神楽は神様と人間が楽しむ宴の儀式!神楽の意味や御神楽と里神楽|松前神楽と広島神楽について解説
占い師 聖子
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神楽」という昔から行われている儀式。

「言葉は聞いたことがあるけれど、どんなものかはわからない…」という人は少なくないもの。

しかし日本古来の神楽もあれば、現代でも入りやすく、エンターテインメント性の高い神楽もあり、近年人気がじわじわと出てきているのです。

今回はそんな「神楽」について、歴史から現代までをまとめているとともに、「松前神楽」と「広島神楽」の魅力を紹介していきます。

「神楽ってこんなに楽しいものなの?」という驚きも見つけることが出来ますので、ぜひ参考にしてください。

こちらの記事は広島県在住の神楽団員で神楽文化の保全・振興を活動理念として活動をしている西江亜偉斗様に一部監修して頂いております。

・西江亜偉斗様運営のサイト「旧舞のとびら

目次

神楽都は神様と人間が一体となった宴から始まった

平安時代に出来上がった神楽歌は、約90首ある

神楽というのは、「琴歌神宴(きんかしんえん)」に、「石清水八幡(いわしみずはちまん)」などといった民間の神遊びを取り込んで、平安時代に出来上がったとされています。

「内侍所御神楽(ないしどころみかぐら)」と呼ばれるものです。

神楽歌は、90種類ほどあるとされています。

神楽の題材となっているのは、場所だったり、人だったり、神様だったり、物だったりと、いろいろなものが対象となっていて、なぜそういった神楽歌が出来たのか、その意味が未だに解明されていないものも多くあるのです。

とりわけ有名な神楽歌には、「阿知女(あちめ)」「採物歌(とりものうた)」「大前張(おおさいばり)」「小前張(こさいばり)」「早歌(はやうた)」「星三種(ほしさんしゅ)」「雑歌(ぞうか)」「酒殿歌(さかどのうた)」「竈殿歌(かまどのうた)」「庭燎(にはび)」といったものがあります。

「神楽」とは歌舞といって、神様と人間が一体となってする宴のこと

神楽というのは、神事などで神様に奉納するための歌舞のことであり、日本最古の芸能だとされているのです。

祭礼やお祭りなどの際に「神楽殿」などで行われます。

神楽は、「神座(かむくら・かみくら)」が転じたことが語源と言われているのです。

「神座(かむくら・かみくら)」は、「神様が宿るところ」であり、「招魂・鎮魂を行う場所」という意味があります。

「神座(かむくら・かみくら)」に神様を降ろして、巫女さんが人々との穢れを祓う、神懸かりして人々と交流するなどして、神様と人間が一体となって宴をする場。

そんな場所での歌舞のことを、神楽と呼ぶようになったのです。

神楽は「舞い方」と「はやし方」に分かれています。

舞を舞う「舞い方」は、神職や巫女さんが担うのが一般的だといえますが、現在では伝統芸能として神楽を伝承している活動を行っている団体が舞うこともあるようです。

歌を歌う「はやし方」というのは、「三管」・「三鼓」・「両弦」という日本古来からある雅楽楽器を使って演奏します。

「三管」というのは、天から差し込む光を表す「笙(しょう)」、地上にこだまする人々の声を表す「篳篥(ひちりき)」、天地の間を縦横無尽に亀巡ることが出来る龍を表す「龍笛(りゅうてき)」の管楽器のことです。

「三管」で合奏することで「宇宙を創ることが可能」だと考えられていたといわれています。

「三鼓」は打楽器の「鞨鼓(かっこ)」・「鉦鼓(しょうこ)」・「太鼓(たいこ)」のことです。

「鞨鼓(かっこ)」が全体のテンポを決めていて、指揮者のような役割をしています。

「両弦」は「琵琶(びわ)」・「箏(こと)」の弦楽器のことです。

これらの8種類の雅楽楽器を使って、演奏している「はやし方」と「舞い方」によって神楽は成り立っています。

神楽のルーツは「古事記」「日本書紀」に記されている「岩戸隠れ」にあった

神楽にルーツには、日本書紀や古事記に記されている「岩戸隠れ」からきているといわれています。

日本の最高神であり、あらゆる恵みをもたらし、その字の名の通り、天を照らす太陽の女神様である「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」と、その弟であり、「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」と誓約を結んで五男三女神を生んだ相手の「須佐之男命(すさのお)」の神話です。

