仏教においては、とても大切な行事である「灌仏会(かんぶつえ)」。
別名を「花まつり」という呼び名で多くの人に、親しまれている行事でもあります。
「灌仏会(かんぶつえ)」というのは、お釈迦様が生まれたことを祝福をする仏事で、私たち日本人、仏教徒としては知っておきたい行事の一つです。
キリスト教でいう、クリスマスと同じようなものだといえますが、クリスマスを知っている人は多くても、「灌仏会(かんぶつえ)」とはどんな行事なのかを、詳しく知っている人は、意外と少ないといえます。
「灌仏会(かんぶつえ)」の由来や歴史的な背景、「灌仏会(かんぶつえ)」にまつわるものや、行事として行われていることなどを詳しく解説していきますので、理解を深めていきましょう。
目次
灌仏会は4月8日!お釈迦様の誕生を祝福する会
日本の「灌仏会(かんぶつえ)」は、インドの行事が中国の行事と混ざり合って伝わったもの
「灌仏会(かんぶつえ)」とは、大切な仏教行事の一つであり、また仏教の開祖である、お釈迦様が生まれたことを祝福するというものです。
お釈迦様が生まれたのは、紀元前5世紀ごろの4月8日だとされています。
現在のネパールにあるとされる村、ルンビニの花園で、母であるマーヤー夫人の右の脇から生まれたとされているお釈迦様は、生まれてすぐに7歩あゆんで、右手を上、左手を下に向けて「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と唱えた、という話は有名です。
インド北部の釈迦族の王であるシュッドーダナとマーヤー夫人の間に生まれた王子で、「ゴータマ・シッダールタ」という名を付けられました。
仏教の世界では、お釈迦様は「釈迦牟尼如来(しゃかむににょらい)」「釈尊(しゃくそん)」「仏陀(ぶっだ)」「仏様(ほとけさま)」とも呼ばれています。
そんなお釈迦様の誕生日を祝う行事、「灌仏会(かんぶつえ)」は、キリスト教でいうところのクリスマスと一緒です。
一般的には、お釈迦様の誕生日だとされる4月8日に行われますが、地域によっては旧暦の4月8日に行われていたり、月遅れの5月8日に行っているところもあります。
もともとインドの西域で行われているウェーサーカー祭りという仏教の行事が、中国の仏教の行事と混ざり合って日本に伝わってきたことが、現在の日本の「灌仏会(かんぶつえ)」となっているとされているのです。
日本で一番初めに「灌仏会(かんぶつえ)」が行われたのは、推古天皇の時代
「灌仏会(かんぶつえ)」が日本で初めて行われたのは、推古天皇の時代だった606年だといわれています。
これは「日本書紀」に「この年より初めて寺毎に、四月八日、七月十五日設斎す」との記述が残っているのです。
「灌仏会(かんぶつえ)」は「花まつり」とも呼ばれていますが、「花まつり」と呼ばれるようになったのは比較的最近の、明治時代だと言われています。
仏教行事としては、奈良時代の頃から行われていた「灌仏会(かんぶつえ)」ですが、一般的に広く知れ渡るようになったのは、江戸時代からだとされているのです。
多くの寺院で4月8日に開かれている「灌仏会(かんぶつえ)」ですが、仏教であっても、お釈迦様を本仏としていない日蓮正宗などでは開かれません。
「灌仏会(かんぶつえ)」では、灌仏法要が営まれたり、花で飾り付けたお堂を作ったり、稚児行列が行われたりするのです。
「灌仏会(かんぶつえ)」は、たくさんの人が楽しめる仏教行事
「灌仏会(かんぶつえ)」では、専用の小さなお堂を作って、お釈迦様を祀ります。
この小さなお堂は、「花御堂(はなみどう)」と呼ばれ、「灌仏会(かんぶつえ)」が「花まつり」と呼ばれるようになった由来となっているのです。
