日本には四季があり、我々日本人は季節の移り変わりをとても大切に考えてきました。
それぞれの季節がもたらす風景や恵みを、生活の中に取り入れ豊かに暮らしてきたのです。
季節を72にも分類した七十二候があることが、春夏秋冬だけでなく、さらに季節を細かく分けて、ささやかな季節の巡りを感じながら生きてきたことを示しています。
立春・冬至など1年を24に分けた二十四節気、それをさらに3つに分けた七十二候。
現代に生きる私たちが忘れがちな、季節の移ろいを今一度大切にしていきましょう。
この記事では、七十二候の第四十九候「鴻雁来(こうがんきたる)」について、詳しい意味や時期、旬の野菜や果物、魚介類、草花や行事、運気アップの方法についてご紹介していきます。
日本ならではの季節について再認識し、豊かに暮らしていけるようになっていきましょう。
目次
鴻雁来(こうがんきたる)の意味
鴻雁来(こうがんきたる)は、渡り鳥である雁が北の国から飛んでくる時期を示しています。
二十四節気の寒露の初候の頃で、季節で言うと晩秋に当たります。
かつての日本では、雁はどこにでも飛んできていました。
その年に初めてやって来る雁を初雁と言い、それによって昔の人々は季節を感じていたのです。
今では宮城県などの一部地域にしか雁は飛んできませんが、鴻雁来(こうがんきたる)の名前は残っています。
七十二候の中には雁が渡ってくる頃だけでなく、雁が帰る頃もあります。
それは、鴻雁北(こうがんかえる)で雁が北国へ帰る頃のことです。
雁は寒い場所を好み、1年中寒冷地で過ごせるように場所を変えながら過ごします。
雁がやってきて、また帰っていくというのは、私たち日本人が季節を感じるのにとても重要なことだったのです。
古来の日本では、雁は身近な鳥だったようで雁の名がつく言葉はたくさんあります。
例えば、雁が渡ってくる頃に吹く風のことは「雁渡し」、手紙のことを「雁の使い」などと呼んでいました。
中国の故事では雁の足に手紙を結んで届けたとされており、日本人も手紙を待つような気持ちで季節を告げる鳥である雁を待っていたのではないでしょうか。
また、植物の中にも雁の異名が付いているものがあります。
葉鶏頭という鶏のトサカにそっくりの派手な植物の異名は「雁来紅」です。
それは、葉鶏頭が雁が渡ってくる頃に、紅く色づき始めるからです。
雁が渡ってくる頃に、葉鶏頭が紅くなる。
こんな風に季節の訪れを感じながら、日々を楽しんでいたことが分かりますね。
かつて日本人にとってとても身近だった雁は、切手の絵柄としても採用されていました。
明治時代の切手には雁が描かれているものもあったのですが、乱獲が続いたため現代日本では保護鳥に指定され、狩ることは禁止されています。
雁の見た目は鴨にとても似ており、かつての日本では皇室で食べられる高級食材だったようです。
雁の味が気になるところですが、保護鳥となった現代では食べることはできません。
鴻雁来(こうがんきたる)の時期は「10月8日~10月12日頃」
2021年 | 10月8日~10月12日 |
2022年 | 10月8日~10月12日 |
2023年 | 10月8日~10月12日 |
2024年 | 10月8日~10月12日 |
2025年 | 10月8日~10月12日 |
2026年 | 10月8日~10月12日 |
2027年 | 10月8日~10月12日 |
2028年 | 10月8日~10月12日 |
2029年 | 10月8日~10月12日 |
2030年 | 10月8日~10月12日 |
鴻雁来(こうがんきたる)の頃には、特徴的な風が吹きます。
それは雁渡しと呼ばれる風で、別名青北風(あおきた)とも言われるものです。
シベリアからやって来る雁は、日本海を超えてやってきます。
この頃の日本海側は灰色の曇り空をしており、そのグレーの空と冷たい海の間を群れを成して飛んでくる雁の姿は一生懸命です。
雁渡しは雁とともに秋の空気も運んでくれます。
秋の空に浮かぶウロコ雲を吹き飛ばし、雁渡しが吹いた後には晴れ渡った秋空が広がります。