「須佐之男命(すさのお)」とのケンカで、機嫌を損ねてしまった「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」。

「天岩戸(あまのいわと)」に引きこもって、姿を隠してしまった「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」ですが、その際には、世の中が一転、暗黒の闇に包まれてしまった、といいます。

この時に「天岩戸(あまのいわと)」の前で、技芸の女神である「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」が舞を披露し、「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」を誘い出したことで、世の中に太陽の光を取り戻すことが出来た、というお話です。

この後、「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」の子孫である巫女であった「猿女君(さるめのきみ)」が、神懸かりの儀式の際、舞を舞うことを取り入れたことが、巫女さんによる歌舞、神楽に繋がっていったとされています。

神楽は大きく分けて「御神楽(みかぐら)」と「里神楽(さとかぐら)」がある

神楽は、大きく分けると「御神楽(みかぐら)」と「里神楽(さとかぐら)」に分かれます。

「御神楽(みかぐら)」というのは、宮中で行われる儀式の際に舞われる神楽のこと。

一般公開はされていないのですが、新天皇即位の際に行われる「大嘗祭(だいじょうさい)」や毎年11月に行われる「新嘗祭(にいなめさい)」などで行われています。

これに対して、私たちが神社の祭事や、お祭りで見ることが出来るものが「里神楽(さとかぐら)」。

「里神楽(さとかぐら)」はさらに4つに分類されます。

巫女さんによって舞われる「巫女神楽(みこかぐら)」、日本の神話を劇化した舞である「採物神楽(とりものかぐら)」、伊勢外宮の摂末社がもとになって広まっていった「伊勢流神楽(いせりゅうかぐら)」、獅子舞の一種であり獅子の頭をご神体として行われている「獅子神楽(ししかぐら)」です。

「伊勢流神楽(いせりゅうかぐら)」は、別名を「湯立神楽(ゆだてかぐら)」とも呼ばれていて、「獅子神楽(ししかぐら)」は地方によっては「山伏神楽(やまぶしかぐら)」や「太神楽(だいかぐら)」と呼ばれています。

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御神楽は宮中行事|新嘗祭(11月23日)と毎年12月に行われる

「御神楽」は宮中行事で行われるもの

「御神楽(みかぐら)」というのは、宮中行事で行われる神楽のことを指しています。

一般公開はされていませんので、日頃私たちが目にすることはありません。

「御神楽(みかぐら)」は、すなわち「内侍所御神楽(ないしどころのみかぐら)」で、新天皇即位の際に行われる「大嘗祭(だいじょうさい)」や、毎年11月に行われる「新嘗祭(にいなめさい)」、12月に毎年恒例となっている神楽で行われます。

そのほかにも、夏や秋に行われるものを、それぞれ「夏神楽」、「秋神楽」といいますし、天皇の鎮魂を目的として行われるものです。

昔行われていたものに対して、現在行われているものは簡略化されたものですが、「庭燎(にわび)」を賢所の庭に焚いて行われています。

「庭燎(にわび)」を正面にして、向かって左側には「本方(もとかた)」が座に就き、右側には「末方(すえかた)」が座に就くのです。

「笏拍子(しゃくびょうし)」「笛」「篳篥(ひちりき)」「和琴(わごん)」などの雅楽楽器に合わせて、神楽歌が始まります。

「庭燎(にわび)」「阿知女作法(あちめのわざ)」から始まり、「採物歌(とりものうた)」「大前張(おおさいばり)」「小前張(こさいばり)」「雑歌(ぞうか)」の4部構成に続くのです。

神楽が終わると、「採物歌(とりものうた)」で舞った時の「榊の枝」と「輪」を天皇に献上します。

「採物歌(とりものうた)」では、「榊」「幣(みてぐら)」「杖」「篠(ささ)」「弓」「剣(つるぎ)」「鉾(ほこ)」「杓(ひさご)」「葛(かずら)」の9種類にちなんだ歌が歌われるのです。