「花御堂(はなみどう)」の中には「誕生仏(たんじょうぶつ)」と呼ばれるお釈迦様の像が安置され、この「誕生仏(たんじょうぶつ)」に「甘茶(あまちゃ)」をかけることで、お釈迦様の誕生をお祝いします。
「甘茶(あまちゃ)」が参拝者に振る舞われる寺院もあり、「無病息災」のご利益があるとされているのです。
寺院によってはこの日に稚児行列が行われているところもあり、寺院それぞれにさまざまなイベントが一緒に行われています。
毎年多くの人でにぎわう「灌仏会(かんぶつえ)」は、仏教行事には堅苦しいイメージを持つ人も多いなか、子どもから大人まで、たくさんの人が楽しむことの出来る仏教行事だ、ということがいえるのです。
「灌仏会(かんぶつえ)」のさまざまな呼び方とその由来
「灌仏会(かんぶつえ)」の「灌」という字には「灌ぐ(そそぐ)」という意味があります。
「灌仏会(かんぶつえ)」という名前がついた由緒は、「花御堂(はなみどう)」に安置される「誕生仏(たんじょうぶつ)」に「甘茶(あまちゃ)」を灌ぐことから、名づけられたといわれているのです。
現在では「灌仏会(かんぶつえ)」や「花まつり」と呼ばれていますが、もともとはいくつかの別の呼ばれ方をしていました。
「仏生会(ぶっしょうえ)」「降誕会(ごうたんえ)」「浴仏会(よくぶつえ)」「龍華会(りゅうげえ)」などです。
「仏生会(ぶっしょうえ)」というのは、仏から生まれたということからついた名前で、昔の文献には多く出てきています。
現在でも使われている別名で一番多いのも、「仏生会(ぶっしょうえ)」。
「降誕会(ごうたんえ)」というのは、お釈迦様の誕生のことを降誕(ごうたん)と呼ぶことからきているのです。
「浴仏会(よくぶつえ)」は「灌仏会(かんぶつえ)」と同じで、仏様が甘茶(あまちゃ)を浴びることからきています。
「龍華会(りゅうげえ)」というのは、お釈迦様が亡くなって、56億7千万年後に弥勒菩薩(みろくぼさつ)が仏となってこの世に現れ、お釈迦様に代わって人々のことを救う未来仏であり、弥勒菩薩(みろくぼさつ)が生まれるのが龍華樹の下だ、ということが由来となっているのです。
これらの呼び方は、明治時代の末期ごろまではよく使われていた呼ばれ方ですが、現在でも地域や寺院によっては使われているところもあります。
明治時代に始まった浄土真宗の花まつりが現代の灌仏会の元祖
「花まつり」と呼ばれるようになった由来は、1916年に浄土真宗大谷派の僧侶たちが行ったお釈迦様の誕生日の法要
「灌仏会(かんぶつえ)」が「花まつり」と呼ばれている理由は、諸説あるといわれています。
一つは、お釈迦様の生まれた場所が花園だったことにちなんで、お花を飾るようになったからというもの。
別の説では、明治時代になって古くからの「灌仏会(かんぶつえ)」では人が集まらなくなってきたことから、すたれかけていたこの仏教行事に、再び人を集めるために名前を変えようという提案が出たことがキッカケとなったというものです。
4月8日といえば、桜が満開になるころだったり、いろいろな花が咲き始めている頃だということで、「花まつり」はどうかという話になり、名前を変えてから人が集まり始めたことで、各地で「花まつり」と呼ばれ始めたといわれています。
もう一つの説では、「花まつり」という呼び方を始めたのは、明治時代の浄土真宗が初めだとされていて、その後、「灌仏会(かんぶつえ)」は現在のスタイルに定着し、広まっていったといわれているのです。
実際に「花まつり」が行われた記録を見てみると、一番古いものは1916年に日比谷公園で行われた「花まつり」だと記録されています。
