日本には四季があり、我々日本人は季節の移り変わりをとても大切に考えてきました。
それぞれの季節がもたらす風景や恵みを、生活の中に取り入れ豊かに暮らしてきたのです。
季節を72にも分類した七十二候があることが、春夏秋冬だけでなく、さらに季節を細かく分けて、ささやかな季節の巡りを感じながら生きてきたことを示しています。
立春・冬至など1年を24に分けた二十四節気、それをさらに3つに分けた七十二候。
現代に生きる私たちが忘れがちな、季節の移ろいを今一度大切にしていきましょう。
この記事では、七十二候の第六十候「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」について、詳しい意味や時期、旬の野菜や果物、魚介類、草花や行事、運気アップの方法についてご紹介していきます。
日本ならではの季節について再認識し、豊かに暮らしていけるようになっていきましょう。
目次
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の意味
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)とは、橘の実が黄色く色づく時期という意味です。
古代、常世の国から田道間守が持ち帰ったとされるのが橘です。
常世の国とは不老不死の理想郷のことで、橘がそれほど素晴らしいと思われていたことが分かるでしょう。
現代にも橘というミカン科の木はありますが、酸味が強く食用としては使われていません。
橘は古くから日本に自生していた、日本国内の柑橘系で唯一の野生種です。
古事記や日本書紀の中に登場する不老不死の実は橘だとされています。
常緑樹でもある橘は、冬でも葉が落ちることなく青々として、さらには黄色い鮮やかな実をつけます。
そういった点が昔の人にとっては、枯れることがない永遠を授けてくれるように感じられたのでしょう。
昔はミカンを総称して、橘と呼んでいました。
ミカンは初夏に白い花を咲かせ実をつけます。
そしてだんだんと膨らんできた青い実が、黄色く色づいてくるのがこの時期なのです。
他の木々の葉が落ちて、少し寂しくなるこの時期ですが、ミカンだけは色づき食べごろになるだけでなく心までわくわくさせてくれます。
ミカンの木を見かける機会はないかもしれませんが、ぜひ橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の頃にはミカンを食べて季節を感じてみてください。
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の時期は「12月2日~12月6日頃」
2021年 | 12月2日~12月6日 |
2022年 | 12月2日~12月6日 |
2023年 | 12月2日~12月6日 |
2024年 | 12月2日~12月6日 |
2025年 | 12月2日~12月6日 |
2026年 | 12月2日~12月6日 |
2027年 | 12月2日~12月6日 |
2028年 | 12月2日~12月5日 |
2029年 | 12月2日~12月6日 |
2030年 | 12月2日~12月6日 |
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の頃に色づくのはミカンだけではありません。
ヤブコウジの実はミカンよりも小さく真っ赤ですが、同じようにこの時期に色づきます。
彩りを失ってしまう季節だと思われがちですが、探せば冬にも色はたくさん見つけることができるのです。
また、この時期寒さに縮こまっている猫のことをかじけ猫と呼びます。
猫はアフリカやインドが元々の生息地のため、寒さにとても弱い生き物です。
寒さに弱いところも愛らしく冬の猫の様子は、こたつ猫やかまど猫などの言葉で表現されます。
こたつで丸くなる猫はこたつ猫、暖を求めてかまどの中で灰だらけになっているのはかまど猫。
猫の寒がる様子を見ているとほほえましく、こちらの寒さは吹き飛んでしまいそうです。
日本人は昔から、寒い中にもたくさんの楽しみを見つけながら生きてきたのですね。
色づく実や寒がる猫など、この時期ならではの光景を目に焼き付けましょう。
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の旬の野菜は「セロリ」
「セロリ」の基本情報
栄養 | ヨーロッパでは強精剤として使われていたセロリ。
ビタミンC、B群、ミネラル、食物繊維を含んだ栄養価の高い野菜です。 特に葉の部分にはカロテンがたっぷりと含まれています。 葉には血液をサラサラにする効果のあるビラジンも含まれています。 茎の部分を食べることの多いセロリですが、葉の部分も捨てずに食べれば栄養たっぷりです。 また、独特の香りにはイライラを抑える成分が含まれています。 |
選び方 | セロリを選ぶ際には、新鮮なものを選ぶようにしましょう。
新鮮さは葉をみるとよく分かります。 葉は鮮やかな緑色をしていて、ツヤと張りがあるものが新鮮です。 緑が薄くしなびているものは避けましょう。 セロリの茎は内側がくぼんでいる形状をしていますが、そのくぼみは狭いものを選んでください。 |
