古代中国では、半年ごとの季節の移り変わりを示すものである「二十四節気(にじゅうしせっき)」があります。
この二十四節気をさらに細かく、5日ごとに分けて気象の変化や動物・植物などのさまざまな変化などを示すものが「七十二候(しちじゅうにこう)」というのです。
江戸時代以降、日本では時代が移り変わるにつれて、中国で作られた七十二候を日本の風土や気候に合わせて改訂されてきた日本独特の七十二候ですが、現在のものは明治時代に改定されたもの。
今ではあまり馴染みのない人も多い旧暦ではありますが、その時期特有の兆しや移り行く季節の変化を感じさせてくれるものなのです。
ここでは七十二候の第五候「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」の意味・時期・旬の野菜・魚介類・草花・運気アップの方法まで詳しく紹介していきます。
この時期はいつもの風景が幻想的なものに見えたり、ノスタルジックな気分になったり、同じ景色でも全く違った顔を見せてくれ、変化を見ることが出来る時期です。
また私たちの生活に欠かすことの出来ないものも、見ることが出来ます。
日々の暮らしに季節を感じるための、参考にしてください。
目次
霞始靆(かすみはじめてたなびく)の意味
「春霞がたなびき、山野の情景に趣が加わる頃」という意味になります。
この時期になると、遠くの景色が白っぽく、ぼんやりとして見えることがあり、自然の中で見ると、どことなくのどかな風景に見える人も少なくないものです。
霞始靆(かすみはじめてたなびく)は、二十四節気の「雨水」の次候であり、七十二候の第五候です。
いつもはハッキリと見えていた景色が、白っぽくぼんやりとぼやけて見えることがあるのは「霞(かすみ)」がたなびいているから。
山や自然の多い場所で霞(かすみ)がたなびいていると、幻想的な風景に見えたり、どこか懐かしさを感じたり、ノスタルジックな気分になったりする人も多いものです。
そんな趣のある風景を、楽しむことが出来る時期でもあります。
「霞(かすみ)と霧(きり)は同じじゃないの?」と思うこともありますが、実は全く違うものなのです。
まず初めに霞(かすみ)は、気象用語ではありませんので、天気予報などでは使われることがありません。
次に霞(かすみ)は主に春に使われる言葉であり、春の季語でもあります。
「たなびく」という言葉も霞(かすみ)に対してしか使いません。
一方で霧(きり)は主に秋に使われるもので、秋の季語。
「たなびく」に対しては「たちのぼる」という言葉を使います。
「春の霞(かすみ)」「秋の霧(きり)」と俳句などで使い分けられているのです。
また霞(かすみ)は、昼にしか使わない言葉で、夜になると「朧(おぼろ)」と呼び名を変えます。
「朧月夜(おぼろづきよ)」という言葉を聞いたことがある人はピンッとくるかもしれません。
そして「靄(もや)」というものもありますが、これは気象用語で霧(きり)の視界が1キロ先未満に対して靄(もや)はそれ以上という定義があるもの。
似ている現象でもさまざまな違いがあるのです。
霞始靆(かすみはじめてたなびく)の時期は「2月24日~2月28日頃」
2022年 | 2月24日~2月27日 |
2023年 | 2月24日~2月28日 |
2024年 | 2月24日~2月28日 |
2025年 | 2月23日~2月27日 |
2026年 | 2月23日~2月27日 |
2027年 | 2月24日~2月28日 |
2028年 | 2月24日~2月28日 |
2029年 | 2月23日~2月27日 |
2030年 | 2月23日~2月27日 |
2031年 | 2月24日~2月28日 |
この時期には「野焼き」が行われます。
野焼きとは、「春先の晴天で風のない日に、火を放って枯草を焼き払う」というものです。
有名なのは、京都の大原・奈良の若草山・山口の秋吉台といったところ。
全国的に行われていますので、ニュースなどで野焼きが行われたことを聞いて春を感じる人も少なくないほど、春の風物詩として知られています。
野焼きをすることで、その灰が草の成長を促して、牛や豚・馬などといった家畜の飼料となったり、ワラビやゼンマイといった山菜の発育を助ける肥料になったりするのです。
私たちの食卓に並ぶことにもなる、家畜や山菜に欠かすことの出来ない、大切なものといえます。
日常的にも、田んぼや畑などで野焼きをしているのを見ることができるのも、この時期です。
お米や野菜を育てるため、農業を営んでいる人々にとっては一年に一度の大切な行事でもあります。
そんな日常的に見ることが出来る野焼きもまた、私たちの食卓に並ぶ食材たちを育てるためにやっていることなのだといえるものです。
そう考えてみれば、野焼きもまた違った気持ちで見ることが出来ることのひとつになります。