これは安藤嶺丸(あんどうれいがん)という浄土真宗大谷派の僧侶らが中心となって行ったもので、お釈迦様の誕生日の法要を「花まつり」と称して行ったもの。
この「花まつり」には、たくさんの人が集まったとの記録も残っています。
「花まつり」の本当の起源はドイツにあった
日本で初めてお釈迦様の誕生日の法要を「花まつり」として行ったのは、安藤嶺丸(あんどうれいがん)という浄土真宗大谷派の僧侶らが、1916年に日比谷公園で行ったものだという記録が残っています。
しかし実は1916年の少し前の1901年に、ドイツのベルリンで行われていたという記録も残っているのです。
これは1901年当時、近角常観(ちかずみじょうかん)という、浄土真宗大谷派の僧侶たち18名がドイツに留学していた時、ベルリンにあるホテル四季館で集まって「誕生仏(たんじょうぶつ)」を花で囲んで、お釈迦様の誕生をお祝いする会を開いていたとされています。
この会には、近角常観(ちかずみじょうかん)ら18名だけではなく、現地のドイツ人300人以上が参加していて、とても盛り上がったとされているのですが、この会のことを「ブルーメンフェスト」と呼んでいました。
「ブルーメンフェスト」は日本語に訳すと「花まつり」という意味になります。
このドイツでの「ブルーメンフェスト」が、後に日本にも伝えられたことから、「灌仏会(かんぶつえ)」のことを「花まつり」と呼ぶようになったといわれているのです。
日本で初めて行われた「花まつり」も、その前にドイツで行われていた「花まつり」も、どちらも浄土真宗大谷派の僧侶たちによって、行われていた記録が残っていることから、「花まつり」の本当の起源はドイツにあった、ということもできるということがいえます。
甘茶(あまちゃ)を釈迦像に灌ぐ理由は、お釈迦様の誕生の言い伝えになぞらえている
「灌仏会「かんぶつえ」」で甘茶を「誕生仏(たんじょうぶつ)」と呼ばれる釈迦像に灌ぐ理由ですが、これはお釈迦様が生まれた時の伝承になぞらえているのです。
ルンビニの花園で誕生したといわれているお釈迦様ですが、誕生時に天から九頭龍(くずりゅう)が現れて、お釈迦様の頭上に甘露の雨(かんろのあめ)を灌がれ、祝福を受けたとされています。
この言い伝えになぞらえて、「灌仏会(かんぶつえ)」では、甘茶(あまちゃ)を誕生仏(たんじょうぶつ)に灌いでお祝いをするようになったのです。
甘茶(あまちゃ)を甘露の雨(かんろのあめ)に見立てているということ。
昔から行われていたのですが、「灌仏会(かんぶつえ)」が始まった当時は甘茶(あまちゃ)ではなく、香水(こうずい)が使われていたとされています。
香水(こうずい)というのは、お清めのために使うお香を混ぜた水のことをいい、寺院によっては現在も、甘茶(あまちゃ)ではなく、香水(こうずい)が使われているところもあるのです。
伝統的な灌仏会(花まつり)の流れと白い像の意味
「花御堂(はなみどう)」では「誕生仏(たんじょうぶつ)」に甘茶(あまちゃ)をかけてお祝いをする
「灌仏会(かんぶつえ)」のために特別に作られる、小さなお堂のことを「花御堂(はなみどう)」といいます。
「花御堂(はなみどう)」やその周辺は、色とりどりのたくさんの花で飾られていて、とても華やかです。
これはお釈迦様が生まれた場所だとされている、ルンビニの花園を再現しているといわれています。
「花御堂(はなみどう)」の中には「灌仏桶(かんぶつおけ)」と呼ばれる甘茶(あまちゃ)で満たされている桶があり、その中央に「誕生仏(たんじょうぶつ)」と呼ばれる釈迦像が安置されるのです。
