日本には四季があり、我々日本人は季節の移り変わりをとても大切に考えてきました。
それぞれの季節がもたらす風景や恵みを、生活の中に取り入れ豊かに暮らしてきたのです。
季節を72にも分類した七十二候があることが、春夏秋冬だけでなく、さらに季節を細かく分けて、ささやかな季節の巡りを感じながら生きてきたことを示しています。
立春・冬至など1年を24に分けた二十四節気、それをさらに3つに分けた七十二候。
現代に生きる私たちが忘れがちな、季節の移ろいを今一度大切にしていきましょう。
この記事では、七十二候の第五十一候「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」について、詳しい意味や時期、旬の野菜や果物、魚介類、草花や行事、運気アップの方法についてご紹介していきます。
日本ならではの季節について再認識し、豊かに暮らしていけるようになっていきましょう。
目次
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の意味
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)は、秋の虫が戸口で鳴く季節を意味しています。
蟋蟀がどの虫を示しているのかは諸説あり、はっきりとは分かっていません。
蟋蟀は明治時代の略本歴ではきりぎりすと読んでいますが、江戸時代の貞享暦ではこおろぎと読んでいます。
現代日本においてはきりぎりすは夏の虫のイメージが強く、蟋蟀在戸はこおろぎを指しているのではないかと考えられていますが、きりぎりすだという考えも否定できません。
ということで、蟋蟀在戸は虫の種類を限定せず、秋の虫が戸口で鳴く頃という意味になりました。
そもそも昔の日本では「虫」といえば、秋の虫を指していました。
それは、日本人が虫の鳴き声によって秋の訪れや深まり、その物悲しさを感じ取っていたことの証拠でしょう。
昔の人は虫聞きをしに山に出かけて、季節の訪れを感じていたそうです。
また、コオロギの鳴き声を合図に冬支度に励んでいたとも言われています。
最近は虫の声に耳を傾けることも少なくなってしまいましたが、蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の時期には意識して虫の声を探してみましょう。
虫の声に季節を感じ取れれば、秋をもっと豊かに過ごすことができるでしょう。
秋の夜は長いと言われ、ゆったりと過ごすことができます。
虫が鳴くからこそ、夜の静けさは際立ち、集中して何かを行うのに絶好の季節です。
冬の方が夜は長いのに「夜なべ」が秋の季語なのは、この季節の夜の過ごしやすさを表しています。
虫の声を聞きながら、読書や勉強や趣味などを楽しんでみるようにしてみましょう。
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の時期は「10月18日~10月22日頃」
2021年 | 10月18日~10月22日 |
2022年 | 10月18日~10月22日 |
2023年 | 10月19日~10月23日 |
2024年 | 10月18日~10月22日 |
2025年 | 10月18日~10月22日 |
2026年 | 10月18日~10月22日 |
2027年 | 10月18日~10月23日 |
2028年 | 10月18日~10月22日 |
2029年 | 10月18日~10月22日 |
2030年 | 10月18日~10月22日 |
蟋蟀が指すのはこおろぎかきりぎりすかと論争され続けてきたわけですが、どちらの虫も昔から親しまれてきました。
こおろぎの鳴き声が書物に残されたのはとても古く、万葉集にその風情が歌われています。
はるか昔の日本でも今と同じようにこおろぎは鳴いていて、その声に季節を感じていただなんてロマンを感じますね。
一方のきりぎりすは機織り虫と呼ばれ、親しまれていました。
それは、きりぎりすの鳴き声が機織りの音のように聞こえるからだそうです。
野山に暮らす虫たちが秋の深まりとともに、人の住む町までやってきて戸口で鳴く様子を想像すると、より飽きが楽しいものとなるでしょう。
中国最古の詩集である詩経の中にもこんな一節があります。
「七月は野に在り、八月は軒に在り、九月は戸に在り、十月は蟋蟀我が床下に入る」
夏には野で鳴いていた虫たちが、寒くなるにつれて人家に近づく様子が描かれています。
古くから私たち人間は、虫たちと上手に共存していたのです。
現代でも季節の移り変わりとともに、近づいてくる虫の様子を感じられるように心に余裕を持って過ごしていきましょう。
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の旬の果物は「柿」
「柿」の基本情報
栄養 | 「柿が青くなると、医者が青くなる」と言われるほど、柿は栄養豊富です。
ビタミンCとカロテンが豊富で、健康な肌と風に負けない体を作るのに役立ちます。 柿のビタミンCは過熱に強く、メラニン色素を抑制し美白・美肌の効果が期待できます。 カリウムや食物繊維も豊富です。 また、柿は二日酔いにも効果的で、アルコール分解作用のあるタンニンも含んでいます。 柿の葉茶やヘタを煎じた汁まで利用でき、私たちは柿の薬効とともに暮らしてきました。 |