霞始靆(かすみはじめてたなびく)の旬の野菜は「からし菜」
「からし菜」の基本情報
栄養 | ・カリウム:体内から塩分を排泄してくれますので、高血圧に効果があります。
・カルシウム・マグネシウム・リン・鉄分:骨の生成に大切な成分なので、骨を丈夫にしてくれるのです。 ・カロテン:βカロテンは抗発ガン作用や動脈硬化の予防に役立ちます。 体内でビタミンAに変化し、呼吸器系統を守ってくれ、粘膜や皮膚、髪の健康維持と視力の維持にも効果があるのです。 |
選び方 | 葉の色が濃くて鮮やかな緑色のものを選んでください。
葉の先が元気なものや、切り口の変色がないかなども、新鮮さを判断できるポイントです。 |
保存方法 | 乾燥に弱いので、濡れた新聞紙などで包んで、袋に入れてから冷蔵庫に保存しましょう。
生のままではあまり長持ちしないので、下茹でをしてから小分けに保存しておくと長持ちします。 塩づけにしておくとさらに長持ちするのです。 |
その他、お役立ち情報 | ・妊娠中に不足になりがちな葉酸を多く含んでいますので、妊婦さんにおすすめの野菜の一つです。 |
「からし菜」の特徴
からし菜はその名の通り、種からは和からしが作られ、葉っぱにはからし特有の香りや辛味があります。
葉は大根の葉に似ていて、深い切込みが入っており、黄緑色に近い緑色。
柔らかい歯ごたえが楽しめます。
金沢の伝統野菜に認定されている「二塚からし菜」というものは、赤紫色が混じっていることも。
種を蒔く時期によって、収穫の時期にも誤差が出てきますが、からし菜の最盛期は2月から3月だといえます。
「からし菜」のおすすめの食べ方・調理法
からし菜は、ピリッとした辛さがあり、お浸しや和え物に使われています。
漬物としても使われることが多く、塩漬けやしょうゆ漬けなどが定番どころ。
またその家庭に代々続く漬け方もあって、味付けはさまざまあるものです。
生のからし菜は炒め物に入れれば、いつもの味付けと一緒でもひと工夫加えることが出来ます。
下処理のやり方ですが、ゆですぎないように下茹でしたからし菜を、冷水に取って色止めをしましょう。
浅漬けにする場合は、ゆでずに湯通しや、熱湯をかけるなどした方が、辛みが抜けずにおいしく出来ます。
またクックパッドの「からし菜」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
霞始靆(かすみはじめてたなびく)の旬の魚介類は「シロウオ」
「シロウオ」の基本情報
栄養 | ・n-3多価不飽和脂肪酸:体の免疫反応の調整・脂肪燃焼の促進作用・血管機能の働きを助けるなどの働きがあります。
アレルギー疾患・高血圧・動脈硬化・脳卒中・心筋梗塞・血栓症などの予防と改善に効果があるのです。 認知機能や行動能力を司る、脳の神経細胞に作用します。 ・カルシウム・マグネシウム・リン:骨の生成に必要なもので、骨を丈夫にします。 ・レチノール:生活習慣病の予防や免疫力を高めてくれます。 |
選び方 | 死後急速に味が落ちてしまいますので、生きたままパックなどで売られています。 |
保存方法 | 別の容器に水を張って移し替え、酸素ポンプをつけて生かしておきましょう。
とはいえ1日から2日しか持ちませんので、その日に食べる場合のみ可能です。 長期保存をするなら、水を張った袋や容器にシロウオを入れ、冷凍保存をしましょう。 解凍させる際は、氷ごと解凍させてください。 |
その他、お役立ち情報 | ・シラウオと間違えられやすいのですが、実際に見比べてみると姿かたちは異なるので見分けがつきやすいものです。 |
「シロウオ」の特徴
シロウオは体長が3センチから6センチほどの大きさで、黄色味を帯びた透明の身体をしています。
腹部には黒い点があり、頭は丸みを帯びていて、幅のある大きな口をしているのが特徴です。
シロウオは地域によって呼び方がさまざまで、「ヒウオ」「イサザ」などと呼ばれていることもあります。
シロウオのことを「シラウオ」と呼ぶ地域もありますが、実際の「シラウオ」と混同してしまい、地域の人でないとどっちのことを言っているのかわからないといった事態にもなってしまうのです。
今は漁獲量が激減していて高級魚の一つとなっているシロウオですが、かつては各地でたくさん漁獲されていました。
シロウオの旬は2月中旬から4月上旬ですが、最盛期はそれぞれの地域ごとに少しずつずれています。
「シロウオ」のおすすめの食べ方・調理法
シロウオは踊り食いが一番有名な食べ方です。
生きたまま三杯酢や、卵の卵黄と一緒に口に流し込むと、口の中でピクピク動く感触が楽しめるというもの。
しかしこれは人によっては苦手と感じる人もいて、好みが分かれます。
「踊り食いはちょっと…」というのなら、かき揚げやお吸い物といったものがおすすめです。
