日本には四季があり、我々日本人は季節の移り変わりをとても大切に考えてきました。
それぞれの季節がもたらす風景や恵みを、生活の中に取り入れ豊かに暮らしてきたのです。
季節を72にも分類した七十二候があることが、春夏秋冬だけでなく、さらに季節を細かく分けて、ささやかな季節の巡りを感じながら生きてきたことを示しています。
立春・冬至など1年を24に分けた二十四節気、それをさらに3つに分けた七十二候。
現代に生きる私たちが忘れがちな、季節の移ろいを今一度大切にしていきましょう。
この記事では、七十二候の第五十三候「霎時施(こさめときどきふる)」について、詳しい意味や時期、旬の野菜や果物、魚介類、草花や行事、運気アップの方法についてご紹介していきます。
日本ならではの季節について再認識し、豊かに暮らしていけるようになっていきましょう。
目次
霎時施(こさめときどきふる)の意味
霎時施(こさめときどきふる)は、小雨が時々振るようになる季節のことです。
霎はこさめと呼ぶこともありますが、しぐれと呼ぶこともあります。
明治時代の略本歴では霎時施(こさめときどきふる)と読んでいますが、江戸時代の宝略歴ではしぐれと読ませています。
時雨はこの時期特有の雨のことで、ふいに強い雨が降ったかと思えば、みるみるうちに止み青空が広がる様子のことです。
その年の秋に初めて降る初時雨は、人々や生き物がそろそろ冬支度を始める合図となります。
降ったり止んだりしながら通り過ぎていく時雨を見ながら、昔の人は季節の移り変わりだけを感じていたのではありません。
いつ降るかいつ止むのかまったく読めない時雨に、人々は人生や心を重ねていました。
そのことは「時雨心地」という言葉にも表れています。
時雨心地は時雨の降りそうな天気のことも指しますし、涙のこぼれそうな気持ちのことも指します。
晩秋でもあるこの季節には、空も心もいつ涙が降り出してもおかしくないような時期だといえるでしょう。
時雨の種類にもさまざまなものがあります。
降る時刻によって朝時雨や夕時雨や小夜時雨、横殴りに降れば横時雨、ひとところだけに降るのは片時雨。
時雨は古くから歌にも詠まれ、私たち日本人の身近な雨であったことが伺えます。
現代日本でも時雨が降れば冬が来ることを感じられるように、季節へのアンテナを高く張っておきましょう。
霎時施(こさめときどきふる)の時期は「10月28日~11月1日頃」
2021年 | 10月28日~11月1日 |
2022年 | 10月28日~11月1日 |
2023年 | 10月29日~11月2日 |
2024年 | 10月28日~11月1日 |
2025年 | 10月28日~11月1日 |
2026年 | 10月28日~11月1日 |
2027年 | 10月29日~11月2日 |
2028年 | 10月28日~11月1日 |
2029年 | 10月28日~11月1日 |
2030年 | 10月28日~11月1日 |
霎時施(こさめときどきふる)の期間である10月30日は初恋の日です。
それは島崎藤村の詩である初恋が発表されたのが、明治29年の10月30日だったからです。
冬の足音が感じられるこの季節は人恋しく、まさに初恋をするのにもうってつけの季節かもしれませんね。
この季節に良く見られる鳥が尉鶲(じょうびたき)です。
冬鳥として日本に渡ってくる小鳥で、鳴き声が火打石を叩く音に似ていることからその名がつきました。
あまり警戒心がないことからバカビタキと呼ばれることも。
霎時施(こさめときどきふる)の時期にはどんぐりもよくとれます。
どんぐりは古代日本では貴重な栄養源として食べられ、染料としても用いられていました。
鳥たちにとっても、冬前の貴重な食糧です。
どんぐりが落ちるときの音を、木の実時雨と呼ぶこともあります。
霎時施(こさめときどきふる)の旬の野菜は「山芋」
「山芋」の基本情報
栄養 | ぬめりが特徴的な山芋は、ビタミンB群、ビタミンC、カリウムなどのミネラルや食物繊維をバランスよく含んでいる野菜です。
消化酵素のジアスターゼが豊富に含まれていますが、ジアスターゼは熱に弱いという特徴を持っています。 山芋に消化作用を期待するのなら、熱を加えず生で食べるようにしましょう。 消化促進と体力回復効果のあるアミラーゼとカタラーゼという酵素を含んでいるので、肉体の疲労回復に効果的です。 カタラーゼは加齢とともに体内生産が減少してしまうので、積極的に摂るようにしましょう。 酵素も熱に弱いので生食がおすすめです。 |
選び方 | 山芋の旬は10月~3月です。