「誕生仏(たんじょうぶつ)」と呼ばれる釈迦像は、お釈迦様が生まれた時の姿かたちをしています。
真っすぐ立ち、右手は天を指し、左手は地を指しているもの。
これはあの有名な、お釈迦様は生まれてすぐに7歩あゆんで、右手を上に、左手を下に向けて「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と唱えたという言い伝えを表しているのです。
「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」というのは、「この世に生きとし生けるすべてのものは、何物にも代えることが出来ない、尊い存在である」という意味。
この言葉を発する前に歩いたとされる7歩にも、「地獄」「餓鬼」「畜生」「修羅」「人間」「天」の6つの世界を輪廻転生するという六道輪廻(ろくどうりんね)から抜け出して、7つ目の世界である「極楽浄土・涅槃(ねはん)」へと行くことを表しているとされています。
つまり仏教の教えである、最終的に「極楽浄土・涅槃(ねはん)」の世界に行くためにどうすればいいのか、ということをお釈迦様が教えてくれているということなのです。
「灌仏会(かんぶつえ)」の参拝に出かけた際には、この「花御堂(はなみどう)」で、お釈迦様に甘茶(あまちゃ)を灌いで、お釈迦様が生まれたことを祝福しましょう。
参拝者に振る舞われる甘茶(あまちゃ)には、「無病息災」のご利益がある
「灌仏会(かんぶつえ)」では「誕生仏(たんじょうぶつ)」に甘茶(あまちゃ)をかけてお祝いしますが、灌ぐための甘茶(あまちゃ)だけではなく、寺院によっては、参拝者に振る舞われる甘茶(あまちゃ)があります。
「灌仏会(かんぶつえ)」で甘茶(あまちゃ)をいただくことで、「無病息災」のご利益があるといわれているのです。
甘茶(あまちゃ)は、「灌仏会(かんぶつえ)」の仏教行事だけではなく、ほかの仏事でも振る舞われることが多く、「無病息災」や「お清め」「虫よけ」「おまじない」としての意味もあります。
アマチャという植物から採った若葉を干して、乾燥させた茶葉を煎じて淹れたものが甘茶(あまちゃ)になるのです。
アマチャという名前がついているだけあって、葉には甘味成分が含まれています。
そのため甘茶(あまちゃ)は、独特な甘みがあるお茶になるのです。
お茶といえば緑茶や紅茶といったお茶を思い浮かべる人が多いといえますが、甘茶(あまちゃ)は、そういったお茶とは違うもの。
「甘茶(あまちゃ)は寺院で飲むもの」というイメージを持っている人が少なくありません。
しかし家庭用の甘茶(あまちゃ)が売られていますので、自分で淹れて飲むことが出来るのです。
「灌仏会(かんぶつえ)」の日にタイミングを合わせて購入して、お供えするなど、自宅でお釈迦様の誕生日をお祝いしてもいいものだといえます。
また甘茶(あまちゃ)は、「抗アレルギー作用がある生薬」としても知られている一面もあるのです。
ただ濃すぎる甘茶は中毒症状を引き起こすこともある、という報告もありますので、自宅で淹れる場合は気をつけましょう。
「灌仏会(かんぶつえ)」の稚児行列には6本の牙を持つ白いゾウ
必ずではありませんが、寺院によっては「灌仏会(かんぶつえ)」に合わせて稚児行列が行われるところもあります。
稚児行列というのは、平安時代の装束で着飾った子ども達が行列を作って、街を練り歩くというもの。
稚児行列自体は、「灌仏会(かんぶつえ)」以外の仏事でも見られること、参加出来ることもあります。
「灌仏会(かんぶつえ)」の日に見られる稚児行列では、お釈迦様の誕生をお祝いする意味も持っていることはもちろん、教えを授けてくれたお釈迦様への感謝の気持ち、ご利益をいただくことで、子どもたちの健康や成長の祈願という意味も持っているのです。