このあとには「早韓神(はやからかみ)」という歌を歌うのですが、この時には輪をつけた榊の枝を庭燎(にわび)にかざしながら舞います。

中入りの後には、「大前張(おおいさばり)」で「宮人(みやびと)」「難波潟(なにわがた)」など、「小前張(こさいばり)」で「薦枕(こもまくら)」「閑野(しずや)」など、「雑歌(ぞうか)」で「千歳(せんざい)」「早歌(そうか)」「朝倉(あさくら)」「其駒(そのこま)」などの神楽歌が歌われるのです。

「其駒(そのこま)」では「早韓神(はやからかみ)」の時と同じように榊の枝を手に持って舞います。

雅楽は古典音楽の一つ

「雅楽」というのは、日本に昔からある古典音楽の一つです。

奈良時代から始まったとされていますが、10世紀ごろの平安時代にはほとんど出来上がっているもので、現代においてもほとんど変わることなく受け継がれています。

雅楽は大きく分けると、「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」と「大陸系」「歌物」の3つに分けられるのです。

「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」は、日本に昔からある歌曲と舞、「大陸系」は外来のもので、中国やインド、朝鮮などに由来があるもの、「歌物」は平安時代に出来たもの。

そして「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」をさらに細かく分けた中に、「神楽歌」が分類されます。

このことから「御神楽(みかぐら)」においては、「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」と呼ばれるものが、深いかかわりを持っているもので、宮中行事や儀式で演奏されるものになるのです。

これは「神道」や「皇室」に通じている歌や舞で構成されたもので、雅楽の中でも、特に珍しいもの。

天皇の即位式でのみ演奏されるという、なかでも特別なものもあるのです。

「御神楽(みかぐら)」の歴史は、1002年頃から始まったもの

「御神楽(みかぐら)」の始まりは、一条天皇の時代である1002年(長保4年)といわれていたり、1005年(寛弘2年)だともいわれています。

ハッキリした始まりは分かっていませんが、始まりから隔年で行われていました。

後に毎年行われる行事となっていき、1908年(明治41年)の皇室祭祀令で「小祭」の一つと定められることになるのです。

しかし1947年(昭和22年)に皇室祭祀令は廃止になってしまいました。

皇室祭祀令は、皇室の祭祀に関する法令のこと。

廃止となった現在も、宮中で行われる祭祀については、皇室祭祀令に準じて行われています。

現在も新天皇即位の際の「大嘗祭(だいじょうさい)」や、毎年11月に行われている「新嘗祭(にいなめさい)」や12月中旬に行われているのです。

また夏と秋に行われるものをそれぞれ「夏神楽」、「秋神楽」といいますし、1281年(弘安4年)に起こった弘安の役の際には、「異賊征討」の祈願を行うために、臨時の神楽が行われたこともあります。

臨時の神楽はほかにもあり、室町時代に天皇の「病気平癒」のためと、その願果たしのために行われたものもありました。

臨時の神楽は、祈祷性や強いものなので、時には三夜に及ぶことも珍しくなかったそうです。

新天皇即位の際に行われる「大嘗祭(だいじょうさい)」と、毎年11月の「新嘗祭(にいなめさい)」、12月に行われる

毎年12月に行われる「賢所御神楽の儀(かしこどころみかぐらのぎ)」。

宮中にある賢所には、日本の最高神である「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」が祀られています。

「賢所御神楽の儀(かしこどころみかぐらのぎ)」というのは、一年間、国家のこと、私たち国民のことを護ってくださっていた「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」に感謝の気持ちを込めて、「御神楽(みかぐら)」を奉納するのです。

平安時代から始まったこの儀式は、12月の恒例行事となって、現在でも行われています。

また「大嘗祭(だいじょうさい)」にも「御神楽(みかぐら)」を奉納しているのです。

「大嘗祭(だいじょうさい)」というのは、新天皇が即位する際に行う宮中祭礼のこと。

新天皇即位の礼がすべて終わった後に、新穀を供え、自らも食すというこの祭礼は、国家のため、国民のために、五穀豊穣や安寧を「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」に感謝と祈願をするというものです。

