雲国造と縁が深い日本最古の「神魂神社」
出雲に行くなら神魂神社もおすすめスポットです。
神魂神社のおすすめポイントは、本殿が現存する大社造の社殿のうち最も古いことで、国宝にも指定されています。
日本の創世神、伊弉冊大神(いざなみのおおかみ)を主祭神とし、伊弉諾大神(いざなきのおおかみ)を合祀しており、縁結び、妊娠、安産、商工繁栄などのご利益があるといわれています。
現在、出雲大社の宮司を務めている出雲国造家と縁が深く、天穂日命の子孫が出雲国造として25代まで神魂神社に奉仕したとのことです。
由緒ある神魂神社を神在祭のときには訪れてみてください。
八百万の神の宴会場「売豆紀神社」
子宝のご利益で知られる売豆紀(めづき)神社は、神在祭に訪れるのにおすすめのスポットです。
売豆紀神社では神在祭は12月3日から9日の期間で行われます。
売豆紀神社の社伝によると、佐太神社での神議りを終えた八百万の神々は売豆紀神社に立ち寄り7日間滞在されるのだそうです。
そして、出雲の美女神たちは全国の神々を接待し、神様たちは遊興を楽しみます。
神議りを終えた後に売豆紀神社にやってくるので、売豆紀神社での神在祭は神宴祭と言い換えることもできるでしょう。
神様の中にはこの美女たちとの宴が楽しくて、国に帰るのを渋ったものもいるそうです。
売豆紀神社の社伝によると、出羽国(現在の秋田県)の保呂羽山の神は、出雲から帰りたくなくて隠れたので秋田での新年祭に遅れてしまったと書かれています。
それほどまでに神様たちが楽しい宴を行う場所を、一度訪れてみたいと思いませんか。
占い師 小鳥のワンポイントアドバイス「全国の八百萬の神様が集まる神在祭|日々を感謝して」
それは日本全国、八百万の神が見が旧暦の10月には出雲大社に集まり会議を開いていたからです。
日本人の多くが信仰していた神道において、日本にはたくさんの神がいます。
何にでも神様は宿ると考えられていたため、日本には八百万の神様がいるのです。
そして、その神様たちは10月になると出雲を目指します。
それは神議り(かみはかり)という話し合いをして、縁結びについて決めるためです。
出雲大社では全国津々浦々からやってくる神様をもてなすために、神在祭が行われます。
神様が集まる神在月の出雲では、いつも以上のご利益があるのでぜひ神在祭の時期に出雲を訪れてみましょう。
現代に生きる私たちは神様への信仰心が薄れてきています。
しかし、こうした神事に参加すると神様がいることを感じられるでしょう。
少なくとも昔の日本人は神の存在を信じ、神様への感謝を持って神在祭を続けてきたことは感じられるはずです。
私たちもその伝統行事に触れ、神在祭の意味を知り、日々を感謝して過ごせるようになりましょう。
神様が集まる神在月にしか見られない神事を、ぜひ楽しんでみてください。