そして「灌仏会(かんぶつえ)」だからこそ見ることが出来るのは、この稚児行列に加わる、6本の牙を持つ白いゾウだといえます。
子どもたちは小さな「花御堂(はなみどう)」を背中に乗せた、6本の牙を持つ白いゾウを乗せた台を引きながら歩くのです。
「花御堂(はなみどう)」を背中に乗せていない場合もありますが、白いゾウに関しては共通しているといえます。
6本の牙を持つ白いゾウは、お釈迦様を表している
「灌仏会(かんぶつえ)」で見られる、白い6本の牙を持っているゾウ。
稚児行列で子どもたちが引いていたり、寺院に置いてあったりするのを見かけた人も多いはずです。
なぜ「灌仏会(かんぶつえ)」で白いゾウが神聖な動物だとして扱われているのか。
この理由も、お釈迦様の誕生に理由があるのです。
お釈迦様の母親であるマーヤー夫人が、お釈迦様を身ごもった経緯にさかのぼります。
ある夜、マーヤー夫人はこんな夢を見たのです。
天から現れた神様に抱きかかえられたマーヤー夫人は、どんどん空を登っていきます。
気が付いた時には、とても心地よい、広い草原に立っていました。
横になって休んでいたマーヤー夫人の前に、どこからか白い蓮の花を持った、6本の牙を持つ白いゾウが現れたのです。
マーヤー夫人が白いゾウを眺めていると、その白いゾウはマーヤー夫人の右の脇から胎内へと入り込みました。
ビックリしたマーヤー夫人が夢から覚め、身体の異変に気が付きます。
マーヤー夫人の中には新しい命が宿っていました。
月日が経って、出産のため里帰りをしている途中で、ルンビニの花園で花を取ろうとしたマーヤー夫人の右脇が光り始め、お釈迦様が生まれたのです。
仏教においては、ゾウは神聖な生き物とされています。
「幸運」「地位」「富」「力」を表しているとされているのです。
白色も、同じように神聖な色の一つ。
煩悩や罪のない「清浄(しょうじょう)」を表す色だとされています。
また6本の牙も、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」を表しているとされているのです。
「六波羅蜜(ろくはらみつ)」というのは、仏教において悟りの境地に達するために必要だとされている、6つの修業のこと。
6本の牙を持つ白いゾウは、お釈迦様にまつわる多くのことを表しているのです。
行ってみたい!日本国内の灌仏会(花まつり)
東本願寺の「灌仏会(かんぶつえ)」は、練習やリハーサルも行われる「子ども法要」
京都市山科区に位置する、東山浄苑の東本願寺で行われている「灌仏会(かんぶつえ)」。
毎年4月の29日前後に「花まつり」が開催されています。
当日は事前申し込みで募集されていた子どもたちが、稚児衣装を身にまとい、東山浄苑内を練り歩く、稚児行列が行われたり、子ども法要として、仏様のお勤めに参加出来たりするのです。
稚児行列の先頭には、マーヤー夫人に扮した女性が立ち、200人以上の行列になり、日本最大級だといわれています。
演奏会が行われたり、露店が出たり、ミニイベントが行われるなど、当日は多くの人でにぎわっているのです。
「親子佛法の集い」では、子どもたちは僧侶の服である、法衣を身にまとい、お勤めに臨みます。
花まつり前にはお勤めの練習やリハーサルが行われますので、安心して当日を迎えることが出来るのです。
池上本門寺の「灌仏会(かんぶつえ)」はパレード・コンサート・マラソン大会が行われる
日蓮宗大本山である池上本門寺で行われる「灌仏会(かんぶつえ)」は、毎年4月の第一土曜日・日曜日に行われています。