毎年11月に行われる「新嘗祭(にいなめさい)」も同じ儀式。

新天皇の即位がある年のみは、「新嘗祭(にいなめさい)」は行われず、「大嘗祭(だいじょうさい)」だけが執り行われます。

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変容を遂げる里神楽は民間の行事|里神楽の主な種類

巫女さんによる舞である「巫女神楽(みこかぐら)」

「巫女神楽(みこかぐら)」というのは、巫女さんによって舞われる神楽のことをいうのです。

神懸かりの儀式の際に「猿女君(さるめのきみ)」が舞うことを取り入れたことが始まりとされていて、手に「鈴」や「扇」「笹」「榊の枝」などといった神様の依り代となるものを持って順めぐり・逆めぐりに交互に回りながら舞います。

神懸かりでは、舞うことで身を清めて、その巫女さんの身に神様を降ろすとされているのです。

現在では、祈祷をする際や奉納のために舞うことが多いといえ、「千早」「水干」「緋袴」「白足袋」といった装いで身を包んだ巫女さんが、太鼓や笛、銅拍子などのお囃子に合わせて巫女さんが舞い踊ります。

巫女さんの役目といえば、神様と参拝者の「仲とりもち」をすることだといわれていて、授与所で、日頃から参拝者に「お守り」や「お札」や「おみくじ」を渡すことも大切な役目。

人々のさまざまな願いを神様に繋いでくれるという役目があるのですが、そんな巫女さんの一番の重要な役目といえるのは、神様への奉納の舞である神楽を舞うことでもあるのです。

出雲から全国に広まっていった「採物神楽(とりものかぐら)」

「採物神楽(とりものかぐら)」というのは、出雲国・佐陀神社から広まっていった、日本神話を劇化した舞である神楽です。

儀式的な神楽というよりも、演劇性や娯楽性の高い芸能的な要素の多い神楽になっています。

神事性が強い「剣舞(けんまい)」「清目(きよめ)」「散供(さんぐ)」「御座(ござ)」「勧請(かんじょう)」「祝詞(のりと)」「手草(たぐさ)」の7曲からなるものと、芸能性の高い仮面をつけて舞う「神能(しんのう)」と呼ばれる仮面の舞を合わせて演じる神楽が特徴的です。

もともとは伊勢の奉納神楽として始まりましたが、全国的に広まったことから、各地方ごとにさまざまな特徴を持った神楽であることが多く、その土地に伝わる神話をもとに作られています。

題材ごとにさまざまなものを持って舞われるのです。

伊勢から始まって広まっていった「湯立神楽(ゆだてかぐら)」

「伊勢流神楽(いせりゅうかぐら)」、またの名を「湯立神楽(ゆだてかぐら)」と呼ばれるものは、伊勢外宮の摂末社の神楽が各地へと広まっていったものです。

「湯立」というのは、湯釜にたぎらせた湯をかけることで、神職や巫女さんの身を清める儀式のこと。

この「湯立」という儀式を神楽に取り入れて、祈祷されるようになったものが「湯立神楽(ゆだてかぐら)」と呼ばれている理由なのです。

もともと「湯立神楽(ゆだてかぐら)」の始まりとなった、伊勢の「湯立神楽(ゆだてかぐら)」は明治維新の際に途絶えてしまったのですが、ほかの地域には今もなお語り継がれている「湯立神楽(ゆだてかぐら)」が数多く存在しています。

