古代中国では、半年ごとの季節の移り変わりを表す「二十四節気(にじゅうしせっき)」というものがあります。
この二十四節気をさらに、5日ごとに細かく分けてそれぞれ気象の変化、動物・植物などの変化などを表すもののことを「七十二候(しちじゅうにこう)」というのです。
江戸時代以降、日本では時代が移り変わるにつれて、中国で作られた七十二候を日本の風土や気候に合わせて改訂されてきた日本独自の七十二候ですが、現在のものは明治時代に改定されたもの。
今ではあまり馴染みのない人も多い旧暦ではありますが、その時期に見られる兆しや移り行く季節の変化を感じさせてくれるものなのです。
ここでは七十二候の第七候「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」の意味・時期・旬の野菜・魚介類・草花・運気アップの方法まで詳しく紹介していきます。
「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」とは、眠っていた虫や動物たちが目を覚まして動き始めるのです。
自然界の目覚まし時計ともいえる、雷も鳴り始め、私たちにとっても春の訪れを確かなものにしてくれます。
日々の暮らしに季節を感じるための、参考にしてください。
目次
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)の意味
「冬ごもりしていた虫が、姿を地上に現し始める頃」という意味になります。
冬の間には冬眠していた虫たちが、季節が変わり始めていることに気が付き外に出てくるのです。
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)は、二十四節気の「啓蟄」の初候であり、七十二候の第七候です。
虫たちだけに限らず、動物たちもまた、春が来たことを感じ取って目を覚まし始めます。
立春の後に初めてなる雷のことを「初雷」といいますが、この雷は「虫出しの雷」という呼ばれ方もあるのです。
眠っている虫や動物たちに「春が来たから目を覚ましなさい!」と、雷様からの声のようなもの。
雷の大きな音にビックリして目を覚ます、虫や動物たちも少なくないのかもしれないといえます。
この時期は雷が多く、私たち人間も春が来たことを感じることが出来る気象現象の一つですが、春になって動き出すのを待っている虫や動物たちにとってはとても大切な合図だといえるのです。
自然界の目覚まし時計といってもいいもので、そう考えてみると今までとは違った雷の捉え方もできます。
現在ではカレンダーなどで簡単に日にちもわかりますが、そうではなかった昔の人たちは、この時期に雷が鳴ることをきちんと知っていたということがわかることを証明しているかのように、「虫出しの雷」はこの時期の季語にもなっていて、たくさんの歌で詠まれているのです。
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)の時期は「3月5日~3月9日頃」
2022年 | 3月5日~3月9日 |
2023年 | 3月6日~3月10日 |
2024年 | 3月5日~3月9日 |
2025年 | 3月5日~3月9日 |
2026年 | 3月5日~3月9日 |
2027年 | 3月6日~3月10日 |
2028年 | 3月5日~3月9日 |
2029年 | 3月5日~3月9日 |
2030年 | 3月5日~3月9日 |
2031年 | 3月6日~3月10日 |
この時期は眠っていた虫たちが行動を開始しはじめる頃なので、この時期によく耳にすることといえば「こも外し」。
立冬の頃にする「こも巻き」ですが、これは冬が来る前に木に藁(わら)で作った「こも」と呼ばれる、腹巻きみたいなものを巻くことです。
「こも」を巻くことで害虫が「こも」の中で冬を越すと考えられ、江戸時代から続けられている害虫駆除の方法。
虫たちが動き出す前には外され、「こも」を焼き払うことで木につく害虫を駆除することが出来るというものなのです。
そしてその「こも外し」が行われる時期が、虫たちが動き出すという蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)に時期だということ。
ニュースでも毎年耳にすることが出来る風物詩の一つです。
しかしながら実はこの「こも巻き」「こも外し」、害虫駆除には全く役立っていないとのこと。
ではなぜ今でも続けているのかというと、「昔から続く冬の風情を大切にしているから」という理由なのです。
徐々に止める選択を取っているところもある中、今でも大切にしているところがあるのはうれしいこと。
でももしかするとこの先、全く見ることが出来なくなる行事になる可能性もあるといえます。
古いしきたりや伝統がどんどん薄れていってしまうなか、昔の風情がなくなってしまうのは寂しいものですから、大切にしていきたいものです。
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)の旬の野菜は「ワラビ」
「ワラビ」の基本情報