保存方法 | セロリを保存するときには、葉と茎を分けるのがポイントです。
乾燥が大敵なので、それぞれラップをして冷蔵庫に入れましょう。 野菜室で立てて保存すると日持ちが良くなります。 すぐに食べられず茎がしんなりした場合には、根元を冷水につけるとシャキッとします。 食べきれずに残ってしまいそうな時には、刻んでピクルスにするのもおすすめです。 甘酢につけることで保存期間が延びます。 |
その他、お役立ち情報 | セロリはイライラとした気分を鎮めるのに有効な野菜です。
セロリの香りは好みの分かれるものですが、精神安定作用があります。 血圧を下げる効果のあるカリウム、ストレス解消作用のあるカルシウムを含んでおり、牛乳やチーズなどのカルシウムを含む食材と合わせると神経の昂りを抑えられます。 最近イライラが止まらないという場合には、セロリを食べてみるのも一つの手段です。 精神面に効果があるだけでなく、セロリはいろいろな栄養をバランスよく含んでいます。 組み合わせる食材によって、さまざまな効果が期待できるでしょう。 ストレスを緩和し、スタミナをつけ、滋養強壮の効果も期待できるのがセロリという食材です。 |
「セロリ」の特徴
セロリは地中海沿岸が原産地とされており、日本へは朝鮮へ出兵した加藤清正が持ち帰ったとされています。
そのため清正人参と呼ばれるようになりました。
ヨーロッパでは古くから食用として使われ、肉の臭み消しとして重宝されてきました。
日本には16世紀末には入ってきていましたが、香りの強さから食用としては普及しませんでした。
日本で広く食べられるようになったのは、戦後、欧米の食文化が入ってきてからです。
セロリは長野で主に栽培されており、国産セロリ全体の4割が長野産です。
セロリの旬は橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の頃ですが、通年で栽培されており1年中安定して食べることができます。
それでもやはり旬の露地栽培のものは格別なので、食べて季節を味わいたいものですね。
「セロリ」のおすすめの食べ方・調理法
セロリは鶏肉と合わせて食べると、スタミナを強化してくれ滋養強壮効果が期待できます。
そこでセロリのおすすめの調理法としてセロリと鶏肉の中華炒めをご紹介していきましょう。
セロリは斜め切り、鶏もも肉は一口大に切り塩コショウをしておきます。
熱したフライパンに油を入れたら、にんにくのみじん切りを入れ香りが立ってきたら鶏肉を炒めます。
肉に火が通ったら、セロリを入れ、オイスターソースで味付けしましょう。
火を止めてから仕上げにごま油をかければ完成です。
ストレスを緩和して、エネルギーを補給できるセロリ料理です。
またクックパッドの「セロリ」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の旬の魚介類は「ぼら」
「ぼら」の基本情報
栄養 | ぼらにはビタミンB群が比較的多く含まれ、飲酒時に欠乏するパントテン酸が含まれています。
ボラの卵巣を加工したからすみには抗酸化作用の強いビタミンAが多く含まれ、ビタミンEも豊富です。 からすみは鉄分やミネラルも多く含み栄養価の高い食材ですが、塩漬けしたもののため塩分が高くたくさん食べることはできません。 ぼらの身とからすみのどちらにもEPAとDHAが含まれ、血液の流れをよくし血圧を下げてくれます。 中性脂肪を減らし、脳の活性化にも効果的な成分なので積極的に摂りたいものです。 |
選び方 | 美味しいボラを選ぶには、まず身に張りがあるものを選ぶようにしましょう。
目は黒々としたものを選ぶことが大切なポイントです。 鮮度が落ちてくるとぼらの目は白っぽくなってくるので、目は鮮度を見極める大事なポイントとなります。 そして、うろこがキレイに並んでいてはがれてないものを選ぶようにしましょう。 大きいものほど脂がのっているとされているので、大きなものを選ぶのもポイントの1つです。 あまりなじみのない魚ですが、見かけた際には選び方のポイントを忘れないでください。 |
保存方法 | ぼらはそのままにしておくと鮮度がどんどん落ちてしまいます。
買った後は下処理をしてから保存するようにしましょう。 内臓を取り除いてから、ラップにくるみ、保存袋に入れ空気を抜きます。 その状態で冷蔵してもいいし、冷凍も可能です。 冷蔵保存の場合は2日程度、冷凍の場合でも2週間程度で使いきるようにしてください。 |
その他、お役立ち情報 | ぼらは臭みのある魚として知られています。
特に関東地方では評価が低く、それほど好まれてはいません。 これは東京湾が汚染されていた時代に臭いボラが獲れていたためだと言われています。 実際、関西ではぼらの評価は高く好まれています。 現代では、臭みのあるぼらはほとんどなく、全国的に美味しく食べることができます。 料理方法を選ばず、古くから日本で愛されてきた魚なので、見かけた際にはチャレンジしてみてください。 橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の頃のぼらは、旬を迎え脂がのって大変美味です。 |
「ぼら」の特徴
ぼらは10月から1月が産卵期です。
秋になると黒潮の影響のある暖かい海へと回遊し、その場所で産卵します。
ぼらの体は細長く、頭部が平たい形をしています。