獅子舞をご神体としている「獅子神楽(ししかぐら)」

「獅子神楽(ししかぐら)」と呼ばれる神楽は、獅子舞の一種であり、獅子の頭をご神体としています。

獅子舞を舞いながら、「悪魔祓い」をしたり、「火伏せ」「息災延命」を祈祷する神楽です。

ただ獅子舞を舞うだけではなく、一種の能ともいえるものを演じたりもします。

「山伏神楽(やまぶしかぐら)」「権現舞(ごんげんまい)」「能舞(のうまい)」「番楽(ばんがく)」など地域によって呼ばれ方はさまざまあるのです。

現在日本各地で獅子舞が受け継がれているのも、この「獅子神楽(ししかぐら)」が全国を回っていたからこそ、根付いているものだという説があります。

「舞」と「曲」からなる「太神楽(たいかぐら)」

「太神楽(たいかぐら)」というのは、伊勢神宮や熱田神宮の神職たちが全国を回りながら、獅子舞を舞って、「悪魔祓い」や祈祷をしていたものです。

獅子舞を舞う「舞」と、傘などを使って曲芸をする「曲」があり、余興の要素も含んでいます。

現在でも寄席で見ることができたり、お正月などのおめでたい席でも見ることが出来る時もあり、芸能文化として残っているのです。

もともとは「舞」がメインではありましたが、次第に舞台芸として「曲」が発展していったり、大道芸として発展しました。

舞台芸として有名になったものには、江戸時代末期の「江戸太神楽(えどたいかぐら)」があります。

松前神楽(北海道)は神職が神楽を行うのが特徴

1674年の福山(松前)藩で行われたものが始まり

北海道に伝わる「松前神楽(まつまえかぐら)」の起源には諸説ありますが、1674年(延宝2年)にいろいろな神楽と、能や雅楽などの伝統芸能を集めて福山(松前)藩の当時の藩主である松前矩広(まつまえのりひろ)が、藩の行事として行ったことが始めだという説があります。

この時に行われたのは、「鎭釜湯立神楽(ちんかまゆたてかぐら)」。

これは「鎮火祭」という、火を鎮めるための神事です。

当時行われていたのは12の構成のもので、「惣神拝(そうしんぱい)」から始まり、「修祓(しゅばつ)」「四方拝(しほうはい)」「神楽初(かぐらぞめ)」「釜清め(かまきよめ)」「正神楽(しょうかぐら)」「注連脱(しめぬき)」「祝詞(のりと)」「遊拍子(ゆびょうし)」「湯立(ゆだて)」「湯上(ゆがみ)」、そして最後に「恵美須加持(えびすかじ)」。

現在では残っていないとされているものも含まれていますが、現在も変わらず行われているものもあります。

1674年以降、隔年ごとに神楽が行われ続け、1681年(延宝9年)には23事の神事や舞が出来上がっていたとされているのです。

その後時が経つにつれて無くなったり、新しく出来たり、融合したりしながら、現在に残る12事の神事と21事の舞楽の構成が出来上がっています。

松前藩主が創った「創作神楽」である「神遊舞(かみあそびまい)」「荒馬舞(あらうままい)」は北海道の特徴を表している

松前藩主がさまざまな伝統芸能を取り入れて始めたものが、「松前神楽(まつまえかぐら)」の始まりとされています。

現在では12事の神事と21事の舞楽で構成されていますが、当時の松前藩主が創作したとされている、「創作神楽(そうさくかぐら)」である「神遊舞(かみあそびまい)」や「荒馬舞(あらうままい)」もその中に入っているのです。

「神遊舞(かみあそびまい)」は、弓矢を持った二人の、武神が舞うもの。

「神遊舞(かみあそびまい)」も「荒馬舞(あらうままい)」も、北海道の特徴をよく表したものだとされています。

「松前神楽(まつまえかぐら)」最大の特徴は、神職者が神楽を舞う

「松前神楽(まつまえかぐら)」の最大の特徴はというと、祭典に奉仕した神職者が、神楽を舞う、というもの。

これは江戸時代に松前藩の城中で行われていた、「城内神楽」が神職によって舞われ、伝えられてきたことが理由の一つでもあります。

神職者による神楽として、数少なくなっている「千歳(せんざい)」「翁舞(おきな)」「三番叟(さんばそう)」を伝承していることも、「里神楽(さとかぐら)」の「巫女神楽(みこかぐら)」「採物神楽(とりものかぐら)」「湯立神楽(ゆだてかぐら)」「獅子神楽(ししかぐら)」を4つ揃えて伝承している神楽でもあるのです。

松前藩と関わりが深い「松前神楽(まつまえかぐら)」ですが、現在では北海道の広い地域に広まっていて、各地の120もの神社の祭礼や神事などで神楽が舞われたり、「厄除け」などの祈願のため個人の家で舞われることも。

新年の角祓いなどで「獅子神楽(ししかぐら)」で家々を巡ったりしています。

御利益を得るために、さまざまな「神楽祈願」を行ってきた

「松前神楽(まつまえかぐら)」が発展してきた背景には、庶民の力もあったとされています。

人々はさまざまな祈願を行うために、神楽祈祷を行ってきたのです。

北海道ならではともいえる、「ニシン場神楽」や「鮭場豊漁神楽」のような「豊漁祈願」を目的としたもの、「会場安全神楽」や「手船新造神楽」、「火災消滅神楽」といった「家内安全」「道中安全」を目的にしたもの。