栄養 | ・ビタミンE:活性酸素を抑えて、不飽和脂肪酸の酸化を防いでくれます。
動脈硬化や心筋梗塞など生活習慣病の予防効果があります。 |
選び方 | 産毛がたくさんついているものが新鮮な証です。
茎が太くて短い、首が上を向く前のものが柔らかいといえます。 茎の部分が茶色くなっているものは鮮度が落ちてきたものなので、緑色のものを選んでください。 |
保存方法 | ワラビはアクが強く、鮮度が落ちやすいので、アク抜きをしてから水に浸したまま冷蔵庫保存で2・3日。
塩漬けや干物なら長期保存が可能です。 |
その他、お役立ち情報 | ・強い毒性のある成分が含まれているので、アク抜きはしっかりとしてください。
アク抜きが十分でなく、大量に毒性の成分を摂取してしまったら、大量出血症状を起こしたり、骨髄を壊してしまったりと、死に至るケースもあるのです。 |
「ワラビ」の特徴
ワラビは身近な山菜といえ、山奥までいかなくても採ることが出来ます。
ワラビの根には、デンプンが多く含まれているのです。
このデンプンからはわらび粉が作られ、わらび餅のもととなっています。
全国的に自生していますので、地域によって旬の時期が異なりますが、3月から6月の初めごろまで、春を迎えるとともに旬は北上していくのです。
採りに行くなら、日当たりの良い雑木林に行きましょう。
前の年に生えていた、ワラビの枯葉を探すことがポイントです。
採取の際には根元から手で折ります。
折れやすい場所がありますので、探してみてください。
「ワラビ」のおすすめの食べ方・調理法
炊き込みご飯や、ほかの山菜と一緒にサラダなどにしていただくのが、おすすめです。
お浸しや天ぷらは定番なもの。
どの料理にするにも、ワラビはアク抜きが必須です。
アク抜きが甘いとワラビの持つ強い毒性のある成分が残ったままになってしまい、中毒症状を起こしてしまいます。
アク抜きの方法は、沸騰したお湯に重曹か木炭を入れて、ワラビを浸けて加熱。
沸騰直前になると火を止めて、落し蓋をしたらそのまま冷めるまで待ちましょう。
冷めたら水を新しいものに交換して、一晩置いておいてください。
別の方法では、鍋にワラビを入れて、重曹か木炭をふりかけたところに熱湯を回しかけます。
落し蓋をして一晩おき、水洗いしましょう。
ゆでる時は、ゆですぎないようにしないと、歯触りがなくなってズルズルとした感じになってしまいます。
ゆで時間には気をつけましょう。
またクックパッドの「ワラビ」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)の旬の魚介類は「サワラ」
「サワラ」の基本情報
栄養 | ・DHA・EPA:血栓予防やガンの抑制効果があります。
・ビタミンD:カルシウムの吸収を促進する効果があり、骨の健康を維持します。 ・ビタミンB12:DNAの合成や調整に関わっていて、正常な細胞の増殖を助ける働きがあります。 |
選び方 | ツヤがあり、班紋がハッキリとしているものが新鮮な証。
目が澄んでいて、みずみずしさが残っているもの、なかのエラが鮮やかな赤色のモノを選びましょう。 切り身の場合は、斑紋がハッキリしていることに加えて、身が割れておらず血合いの部分の色が鮮やかなものが新鮮です。 |
保存方法 | 内臓処理をしてから保存しましょう。
冷蔵庫の場合は、表面の水分をキッチンペーパーでふき取ってからラップなどに包み、袋に入れてチルド室で保存してください。 冷凍保存の場合も、表面の水分をしっかりとふき取ってから、空気に触れないようにして冷凍庫へ入れましょう。 下味をつけてから冷凍しておいてもいいです。 |
その他、お役立ち情報 | ・良質のたんぱく質・鉄分を多く含んでいます。 |
「サワラ」の特徴
サワラの体長は1メートル以上になり、体は細長く、青褐色の丸い斑紋が、体に並んでいることが特徴です。
サワラは「高級魚」として扱われていて、特に冬に獲れる「寒鰆」は脂がのっていて刺身にすると、マグロの中トロに匹敵するといわれています。
見た目ではサワラは白身魚と思えるのですが、肉質の成分的には赤身魚とされているのです。
瀬戸内海のサワラは有名で、サワラの刺身が珍しくない地域。
漁獲地周辺では盛んに食べられているのです。
サワラの旬については地域によって違いがあり、瀬戸内海周辺では真子や白子と一緒に食べる文化があることから、5月から6月が旬。
しかし関東の方では「寒鰆」の12月から2月ごろが旬になっているのです。
「サワラ」のおすすめの食べ方・調理法
鮮度の良いサワラが手に入ったなら、お刺身でいただくことをおすすめします。
そのままもいいのですが、昆布締めやなめろう、マリネなどのアレンジを聞かせてもいいです。
焼き魚にするなら、柚子胡椒でいただきましょう。
柑橘系との相性がいいので、付け込んで焼いてもおいしいです。
味噌との相性もいいので、西京焼きは有名なもの。
調理をする際には、扱いに注意が必要です。
身が柔らかいので、身割れしやすいといえます。
その点では煮崩れしやすいといえますので、煮物はおいしいのですが、調理の面では向いていません。
またクックパッドの「サワラ」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)の旬の草花は「スミレ」