血合いの色が鮮やかな赤で、刺身にしたときに非常に美しいです。
ぼらの卵巣を塩漬けして天日で干したものは、長崎名物でからすみと呼ばれています。
珍味として全国的に好まれているでしょう。
ぼらは成長によって名前が変わる出世魚です。
ハク→スバシリ→オボコ→イナ→ボラ→トドと名前を変えていきます。
とどのつまりという慣用句がありますが、ぼらのいきつく先がとどであることが由来とされています。
もともと日本では、ぼらはお食い初めや神事に使われた演技の良い魚です。
日本人の生活に深いかかわりをもっており、現代日本でもそのことを忘れてはいけません。
「ぼら」のおすすめの食べ方・調理法
ぼらの身はあまり見かけないので、栄養たっぷりのからすみを使った調理法をご紹介していきます。
簡単に作れて美味しいのがからすみのパスタです。
大きめのボウルにバターを入れ室温に戻し柔らかくしておきます。
このボウルにおろしたからすみを加え、バターと和えておきましょう。
パスタを好みの硬さに茹でたら、ボウルの中に入れ手早くからめてください。
からすみの塩辛さでパスタに十分に味がつきます。
和えるだけで完成する簡単なパスタなので、からすみが手に入ったらぜひためしてみてください。
またクックパッドの「ぼら」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の旬の草花は「カラマツ」
「カラマツ」の基本情報
学名 | Larix kaempferi |
科・属 | マツ科・カラマツ属 |
原産国 | 日本 |
別名 | フジマツ・ニッコウマツ・ラクヨウショウ |
「カラマツ」の特徴
カラマツは日本の固有種で、山岳地帯に生えていることが多い植物です。
日本の針葉樹の中でカラマツは唯一の落葉性の高木となっています。
成長すると幹の太さは1mにも達する大きな木です。
樹皮の色は灰褐色で、縦に裂けやすく剥がれ落ちることもあります。
北海道や長野で多く植林されており、土壌の悪いところでも問題なく育ちます。
春に花をつけ、秋には葉が紅葉し実をつけるでしょう。
四季の移り変わりとともに姿を変えるカラマツを見て、この季節を感じとっていきましょう。
「カラマツ」の花言葉
カラマツの花言葉は大胆・豪放・勇敢などです。
どれも大きなカラマツの風貌にぴったりで、そこから付けられたのだと推察することができます。
傍若無人というネガティブな花言葉もあるので、人に贈る際には注意してください。
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の旬の行事は「ひょうたん祭り」
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の頃には、大分県豊後大野の千歳町にある柴山八幡社でひょうたん祭りが行われます。
頭には巨大なひょうたんを被り、足には1メートルを超える大わらじを履いたひょうたん様が街を練り歩き人々に酒をふるまうという不思議なお祭りです。
人に配りながら、ひょうたん様自身も大量のお酒を飲んでしまいます。
そのため、ぐでんぐでんに酔っぱらい街を練り歩けなくなってしまうことも。
酔っぱらったひょうたん様を周りの人が手助けしながら、なんとかひょうたん様は街を巡っていきます。
ひょうたん様は街のみんなを酔わせてしまうので、街中が酔っぱらいだらけの何とも奇妙な祭りとなります。
大分の無形文化財にしてされており、12月の第一日曜日に行われ誰でも参加可能です。
ひょうたん様が配るお神酒にはご利益があるとされているので、参加したら積極的に飲みあなたも酔っぱらいになってしまいましょう。
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の運気アップの方法は「みかんを食べる」
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の頃を運気良く過ごしたいのなら、ずばりみかんを食べてください。
この頃にはスーパーにもみかんが出回るようになり、簡単に手に入るようになっているはずです。
みかんを食べる際には香りを楽しむことも忘れないでください。
そして、冬が来たことを実感していきましょう。
そうすれば、この時期の運気は上昇していきます。
昔の人が心打たれた、この時期でも緑の木にオレンジの鮮やかな果実が実る様子を見ることは難しくても、みかんを食べることなら簡単にできるはずです。
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)の頃には、冬のみかん畑を思い浮かべながらみかんを食べてみてください。
他の七十二候の意味や時期の一覧
占い師 小鳥のワンポイントアドバイス「冬の彩り」
橘始黄(たちばなはじめてきばむ)は、昔の人からのメッセージよ。
冬でも色づく果実はたくさんあるってことを、現代に生きる私たちに伝えてくれたのね。
何の娯楽もなかった昔は、冬の景色に色を見つけるしか楽しみがなかったのかしら。
今でもスマホばかりに目を向けていずに、冬の景色の中に鮮やかな色を探して豊かに生きてみたいものね。
常にその意識で生きるのは難しくても、たまの休日は自然と触れ合うようにしてみましょ。