「疱瘡安全神楽」などの「疫病退散」や「無病息災」を願うものなど、人々の生活にとって神楽祈願というのは、とても身近なものだったといえるのです。

明治に入って、松前藩の力が衰退していくにつれ、「松前神楽(まつまえかぐら)」を受け継いできた社家は、氏子との結びつきを深めていくことになり、現在まで受け継いできました。

時を同じくして、人々が各地へと居を移していったことが、それぞれの地域での「松前神楽(まつまえかぐら)」の継承を支えてきたのです。

現在ではそれぞれの地域ごとに保存会が結成されて、今後の伝統の継承と保守を続けています。

各神社の祭礼や地域のイベントで上演される

「松前神楽(まつまえかぐら)」を見ることが出来る場所はいくつもあります。

北海道各地にある、「松前神楽(まつまえかぐら)」を伝承している神社で行われる祭礼やイベント、お祭り、地域で行われるイベントごとの会場で、開催時期などは各地域によって異なりますが、「松前神楽(まつまえかぐら)」を見ることが出来るチャンスは少なくありません。

近くの神社の公式サイトをのぞいてみると、「松前神楽(まつまえかぐら)」の上演が行われる日が掲載されていたりします。

また、「松前神楽(まつまえかぐら)」の保存会が各地を回って披露していることもありますので、イベントの際はよくチェックしてみるといいかもしれません。

12の神事と21の舞楽があり、全部で33の演目がある

「松前神楽(まつまえかぐら)」は、12の神事と21の舞楽があり、全部で33の演目があります。

神事は、「惣神拝(そうしんぱい)」「修祓(しゅばつ)開扉・献饌(けんせん)」「四方拝(しほうはい)」「神楽初(かぐらそめ)」「釜清め(かまきよめ)」「正神楽(しょうかぐら)」「注連脱(しめぬき)」「祝詞(のりと)」「遊拍子(ゆびょうし)」「湯立(ゆたて)」「湯上げ(ゆあげ)」「恵美須加持(えびすかじ)」の12演目です。

舞楽は、「榊舞(さかきまい)・祝詞舞(のりとまい)」「福田舞(ふくだまい)・跡祓舞(あとはらいまい)」「二羽散米舞・庭散米舞(にわさごまい)」「神遊舞(かんあそびまい)・天王遊舞(てんのうあそびまい)」「四箇散米(しかざごまい)・三品舞(さんしんまい)」「千歳舞(せんざいまい)」「翁舞(おきなまい)」「三番叟(さんばそう)」「荒馬舞(あらうままい)・松前遊舞(しょうぜんあそびまい)」「鈴上舞(すずあげまい)・巫女舞(みこまい)」「山神舞(さんじんまい)」「八乙女舞(やおとめまい)」「鬼形舞(きがたまい)」「利生舞(りしょうまい)」「兵法舞(へいほうまい)」「神容舞(かみいりまい)」「注連祓舞(しめばらいまい)・〆引(しめひき)・七五三祓舞(しめはらいまい)」「十二の手獅子舞」「湯倉舞(ゆくらまい)」「荒神舞(あらがみまい)」「神送舞(かみおくりまい)」の21演目になります。

「十二の手獅子舞」には「御稜威舞(みいつまい)・獅子の上(ししのじょう)」「五方(ごほう)」「獅子の鈴上(ししのすずあげ)」「面足獅子(もくたりしし)」があるのです。

「八乙女舞(やおとめまい)」に関しては、福島町松前神楽保存会のみ伝承しているもので、「神容舞(かみいりまい)」「湯倉舞(ゆくらまい)」「荒神舞(あらがみまい)」「神送舞(かみおくりまい)」は、現在では行われていません。

近代神楽|広島(特に芸北)神楽はエンターテイメント性が高い

多種多様な神楽が根付く広島

広島の神楽は、大きく分けても5種類あり、地域によって、土着信仰に根付いた儀礼的背景を強く持つものから、農村地域の娯楽としてエンターテインメント性に長けて進化してきたものまであります。