これが、雁渡しが青北風と呼ばれる所以です。
とは言え、この頃は秋雨の季節でもあり、秋の長雨は秋湿り(あきしめり)と呼ばれたりもします。
秋湿りは単に雨のことを指すのではなく、飽きの湿度の高さを示すことも多いようです。
梅雨のじめじめとは違い、秋湿りの頃はひんやりと涼しさが増し、これから寒くなる季節を思わせる物悲しさがあります。
昔の人も秋湿りの中、これから来る季節の準備をしていたのでしょうね。
また、秋は運動会の季節でもあります。
鴻雁来(こうがんきたる)の時期は、もともとの体育の日でもある10月10日を含んでいることからも分かる通り、運動にピッタリの季節です。
日本で初めて行われた運動会は、明治7年の3月で海軍兵学校で行われたものでした。
その後、明治20年代になると小学校にも広がっていきます。
春の運動会もありますが、やっぱり運動をするなら爽やかな秋空の下がおすすめです。
歳時記でも運動会は初めは春の季語だったらしいのですが、今では秋の季語となっています。
秋はスポーツ以外にも、食欲の秋と言われることもあるほど、美味しい作物が実る季節です。
鴻雁来(こうがんきたる)の頃もししゃもやしめじや栗などが旬を迎えます。
秋の収穫を祝う祭りが各地で行われるのは、古来からの習わしです。
例えば、長崎の諏訪神社では10月7、8、9日の期間で長崎くんちという祭りを開催します。
豪華絢爛な祭礼として評判で、異国情緒あふれる奉納踊は、国指定重要無形民俗文化財にも指定されています。
鴻雁来(こうがんきたる)の旬の野菜は「しめじ」
「しめじ」の基本情報
栄養 | スーパーにしめじとして売られているものは、ほとんどがぶなしめじやひらたけで、ほんしめじとは別の品種です。
ぶなしめじはカルシウムの吸収を助けるビタミンDやビタミンB1、B2、ナイアシン、必須アミノ酸であるリジンを含んでいます。 リジンは日本人に不足しがちな栄養素でたんぱく質やカルシウムの吸収を付けてくれます。 ひらたけにはガン抑制効果、免疫系等を活発にしてくれるレクチンが豊富に含まれています。 |
選び方 | 全体的に弾力があり、カサと軸がしっかりしているものを選ぶようにしましょう。
柔らかくなっていてしなびていたり、シワが出ていたりするものは古くなっているので避けてください。 軸の根元まで硬いのが、新鮮な証拠です。 カサは開きすぎておらず、小さめで丸くしまりのあるものは旨味があります。 |
保存方法 | キノコ類は水分に弱いため、水滴は厳禁です。
買ってから2~3日で使い切るならパッケージのまま、野菜室で冷蔵保存で構いませんが、それ以上になると袋の内側に水滴がつき傷んでしまいます。 すぐに使わない時にはパッケージから出し、石突きを残したまま乾いたキッチンペーパーで包んでから袋に入れましょう。 キッチンペーパーが湿っていたら、途中で交換してください。 |
その他、お役立ち情報 | しめじには旨味成分であるグルタミン酸が含まれています。
しめじを入れることで、どんな料理にも深みが増すでしょう。 他にもカリウムや食物繊維、ビタミンもたくさん含まれており健康維持を助けてくれます。 しめじの栄養素は保存方法で、さらにアップします。 天日干しにするとビタミンDと旨味がアップ、冷凍保存すると旨味が増すのです。 天日干しも冷凍も簡単で、しめじの石突きをとって食べやすい大きさに小分けにします。 干す場合はざるに広げて1日~3日ひなたにおき、冷凍する場合は保存袋に入れて冷凍庫に入れましょう。 どちらも水戻しや解凍することなく、そのまま使えて便利です。 |
「しめじ」の特徴
「香りまつたけ、味しめじ」という言葉を聞いたことはないでしょうか。
これはしめじの美味しさを表した言葉で、しめじは美味しいキノコとして有名です。
実は「香りまいたけ、味しめじ」の言葉が指すしめじは、ほんしめじのことで一般的にはあまり流通していないキノコとなります。
ですが、スーパーで売られているぶなしめじやひらたけも旨味があり、十分に美味しいキノコです。