土曜日には五重塔での法要や、一年に一度の五重塔の特別開帳が行われていて、日曜日には本殿で灌仏法要が行われ、花まつりのパレードやコンサートが開かれるのです。
パレードでは、鼓笛隊やたくさんの花やぬいぐるみで飾られた自動車が列をなして、オープンカーと花の精が「花御堂(はなみどう)」を背中に乗せた6本の牙を持つ白いゾウを引いて商店街を進みます。
本殿では灌仏法要のあとに、合唱団によるコンサートが開かれ、参拝者に甘茶(あまちゃ)が振る舞われているのです。
模擬店もたくさん出店していています。
また「灌仏会(かんぶつえ)」に合わせて、マラソン大会も開かれているのです。
お釈迦様の誕生日をお祝いするとともに、境内に咲きほこる桜の鑑賞をしながら健康的に楽しんでもらおうという想いから昭和53年以降、毎年開催されています。
たくさんの人が参加している、このマラソン大会。
境内は多くの人でにぎわっています。
西本願寺で行われる「灌仏会(かんぶつえ)」は、伝統と現代の両方が楽しめる
西本願寺(浄土真宗本願寺派)で毎年開催されている「灌仏会(かんぶつえ)」。
灌仏法要のほかにも、甘茶(あまちゃ)や花まつりドロップ、花まつり絵はがきが配布されています。
花まつりドロップは、缶に入っていてパッケージも花まつり仕様なので、ぜひ手に入れておきたいもの。
どれも数には限りがあるものなので、早い時間帯に参拝をするといただくことが出来るものです。
境内では6本の牙を持つ白ゾウの置物があったり、撮影コーナーが設置されていたり、お釈迦様の顔出しパネルが設置されていたりします。
近年ではトリックアートコーナーがあるなど、現代アートを取り入れて新しい試みも行われているといえるのです。
伝統行事と現代のどちらも楽しむことが出来る、西本願寺の「灌仏会(かんぶつえ)」だといえます。
智積院で開催される「灌仏会(かんぶつえ)」は、子どもが楽しめる「子ども花まつり」が行われる
真言宗智山派総本山の智積院で行われる「灌仏会(かんぶつえ)」では、灌仏法要が行われていて、参拝者も多く訪れます。
そんな智積院では、お釈迦様の誕生日である4月8日前後の日曜日には、毎年「子ども花まつり」が開催されているのです。
「子ども花まつり」は、子どもの健康と成長を祈って行われています。
集まった子どもたちと一緒に「智山勤行式」を、お唱えすることから始まる「子ども花まつり」。
智積院の僧侶たちによる紙芝居が行われますが、この紙芝居が子どもたちに大人気。
時折寸劇を交えながら、僧侶たちが登場人物に合わせて演じながら進んで行く紙芝居に、子どもたちはどんどん引き込まれていきます。
紙芝居が終わった後、子ども達は一人一人に祈祷をしてもらい、額にお釈迦様の梵字の判子を押してもらうのです。
その後「花御堂(はなみどう)」に祀られているお釈迦様の「誕生仏(たんじょうぶつ)」に甘茶(あまちゃ)を灌いでお釈迦様の誕生日のお祝いをします。
この時に祈願された「うでわ念珠」と「こどもお守り」をいただけるのです。
くじ引きや、甘茶(あまちゃ)の配布もありますので、子どもたちにとってはとても楽しい時間となります。
「子ども花まつり」と名がついていますが、もちろん一般の参拝者もお参りすることが可能です。
子どもたちの参加については、予約などは不要となっていますので、自由に参加でき、「うでわ念珠」「こどもお守り」「お土産」もいただけます。
智積院の「灌仏会(かんぶつえ)」は、子どもに特化したお祭りではありますが、親子で楽しむことが出来るのはもちろんのこと、大人だけで訪れても楽しむことが出来るといえるのです。
歴史を感じることが出来る、金剛峯寺の「灌仏会(かんぶつえ)」