広島県独自のものもあれば、島根県で盛んに行われている「大元神楽」、「石見神楽」などをもとに歌舞伎などの様々な芸能の影響を受けて発展してきたものもあります。

それぞれの種類の神楽によって意味合いは多少変わってきますが、もともとは「鎮魂」「五穀豊穣」「厄除け」「無病息災」を願ったり、「豊作へのお礼」のために地域の年中行事や神社での神事の際に奉納行事として行われてきました。

現在の広島には実に200~300を超える神楽団が存在しているといわれており、それぞれの神楽団が各地域で大切に継承しています。

何百年もの間、その地域に根付き、力強く行われているものや、地域での奉納という姿を大切にしながらも、地域を飛び出し、観光資源として様々なイベントや公演に年間を通して出演したり、海外公演を行うものも。

神楽どころとして、島根県や宮崎県などがよく取り上げられることがありますが、実は、広島県も全国から大注目されている神楽どころなのです。

「広島神楽」は大きく分けると、5つの神楽に分けられる

昨今、広島県内にある5つの種類の神楽をまとめて「広島(ひろしま)神楽」と呼ぶことが増えてきました。

観光キャンペーンやそのほか事業名として用いられることが増えたこの呼称ではありますが、実際のところは学術的根拠に基づいた使い分けや定義が曖昧で、ファンを中心とした“愛称”として確立されてきたというほうが正しいでしょう。

5つの種類とは、「芸北神楽」「安芸十二神祇(あきじゅうにじんぎ)」「芸予諸島の神楽」「比婆荒神神楽(ひばこうじんかぐら)」「備後神楽」になります。

「芸北神楽」については、「大元神楽」や「石見神楽」がもとになっていますが、島根県から伝播される際に儀礼的要素が多少削られながらも、より娯楽としての側面を強く持つ芸能性と儀礼的な神事性を両立する神楽として広島で育っていきました。

第二次世界大戦後には、GHQの命令により、神楽を執り行うことが禁止された時期もありましたが、一時的に神楽団を「農村舞楽団」と名を変えたり、皇国史観を除去するために「能」や「歌舞伎」の物語をベースに新たな演目を創るなどの先人たちの多大なる努力があり、今日まで大切に受け継がれてきました。

そして、第二次世界大戦前より舞われていた演目を「旧舞(きゅうまい)」。第二次世界大戦終結以降、様々に創作されてきた演目を「新舞(しんまい)」と呼ぶようになったのです。

「安芸十二神祇(あきじゅうにじんぎ)」は、毎年秋まつりの前夜祭において、十二の舞を奉納することから「十二神祇」と名がついていて、江戸時代末期から明治時代にかけて、芸北地方から伝わってきたものが変化したのです。

「芸予諸島の神楽」は、瀬戸内海の島や、沿岸部で行われているもので、知名度としてはほかの「広島神楽」に比べると低めですが、広島県の無形民俗文化財に指定されています。

「比婆荒神神楽(ひばこうじんかぐら)」は、岡山県の「備中神楽」の影響を強く受けていて、とても古い伝統のあるものです。

神懸かりとなるという、古い形式をも受け継いでいます。

「備後神楽」については、修験者の流れを汲んでいる神子と、男性の法者の太夫がもともとは組になって行っていたものです。

広い地域に伝わっていて、「世羅神楽(せらかぐら)」「三谿神楽(みたにかぐら)」「豊田神楽(とよたかぐら)」「御調神楽(みつぎかぐら)」「豊栄神楽(とよさかかぐら)」が集まってできたもの。

「落成式」や「結婚式」の余興や、大人の「神楽競演大会」に「子ども神楽」の発表会もある

「広島(ひろしま)神楽」の中でも「芸北神楽」は広島県内の神楽の中では、まだまだ若い文化でありながらも、その豪華さや、エンターテインメント性が高いことから、最近注目をされ、観光資源として重宝されています。

以前までは、神社で行われる例大祭などで年に1~2度しか見られなかった神楽ですが、最近では年間を通した定期公演が開催されています。

また、その縁起の良さから、「落成式」や「結婚式」などのお祝いの場で神楽が披露されることも。

その他には、全国的にも珍しい神楽の技術を競い合う「競演大会」や「高校生の神楽甲子園 ひろしま安芸高田」などの若い世代が活躍する大会などが開催されたり、主に中学生以下が活躍する「子ども神楽団」やその発表会も行われるほどの人気ぶりです。