「スミレ」の基本情報
学名 | Viola mandshurica |
科・属 | スミレ科・スミレ属 |
原産国 | 日本・朝鮮半島・中国の東部から東北部 |
別名 | マンジュリカ |
「スミレ」の特徴
スミレの花は可憐なイメージが強い花の一つですが、街中の歩道やガードレール脇、アスファルトの裂け目といった場所でも見ることが出来るたくましい花なのです。
紫色のスミレが代表的な色といえますが、白や黄色、ピンクや青などさまざまな色があります。
スミレの花の後方に袋状になっている部分があるのですが、これが突起している姿が「墨入れ」に似ていることからスミレという名前が付いたという説があるのです。
スミレが咲くのは3月の下旬から5月くらいまでになります。
日本に自生しているスミレは役80種類ですが、世界には450種類以上もあるといわれているのです。
スミレの種には「エライオソーム」という甘いコーティングがしてあって、アリに種を運んでもらうことが出来ます。
「スミレ」の花言葉
「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」がスミレの花言葉です。
色別についている花言葉は、紫のスミレが「貞節」「愛」、白いスミレは「あどけない恋」「無邪気な恋」「純潔」、黄色のスミレには「田園の幸福」「つつましい喜び」があり、ピンクのスミレは「愛」「希望」となります。
また青色のスミレには海外のみ「watchfulness」「love」というものがあります。
それぞれ「用心深さ」「愛」という意味です。
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)の旬の行事は「事始め」
この時期の行事といえば「事始め」です。
旧暦の2月8日、新暦でいうところの2月下旬から3月中旬の頃に行うもの。
暖かくなってきたこの時期に、農作業を始めたり、一年の営みが始まるというものです。
事始めには、「お事汁」というもの食べてお祝いをするという風習があります。
お事汁というのは、お味噌汁に芋やゴボウ・大根や小豆・ニンジン・クワイ・焼き栗やこんにゃくなどをいれたものです。
「事始め」には2つあり、「事」が何を指しているかによって違うのですが、ここでの「事」は「人」を指しているもの。
ちなみにもう一つの事始めは、「事」が「神様」を指している神事なのです。
その年を司る神様である、年神様を迎えるために準備を始めることをいいます。
これは正月行事の一環であり、「神事の期間」となるのです。
この「神事の期間」が終わって、「人の日常」が始まるというサイクルだということ。
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)の時期に当たる事始めは、「人の日常」が始まるものを指しているのです。
虫や動物たちだけではなく、人もまた動き始める時期だといえます。
蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)の運気アップの方法は「アクの強い山菜を食べましょう」
この時期に運気アップをしたいのであれば、山菜を食べることです。
特にアクの強いものを食べることが、おすすめ。
とはいえしっかりとアク抜きをすることを、忘れないようにしてください。
アクが強いものは、毒性の成分を持っていることもあり、一歩間違えてしまえば命を落としてしまう危険性もあるのです。
しかしながらこの時期にアクの強い山菜を食べることは、冬の間に山菜が蓄えていたパワーをもらうことが可能で、そのパワーが一番強い時だともいえます。
出来れば自分で山菜を取りに行くことが好ましくはありますが、なかなかそうもいかない場合もありますので、お店で買ってきたものでも大丈夫です。
生のものを買って、アク抜くところからしっかりと自分の手でやっていくこと。
またアクの強いものは苦味を感じますが、この苦味が身体の中に溜まっている毒素を排出することに一役買ってくれるといえます。
苦味が苦手な人は多く、山菜は嫌われがちですが、身体にとってはとてもいいものなのです。
冬の間に溜めてしまっていた、要らないものを外に出すことと、山菜の持つパワーをもらうことが同時に叶えることができる、ありがたい時だといえます。
他の七十二候の意味や時期の一覧
占い師 RINのワンポイントアドバイス「行事から季節を感じてみましょう」
だんだんと気温も暖かくなってきたことが実感でき、春雷がとどろき始めることで、虫や動物たちのみならず、私たち人間も確かに春を感じることが出来るといえます。
旧暦を紐解いていくと、「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」は、虫や動物が動き始めるとありますが、私たち人間も同じく動き始める時期といえるのです。
私たち人間もかつては、自然が時の流れを教えてくれていたもの。
何でも便利になってきた時代ですが、この時期はわかりやすい季節の行事もありますし、自然から季節を感じてみてもいいものです。