高野山真言宗の総本山である金剛峯寺で行われる「灌仏会(かんぶつえ)」。
灌仏法要が行われているのは、主殿にある大広間です。
この大広間は重要な儀式や法要が行われ場所でもあり、大広間のふすまに描かれている絵は、狩野法眼元信(かのうほうげんもとのぶ)の筆だと伝えられていて、群鶴(ぐんかく)や松が描かれています。
灌仏法要では、「仏生会講式」を奉読するのですが、これは物語のようになっていて、お釈迦様の誕生から涅槃に至るまで、独特な節に乗せて賛歎していくもの。
歴史を感じる空間で聞くという、とても貴重な体験となるものです。
金剛峯寺の「花御堂(はなみどう)」は杉の葉でもってあり、ほかのカラフルな花で飾られている「花御堂(はなみどう)」とはまた違った雰囲気があります。
高野山は、弘法大使によって開かれた日本仏教の聖地とされていて、「総本山金剛峯寺」というのは、「金剛峯寺」だけを指しているのではなく、高野山全体のことを指しているのです。
高野山全体がお寺といえる「一山境内地」とされています。
高野十谷と呼ばれる地区にある「高野山事相講伝所円通律寺」別名「真別処」は、昔から続いている女人禁制の戒律が現在でも守られているのです。
唯一女性がこの地に足を踏み入れることが出来るのが、年に一度の「灌仏会(かんぶつえ)」の日だけだとされています。
灌仏会に食べたい!季節の食材と行事食
甘茶(あまちゃ)と和菓子を用意してお祝いしましょう
「灌仏会(かんぶつえ)」に食べたいものといえば、甘茶(あまちゃ)と和菓子。
甘茶(あまちゃ)は、アマチャという植物の葉を乾燥させた茶葉から淹れたお茶ですが、天茶(あまちゃ)と呼ばれることもあります。
「甘茶(あまちゃ)」と「天茶(あまちゃ)」の違いはというと、お茶自体は同じ「甘茶(あまちゃ)」なのですが、「甘茶(あまちゃ)」の茶葉に、神社で「御法楽」という御祈祷を行った茶葉だけが「天茶(あまちゃ)」と呼ばれることを許されているのです。
「甘茶(あまちゃ)」は自宅用に購入することも出来ますので、「灌仏会(かんぶつえ)」に合わせて、自宅でお釈迦様の誕生日をお祝いすることも可能。
自宅で「甘茶(あまちゃ)」をいただく際に一緒に用意したいのが、和菓子です。
日本の歴史にとって和菓子は、切っても切れないものだともいえますので、お釈迦様の誕生日にもぜひ食べておきたいもの。
「灌仏会(かんぶつえ)」に食べるものとして決まっている和菓子があるわけではありませんが、和菓子の中には、「灌仏会(かんぶつえ)」にピッタリだといえるものも、たくさんあります。
お釈迦様誕生の言い伝えを表したとされている、甘茶(あまちゃ)を練り込み、5色のそぼろを使った「五泉(ごせん)」という和菓子は、もちろん「灌仏会(かんぶつえ)」のために作られたといってもいいもの。
そのほかにも、お釈迦様と関係の深い「蓮(はす)」を取り入れた和菓子もあります。
「蓮もち」や蓮の花を模った「落雁(らくがん)」や「練り切り」もいいものです。
また「花まつり」と呼ばれていることから、蓮の花にこだわらず、季節の花をモチーフにした和菓子も「灌仏会(かんぶつえ)」にはピッタリだといえます。
旬の食材は栄養満点
「灌仏会(かんぶつえ)」に食べたい食材といえば、やっぱり旬のモノ。
この時期ならではの食材を食べることは、食材のもつパワーを最大限に身体に取り入れることが出来るもので、その食材のパワーも旬の時期にはとても強いものとなるのです。
「灌仏会(かんぶつえ)」の頃に旬を迎える食材としては、ホタルイカや初ガツオ、メバルやタコといった魚介類や、きくらげや春の山菜、イチゴやグレープフルーツなどが挙げられます。