しめじの旬は9月~10月ですが、近年は施設内で栽培されることが多いので一年中美味しく食べられます。
天然のほんしめじは9月~10月に旬を迎え、旬の時期が短いこともその希少性を高めています。
昔の人々は、ほんしめじを見つけることで秋を感じていたのでしょう。
現代日本ではしめじは全国各地で栽培されていますが、一番多いのは長野県で全体の4割を占めています。
「しめじ」のおすすめの食べ方・調理法
しめじを美味しく簡単に食べるのにおすすめなのは炊き込みご飯です。
しめじが入ることで旨味も増すし、食感にも変化が生まれてご飯が美味しくなります。
石突きをとってバラしたしめじと、油揚げや人参、鶏肉をしょう油や酒と合わせて炊けば完成と簡単に作ることが可能です。
しめじを炊き込みご飯に入れることは、美味しさの面だけでなく健康面でもいいことがあります。
しめじに含まれるビタミンB1はご飯の糖質をエネルギーに替え、食物繊維は血糖値の上昇を抑え食後に血糖値が急上昇するのを防いでくれます。
また、ご飯と一緒に炊くことでしめじの香りと旨味が際立ち、その分調味料を控えめにしても美味しく食べられるという嬉しい効果も。
減塩しながら美味しく旨味を味わえるので、ぜひしめじの炊き込みご飯を試してみてください。
内容の最後に下記のようにクックパットの該当ページをリンク(ふきのとうの場合)
↓
またクックパッドの「しめじ」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
鴻雁来(こうがんきたる)の旬の魚介類は「ししゃも」
「ししゃも」の基本情報
栄養 | ししゃもは頭から尻尾まで丸ごと骨まで食べられるので、カルシウムを摂取することが可能です。
その豊富なカルシウム量は、他の魚と比べても群を抜いています。 昨今、注目されているEPA(エイコサペンタエン酸)も、ししゃもに含まれています。 EPAはアレルギー症状の緩和に役立つとされており、花粉症やアトピーなどの改善に期待の持てる成分です。 EPAにはさらに抗血栓作用もあり、血液をさらさらにしてくれます。 魚類に豊富なDHA(ドコサヘキサエン酸)も含まれており、記憶力や学習力を高めるのに役立つでしょう。 DHAは目の裏側に多く、他の魚なら食べるのが難しい部位ですが、丸ごと食べられるししゃもなら効率的に摂取できます。 |
選び方 | ししゃもは身が大きい方が美味しいとされているので、肉厚なものを選ぶようにしましょう。
身がピンクがかっているのが新鮮な証拠です、黄色くなってきているものは避けてください。 目が濁ってきていると鮮度が落ちていますので、目も判断基準にすることを忘れないでおきましょう。 オスよりもメスの方が身が柔らかく、調理方法によってオスメスを使い分けるようにするのがおすすめ。 |
保存方法 | すぐに食べる場合は冷蔵保存で構いませんが、なるべく早く使い切るようにしましょう。
長期保存したい場合には冷凍保存がおすすめです。 キッチンペーパーで水気をよく拭き取り、1尾ずつラップで包みます。 ジッパーの付いた保存袋に入れて、なるべく空気を抜いてから冷凍庫に入れればOK。 解凍してしまうとドリップが出て美味しくなくなるので、調理する際は凍ったまま使うのがおすすめです。 |
その他、お役立ち情報 | 普段スーパーでよく見かけるししゃもは、実は本当のししゃもではありません。
あれはカラフトシシャモで、厳密に言えばししゃもとは違うものです。 本当のししゃもは北海道南部の太平洋側にだけ存在する珍しい魚で、年々その数も減ってきています。 ししゃもの語源はアイヌ民族の伝説にあります。 アイヌの神によってししゃもは柳の葉から作られたとされており、柳=シュシュ+葉=ハム=ししゃもとなったのです。 その昔、鮭がとれなくて困ったアイヌの人が髪に祈りを捧げたら、柳の葉が落ちてししゃもになったというのがアイヌ民族の伝説です。 |
「ししゃも」の特徴
ししゃもはかつて干物が主流でしたが、鮮魚も出回るようになりました。