選び方 | 柿は食感の好みが分かれる果物で柔らかく熟したものが好きな人もいれば、かたい食感の残るものが好きな人もいます。
自分の好みに合わせて柿を選ぶようにしましょう。 柿の実が赤みがかったものは熟して果肉は柔らかく、実の色が濃すぎないものを選べば食感はかためです。 柿の好みがどうであれ、ずっしりと重いものを選ぶようにしましょう。 小玉の柿よりも大玉の柿の方が、木になる数が少ない分、栄養が行き渡っており甘いとされています。 へたがきれいなものを選ぶようにして、へたと果実の間に隙間がないものを選ぶようにしましょう。 品種によっては黒い横筋が入るものがありますが、それは熟した証です。 |
保存方法 | 柿の基本的な保存方法は冷暗所におくことです。
冷蔵庫に入れておくだけでも、一週間程度は保存可能です。 さらに柿の保存期間を延ばしたいのなら、柿のヘタを湿らせるのがポイントとなります。 柿はヘタで呼吸をしていますから、そこに水分を与えると新鮮さをキープできるのです。 湿らせたキッチンペーパーをヘタに当てて、さかさまにおいて冷蔵庫に入れましょう。 柿が熟すのを遅らせることができます。 さらに長期間保存をしたいのなら、冷凍保存もできます。 皮をむいて冷凍保存すれば、食べたい時に食べられて便利です。 |
その他、お役立ち情報 | 柿には甘柿と渋柿があります。
熟しても果肉がかたいうちは渋みが残るのが渋柿で、これが昔から日本にある柿の基本です。 甘柿は渋柿の突然変異だと考えられており、熟していないうちは渋いけれど熟すうちに渋が抜け甘みが増していきます。 甘柿と渋柿の違いは、苦み成分であるタンニンが口の中で溶けるかどうかにあります。 溶けると渋くなり、溶けないと甘くなるのです。 熟す前はどちらも可溶性タンニンを含みますが、甘柿は熟するとともに不溶性タンニンに変わっていきます。 干し柿にすると渋味は自然と抜け、美味しく食べられるようになります。 |
「柿」の特徴
柿は捨てるところがないというほど、すべて味わい尽くすことができる食材です。
例えば、柿の葉寿司や柿の葉茶のように、果実でなくても葉も食品として使われています。
柿の葉の殺菌効果や美肌効果は古くから知られ、認められてもいるのです。
果実を食べる際にむいた皮も捨てないでください。
皮を風通しのいいところに干しておけば、砂糖代わりに使うことができます。
ほんのりとした甘みが出るので、カレイの煮つけなどに適しています。
また、ヘタを煮詰めた煎じ汁はしゃっくりを止める効果があるとされてきました。
それだけでなくしもやけ要望にも効果があるので、手足の血行が悪い人は塗るのがおすすめです。
「柿」のおすすめの食べ方・調理法
栄養価の高い柿を美味しく効果的に食べるには、柿と大根のなますがおすすめです。
ビタミンCをたっぷり含む柿と消化をよくしてくれる大根の食べ合わせはばっちりなのです。
大根に含まれるアミラーゼは炭水化物の消化を助けてくれ、プロテアーゼはタンパク質の消化を促します。
脂肪の消化を促進するリパーゼも含まれており、酢も消化を促してくれるので胃腸に優しい料理といえるでしょう。
柿も加われば、二日酔いの体にも優しい料理です。
作り方は簡単で大根と柿を千切りにします。
大根には塩をふって水気を切ったら、合わせ酢と柿と和えるだけで完成です。
柿と大根のなますを一皿加えるだけで、胃腸の調子が整うでしょう。
またクックパッドの「柿」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の旬の魚介類は「サバ」
「サバ」の基本情報
栄養 | サバにはタンパク質と脂質が多く、サバの脂肪には善玉コレステロールを増やす不飽和脂肪酸が多く含まれています。
サバはビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB12を多く含んでいます。 ビタミンDはカルシウムの吸収を助け骨を丈夫にしてくれ、不足すると骨が弱くなり筋力が低下することに。 ビタミンB6は血液や筋肉を作るのに必要な栄養素で、健康と美を保つのに役立ちます。 ビタミンB12は神経や脳の働きを助け正常な赤血球を作り出す働きもあり、サバには鉄分も含まれているので貧血を防いでくれるでしょう。 DHAやEPAなどの体内でつくり出せない不飽和脂肪酸も多く含んでいます。 |
選び方 | サバは「鯖の生き腐れ」と言われるほど傷みやすい魚です。
生きたまま腐ると言われるほどに鮮度が落ちやすいのは、青魚全般に見られる特徴です。 消化酵素が多く含まれているので、死ぬと同時に腐り始めてしまうといえるでしょう。 そのためサバを選ぶ時には鮮度を見極めることが大切です。 サバを一尾買う時には目の濁りがないものを選べば簡単ですが、切り身の時には身の色や切り口を見ていきましょう。 身の色は赤身がかったピンク色で透明感があるものが新鮮です。 血合いが黒ずんでいないものを選ぶようにしましょう。 切り口のきれいさも重要です。 皮はピンと張っていて、全体的にふっくらしたものを選べば、鮮度も良く美味しいサバが選べるでしょう。 |
保存方法 | サバは腐りやすい食材で、適切に保存しなければあたることもあります。