メバルは煮つけがおすすめで、ホタルイカはボイルしてもいいですし、沖漬けとしてお酒の肴にしてもおいしいです。
初ガツオはタタキにしていただけば、ディナーのメインとしても、お酒の肴としても満足できます。
春の山菜は天ぷらや、お浸しなどにしていただきましょう。
イチゴやグレープフルーツは、ビタミンも豊富に摂ることが出来ますし、グレープフルーツが苦手な人はフレッシュジュースにすると飲みやすくなります。
ただグレープフルーツは、血圧が高くて薬を服用している人には、薬との兼ね合いもあり、おすすめが出来ませんので、気をつけてください。
またお茶やはちみつもこの時期が旬になります。
特に新茶には栄養がたくさんありますし、香りも高く味覚だけでなく嗅覚でも楽しめる時期です。
はちみつは一歳未満の乳児には与えないように気をつけてください。
お釈迦様にまつわるソラマメとウド
「灌仏会(かんぶつえ)」に食べておきたいものには、お釈迦様にまつわるものだといえます。
春の食材でもある、「ソラマメ」や「ウド」です。
「ソラマメ」は、「仏豆(ほとけまめ)」と呼ばれることもあります。
これは「ソラマメ」の形が仏様の頭の形に似ていることから呼ばれるようになった呼び方です。
仏様は、お釈迦様のことなので、「ソラマメ」は、お釈迦様にまつわる食べ物だといえます。
また「ソラマメ」は、さやの先が天に向かって伸びるという特徴もあり、この様子も「仏豆(ほとけまめ)」と呼ばれる所以でもあります。
「ウド」は漢字で書くと「独活」と書くことから、お釈迦様にまつわる食材だとされているのです。
お釈迦様が誕生時に唱えたとされる「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」に通じるとされている「独活(ウド)」。
春の山菜の一つでもあります。
「ソラマメ」はゆでで塩でいただくシンプルな食べ方もできますし、料理に使ってもおいしくいただけますし、「独活(ウド)」は、部位によってお浸しや天ぷら、きんぴらなどとして食べるとおいしいのです。
精進料理は仏教に関わりの深い料理
「灌仏会(かんぶつえ)」の行事食といえば、精進料理。
寺院によっては、参拝客に精進料理が振る舞われることもあります。
精進料理というのは、肉や魚は使用せず、野菜や穀物がメインとなっている仏教には関わりの深い料理。
仏教では「殺生」は避けるとされていることから、肉や魚は使われないのです。
精進料理の「精進」というのも、仏教用語からきています。
「美食や肉食を避け、粗食や採食によって精神の修業を行う」という意味があり、精進料理を食べるということは、修行の一環だともいえるのです。
精進料理の代表的なものとしては、季節の野菜を使った煮物、ごま豆腐、野菜の天ぷら、野菜がたっぷり入ったお味噌汁、がんもどきなどだといえます。
占い師 RINのワンポイントアドバイス「灌仏会(花まつり)はお釈迦様の誕生を祝い、健やかな日常を願う日」
お釈迦様のお誕生を祝福するとともに、「無病息災」を願い、子どもたちの健康と成長を祈願する日。
私たち日本人、仏教徒にとっては大切なお祝いの行事です。
お釈迦様の誕生や人生について詳しく知って、それぞれにどんな意味があるのかが分かったうえで「灌仏会(かんぶつえ)」に足を運んでみることで、お釈迦様に対する気持ちも、変わって感じることが出来るようになるもの。
お釈迦様を祝福する気持ちを込めて行うことで、改めてお釈迦様のご利益を得ることも出来るようになるのです。
仏教徒にとっての、誕生から涅槃まで、極楽浄土へのお導きをされたお釈迦様に、想いを馳せてみましょう。