最盛期は産卵のため群を成す10月頃です。
値段は干物も鮮魚もどちらも高く、今では高級魚の一種です。
シシャモが日本全国で知られるようになったのは戦後のこと。
1950年代後半からししゃも桁網漁業が始まり、全国に流通するようになっていきました。
「ししゃも」のおすすめの食べ方・調理法
ししゃもは焼いて食べるのがおすすめです。
冷凍で流通していることが多いので、凍ったまま焼いていきましょう。
魚焼きグリル内を温めてから、真ん中を避けて端の方に置いていきます。
これは均等に火が通るようにするためです。
皮目が香ばしく焼けて、脂がふつふつとしてきたら焼き上がりです。
両面焼きグリルの場合、焼き時間の目安は8分ほどになります。
またクックパッドの「ししゃも」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
鴻雁来(こうがんきたる)の旬の草花は「ななかまど」
「ななかまど」の基本情報
学名 | Sorbus commixta |
科・属 | バラ科ナナカマド属 |
原産国 | 世界中の温帯地域に生息 |
別名 | ヤマナンテン |
「ナナカマド」の特徴
ナナカマド最大の特徴は、その燃えにくさでしょう。
7回かまどでくべても燃え残ることから、ナナカマドとなったとされるほど燃えにくいのです。
ナナカマドは山で見かけることも、北国ならば街路樹としても植えられている植物です。
初夏には小さな白い花を咲かせ、秋になると高揚し真っ赤な丸い実を実らせます。
「ナナカマド」の花言葉
ナナカマドの花言葉は、「安全・慎重・私があなたを守る」です。
どれもナナカマドの燃えにくく丈夫な特徴が由来となっています。
ヨーロッパではナナカマドは魔除けの役割を持っていたことが、私があなたを守るの由来となったともされています。
鴻雁来(こうがんきたる)の旬の行事は「運動会」
1964年10月10日、これは東京オリンピックの開会式の日付です。
鴻雁来(こうがんきたる)の時期に、国際的な運動の祭典は開催されたのです。
この日は晴れる確率が高いことから、開会式の日に選ばれたとされています。
実際、1964年も前日の10月9日には台風が接近して雨が降っていましたが、10日には抜けるような青空となりました。
このことを記念して、1966年には10月10日は体育の日として祝日になりました。
そして、多くの学校や地域で運動会が開催されるようになったのです。
2000年からは10月の第二土曜日となってしまった体育の日ですが、鴻雁来(こうがんきたる)が絶好の運動日和であることは変わりません。
鴻雁来(こうがんきたる)の運気アップの方法は「体を動かす」
鴻雁来(こうがんきたる)の時期は、ちょうどこれから寒くなる準備をするのに最適な時期です。
運気アップをしていくためには、体を動かすことを意識して過ごしてみましょう。
完全に寒くなってしまうと、なかなか体を動かすのも難しくなってしまいます。
体力が低下してしまっては、厳しい冬を乗り越えるのは難しくなってしまうでしょう。
激しい運動でなくても構いませんから、少し運動習慣を毎日の中に取り入れるようにしてみましょう。
そうすることで、体の面だけでなくあなたの心の中でも冬に対する心構えができてきます。
また、体を動かすことで、すっきりとした気持ちで毎日を過ごせるようになるでしょう。
雁たちも飛んでくるこの季節、私たちも体を動かしながら過ごしてみましょう。
他の七十二候の意味や時期の一覧
占い師 小鳥のワンポイントアドバイス「空を見上げよう」
鴻雁来(こうがんきたる)の時期は、雁が海を越えてやってくる時期のこと。
昔とは違いその姿を、日本全国で見られるわけではないけれど、ぜひこの時期には空を見上げてみてね。
そうすれば、吹く風や秋空の爽やかさなど、この季節を思う存分感じられるはずよ。
雨が降ったり、その雨雲を風が吹き飛ばしたり…。
この時期の空は毎日大きく様子を変えるの。
空を眺める余裕を持ちながら、毎日ゆとりをもって過ごしてみてちょうだいね。