冷蔵保存の場合は内臓を取り除いてから保存していきましょう。 サバを一尾丸ごと購入した場合は、購入後すぐに内臓を取り除き三枚におろして、一枚ずつラップにくるんでから冷蔵庫に入れてください。 切り身の状態で買った場合も、一枚ずつラップにくるむ手間を惜しまないようにしましょう。 トレーのままで冷蔵庫に入れてしまうと、切り身から出た血やドリップで鮮度が落ちてしまいます。 切り身が空気に触れることでも鮮度は落ちてしまうので、ラップで空気に触れさせないことが大切です。 |
その他、お役立ち情報 | サバは安価で日本でよく食べられている魚です。
気軽に買えて栄養価も高く、食卓にのぼる回数も多いでしょう。 そんなサバの気になる点といえば、臭みがある点ではないでしょうか。 サバが苦手だという人はこの臭みが問題であることが多いので、臭み取りの方法について知っておきましょう。 サバの臭み成分はアルカリ性なので、酸で中和するのが効果的です。 梅干しと一緒に煮込めば、サバの臭みを感じることはないでしょう。 他にも、トウガラシや酒、牛乳や生姜も効果的です。 |
「サバ」の特徴
サバには大きく分けて、マサバ・ゴマサバ・タイセイヨウサバの3種類があります。
私たちが食べているのは、ほとんどが外国産のタイセイヨウサバです。
日本で獲れるマサバは高価で、旬は秋から冬です。
しかし、日本は南北に長く産卵期も異なるため、旬の季節以外でも美味しいサバが食べられます。
最近では養殖も増え、各地でブランドサバが生まれています。
関サバや金華サバという名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
サバの歴史は古く、縄文時代にはもう食べられていた形跡があったそうです。
昔から食べられてきたサバを食べ、蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)を感じていきましょう。
「サバ」のおすすめの食べ方・調理法
サバにはさまざまな調理法がありますが、シンプルに塩焼きをおすすめします。
塩焼きはシンプルですが、サバのアジがダイレクトに感じられる食べ方です。
作り方も簡単で、切り身の状態のものを買えばすぐに作ることができます。
まずサバの皮目に二カ所切り込みを入れ、両面に塩を振って冷蔵庫で30分ほどおきましょう。
水分が出てくるので、キッチンペーパーで優しく押さえ水分を拭き取ります。
魚焼きグリルで焼き、大根おろしを添えていただきましょう。
またクックパッドの「サバ」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の旬の草花は「リンドウ」
「リンドウ」の基本情報
学名 | Gentiana scabra |
科・属 | リンドウ科・リンドウ属 |
原産国 | 日本・朝鮮半島・中国 |
別名 | イヤミグサ |
「リンドウ」の特徴
リンドウは漢字で書くと竜胆です。
これはリンドウが古くから薬草として親しまれており、竜の胆に匹敵する苦さがあることが由来です。
りゅうたんが徐々に変化し、リンドウになったとされています。
リンドウは薬草だとは思えないほど可愛らしい花で、青紫色の花色をしています。
雨の日は花を閉じてしまうので、秋の晴れた日にしか咲いている姿は見えないでしょう。
「リンドウ」の花言葉
リンドウの花言葉は「悲しんでいるあなたを愛する」です。
これはリンドウの花の色が青紫で、悲しさを思わせることが由来となっています。
リンドウは古代エジプトの頃から薬として用いられており、とても歴史のある植物です。
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の旬の行事は「鞍馬の火祭」
鞍馬の火祭は京都の由岐神社の例祭です。
かがり火をたいた街中をたいまつを持って練り歩き、鞍馬寺に持ちよります。
平安時代に由岐明神が京都御所から鞍馬に移されたときに、鴨川の葦をかかり火にしたことが始まりです。
毎年10月22日に行われ、その様子は誰でも見ることができます。
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の運気アップの方法は「夜を楽しむ」
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)を幸運に過ごすには、夜の過ごし方にポイントがあります。
この季節の夜は一年で最も過ごしやすい季節で、何をするにも良い季節です。
何もしないで夜をだらだら過ごすのはやめて、何かに打ち込んで楽しみながら過ごしてみてください。
そうすることで、あなたの運気はみるみる上昇していくでしょう。
夜静かになった街の中に響く虫の声を聞きながら何かを始めてみれば、それはあなたの助けとなります。
虫の声に耳を傾け季節を感じながら、今しかない過ごしやすい季節を楽しんでいきましょう。
他の七十二候の意味や時期の一覧
占い師 小鳥のワンポイントアドバイス「秋の夜長」
蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)の頃は、これから冬を迎える前の過ごしやすい季節よ。
暑くもなく寒くもなく、何をするにもいい時期だわ。
これほど過ごしやすい季節はあっという間に過ぎちゃうから注意してね。
虫の声を聞く余裕を持ちながらも、秋の夜長を無駄にしないで過ごしていきましょうね。
虫たちのさえずりは、あなたの背中を押してくれるはず。
何か新しいことにチャレンジしてみましょ。