また卵とじにしたり、卵焼きに巻き込んだりなど、卵料理との相性も良いもの。
どんぶりにもできますし、さまざまな食べ方を楽しむことが出来ます。
またクックパッドの「シロウオ」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
霞始靆(かすみはじめてたなびく)の旬の草花は「ヒヤシンス」
「ヒヤシンス」の基本情報
学名 | Hyacinthus orientalis |
科・属 | キジカクシ科・ヒアシンス属 |
原産国 | 地中海沿岸 |
別名 | ヒアシンス・夜香蘭 |
「ヒヤシンス」の特徴
ヒヤシンスは小さな花を連なるように咲かせる花で、春の花壇ではよく見ることが出来る花のひとつでもあります。
ギリシャ神話にも出てくるほどヒヤシンスの歴史は深く、さまざまな品種が作られているのです。
野生種は青紫色の花のみですが、品種改良によって今では赤・ピンク・白・黄色・青など花の色も豊富にあります。
日本ではそのうちの約10種類が栽培されており、「ダッチ系ヒヤシンス」と呼ばれるもの。
ヒヤシンスは「ダッチ系」と「ローマン系」に分かれていて、日頃私たちが見ているものは「ダッチ系」に属しているものです。
花の香りは強く、甘い香りを放ちます。
「ヒヤシンス」の花言葉
ヒヤシンスの花言葉は「スポーツ」「ゲーム」「遊び」「悲しみを超えた愛」です。
花の色別に違う花言葉もあり、紫のヒヤシンスには「悲しみ」「悲哀」「初恋のひたむきさ」、赤いヒヤシンスには「嫉妬」、ピンクのヒヤシンスには「しとやかなかわいらしさ」。
ほかにも白いヒヤシンスには「控えめな愛らしさ」「心静かな愛」、青いヒヤシンスには「変わらぬ愛」、黄色のヒヤシンスには「あなたとなら幸せ」「勝負」というものです。
霞始靆(かすみはじめてたなびく)の旬の行事は「北野菜種御供(きたのなたねごく)」
霞始靆(かすみはじめてたなびく)の時期にある行事はといえば、2月25日の学問の神様でもある菅原道真公の忌日です。
菅原道真公を祀っている天満宮では、毎年この日に祭礼が行われています。
特に有名なのは、全国約1万2000社ある天満宮、天神社の総本社である京都の北野天満宮での祭礼。
この祭礼は「北野菜種御供(きたのなたねごく)」というもので、菜種の花を神饌(しんせん)に挿して献じるのです。
花がない時期は、菅原道真公が好んでいたといわれている梅の花を代わりにしていることから、「梅花御供(ばいかのごく)」と呼ばれるようにもなり、最近では「梅花祭(ばいかさい)」として親しまれています。
新暦では時期的に菜種の花が手に入りにくい時期ですが、神官の冠には現在でも菜種の花を挿しているのです。
神饌(しんせん)というのは、玄米を蒸したもののこと。
男女の厄年にちなんだ数を丸く盛って供えた後、参拝者に授与されるのですが、これをいただくと病気平癒のご利益があるとの言い伝えがあります。
また同日、三光門前広場で行われている「梅花祭野点大茶湯」もあり、露店が並んだりと賑わいを見せているのです。
ちなみに「梅花祭野点大茶湯」というのは、豊臣秀吉がこの場で北野大茶湯を催したという故事にちなんでいて、菅原道真公の没・1050年後から、開催が始まった、今では約900年続いているもの。
「北野菜種御供」と「梅花祭野点大茶湯」はどちらも人気のある行事だといえます。
霞始靆(かすみはじめてたなびく)の運気アップの方法は「温泉に行きましょう」
この時期に運気アップをするには、温泉に行ってみましょう。
温泉はもともと時期に限らず「健康にいいもの」という印象がある人も多いものかもしれませんが、この時期の温泉はいつも以上に特別なもの。
少し前に山で雪解けが始まったこの時期の温泉には、その雪解け水が入っているのです。
雪解け水には、細胞を活性化してくれるエネルギーがあります。
それぞれの温泉の持っている効果に加えて、細胞の活性化も望めるという、またとないチャンスなのです。
温泉地によっては、雪解け水が飲める場所もあります。
雪解け水を飲むことが出来るなら、ぜひ身体に取り入れてみてください。
身体の中からも外からも、雪解け水の持つパワーを取り入れることが出来ますので、さらなる運気アップが期待できるのです。
他の七十二候の意味や時期の一覧
占い師 RINのワンポイントアドバイス「いつもとは違う景色を感じましょう」
昼は春霞で、夜は朧月で、自然の中でノスタルジックな気分に浸ったり、幻想的な風景に心を奪われたり、いつもとは違った風景を楽しむことが出来る時なので、同じ景色にも違いがあって新たな発見が出来ることもあります。
また野焼きなどといった、私たちの生活に欠かすことの出来ない関係の深いものを見ることもでき、感謝の気持ちを新たにすることも出来るのです。
日々の忙しさの中でも、ふと足を止めてみることをおすすめします。