子どもと言えども、その熱演ぶり、迫力は大人も顔負けです。

お囃子に合わせて、子どもたちが舞う「神楽」は、まさに伝統芸能が引き継がれていっている証でもあるといえるのです。

そのような人気もあってか「『広島(ひろしま)神楽』=『芸北神楽』」と捉える人も少なくありません。

それどころか「○○女子」と、人気のバロメーターになっている言葉にもなっています。

広島では「カープ女子」が有名ですが、最近では「神楽女子」と呼ばれる人も出てきているのです。

約200~300の神楽団が継承する魅力盛りだくさんの「広島(ひろしま)神楽」

これまで、紹介してきた「広島(ひろしま)神楽」ではありますが、「芸北神楽」のように誰でも簡単に見られるものもあれば、「芸予諸島の神楽」のように限られた地域でしか見ることのできないものもあります。

「広島(ひろしま)神楽」の初めの第一歩としては、「芸北神楽」をご覧になるのがおすすめです。

演目によってさまざまなエンターテインメント性があり、何度見ても引き込まれる魅力が満載です。

テンポもゆっくりしたものから、スピード感のあるものまで、衣装の違いなど、演目によってそれぞれ特徴があります。

ストーリー自体もわかりやすくなっていますので、入りやすい内容です。

「芸北神楽」は既に50~100近くの演目数があると言われており、神楽団体によって物語の描き方は全く異なるものもありますから、自分好みのものを探してみてもいいかもしれません。

「四方祓」は、四方を清め、堅め、神様をお迎えするためのもので、神楽舞の初めには必ず行われる、欠かせないものです。

「岩戸(いわと)」は、「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」の神話で、神楽のルーツでもあるお話。

「恵比寿(えびす)」は、あの七福神のえびす様がメインのお話です。

「塵倫(じんりん)」は、自由に空を飛び回る大悪鬼が出てくるのですが、塵倫が雲の上を飛ぶ演出が見どころ。

「葛城山(かつらぎさん)」は、葛城山に住む土蜘蛛と源頼光が戦うお話です。

土蜘蛛のおどろおどろしい面、衣装、テンポの速い舞が人気の演目。

「大江山(おおえやま)」は、源頼光が鬼を退治するお話で、登場人物が多く、見応え満載です。

たくさんの登場人物が入り乱れての、戦うシーンは圧巻。

「神武(じんむ)」は、広島県が生んだとされるオリジナル演目なので、ここでしか見ることが出来ません。

「滝夜叉姫(たきやしゃひめ)」は、鬼に変貌を遂げてしまった滝夜叉姫の、哀しいストーリー。

「大蛇(おろち)・八岐大蛇(やまたのおろち)」は、有名な神楽でもあります。

最大で8匹の大蛇が登場する、迫力満点といえる演目です。

ほかにも「鐘馗(しょうき)」「八幡(やはた・はちまん)」「天神(てんじん)」「日本武尊(やまとたけるのみこと)」「戻り橋(もどりばし)」「紅葉狩(もみじがり)」「黒塚(くろづか)」とあります。

その他の「広島(ひろしま)神楽」にも、例えば「安芸十二神祇」の「八ツ花」という演目の四人が刀を持ちアクロバティックな舞などといった、それぞれの神楽にたくさんの見どころがあります。

コロナ禍が明けた後には、広島の神楽も見に行ってはいかがでしょうか。

占い師 RINのワンポイントアドバイス「神楽は神様と人が楽しむ宴!地域や特性によって多様性がある」

RIN
神楽は、地域によって特徴はいろいろありますが、神様と一緒に楽しむ宴だということ。

宮中行事の御神楽(みかぐら)は、見ることはなかなかできませんが、里神楽(さとかぐら)なら、私たちも気軽に楽しむことが出来ます。

もともと神事だったものをそのまま受け継いでいるものもあれば、エンターテインメント性が高く、ショーとして楽しむことが出来たりと、多種多様な変化をしてきたといえる神楽です。

今まで神楽について何も知らなかったという人も、一度見てみるとハマるかもしれませんね。

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