10月頃には新物が出回りみずみずしい味わいを楽しむことができます。 美味しい山芋を選ぶポイントは手に持った時にずっしりと重く、皮が薄くて張りのあるものを選ぶことです。 カットされた山芋を買う時には切り口が変色しておらず、白くみずみずしいものを選ぶようにしましょう。 表面の凹凸が少ないのも、美味しく新鮮な山芋のポイントです。 ひげ根が多いものほど粘りが強いとされていますので、山芋の粘りを楽しみたい場合は参考にしてください。 |
保存方法 | 山芋は変色しやすく、保存方法には気を遣わなければなりません。
山芋を保存するのに適した温度は2℃~5℃だと言われています。 冬場なら常温保存でも構いませんが、暖房器具の影響がない場所を選ぶようにしなければなりません。 冷蔵庫の野菜室に入れておくようにすれば間違いないでしょう。 また、山芋にとっての大敵は乾燥と水気と光です。 その3つをシャットアウトしてあげれば、山芋の新鮮さを長く保つことができます。 山芋をキッチンペーパーで包んでから、さらに新聞紙でも巻き、直射日光の当たらない涼しい場所で保管しましょう。 なるべく土の中と似たような環境を作れば、山芋の劣化は防げるのです。 |
その他、お役立ち情報 | 山芋を調理する際に困るのが手の痒みです。
山芋をすりおろすときに手が痒くなってしまった経験がある人は多いでしょう。 そういった場合には山芋を冷凍してからすりおろすとぬめりが気にならずに、なめらかにすりおろすことができます。 酢水にさらしてもぬめりが抑えられるのでおすすめです。 痒みやすべりやすさで山芋をすりおろすのをためらっていたという人は、ぜひ冷凍を試してみてください。 生食でも風味が変わらず楽しめます。 |
「山芋」の特徴
山芋にはたくさんの品種がありますが、もっとも多く流通しているのは長いもです。
長い棒状のいもで水分は多く、キメはやや粗いのが特徴。
葉の付け根にできる小豆台の小さないもをむかごと呼びます。
長いもは栽培品種ですが、山芋の中には野生種もあります。
自然薯は山芋の野生種の代表格で、高級食品です。
自然薯は粘りがとても強く、うまみも濃いので、食通の人に好まれています。
近畿・中国地方に多いのがげんこつのような形のつくねいも。
粘り気が強く貯蔵性もあり、和菓子の原料にも使われています。
イチョウの葉に似ている山芋は、いちょういもという品種です。
粘りが強く、関東では大和いもと呼ばれています。
「山芋」のおすすめの食べ方・調理法
そのままだとシャキシャキ、すりおろすとトロトロの食感が楽しめる山芋。
おすすめの食べ方は山芋ステーキです。
山芋は皮をむき、輪切りにしていきます。
切る厚さを厚くすればシャキシャキで、薄くすればホクホクの食感が楽しめます。
熱したフライパンにバターを溶かし、そこに切った山芋を入れていきましょう。
焼き色がついたらめんつゆを入れ、水分がなくなるまで炒めたら完成です。
簡単なのに食べ応えのある、食感の楽しいおかずが出来上がります。
味付けを自分好みに変えれば、バリエーションは無限大です。
すりおろすのが一般的な山芋の食べ方ですが、ぜひステーキにもチャレンジしてみてください。
またクックパッドの「山芋」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
霎時施(こさめときどきふる)の旬の魚介類は「きんき」
「きんき」の基本情報
栄養 | きんきは魚類としては珍しくタンパク質よりも脂質の方が多く含まれています。
脂肪が多い分、高カロリーですが、飽和脂肪酸は少なく不飽和脂肪酸のオレイン酸が主で体にいい脂肪です。 オレイン酸には悪玉コレステロールを下げる働きがあり、動脈硬化や心疾患の予防に役立ちます。 抗血栓作用と血液をサラサラにする効果のあるEPAとDHAも豊富で、高血圧を予防することが期待できます。 ビタミンEも多く含まれ、老化を防ぐ効果が期待できるでしょう。 ビタミンEは老化の原因となる活性酸素を無力化し、抗酸化作用があります。 |
選び方 | 高級魚として知られるきんき。
そんなきんきをせっかく買うなら、選び方を失敗したくはありません。 新鮮なきんきを選ぶには、その色を良く見ていきましょう。 きんきの特徴でもある赤色ですが、赤が鮮やかであるほど新鮮です。 時間が経つほどに赤の鮮やかさは失われ、オレンジ色に変わっていってしまいます。 もっと鮮度が落ちていくと、オレンジから黄色に、そして最終的には白っぽくなっていきます。 触れることができるのなら、身を触り張りがあるもので、お腹がしっかりとしているものがいいでしょう。 輝くような真紅のきんきを選び、美味しく食べていきましょう。 |
保存方法 | 脂ののったきんきであれば、寝かせることで美味しさを増していきます。
きんきをさばいた時に肝臓に脂が巻いているようであれば、時間経過とともに美味しくなる証です。 傷まずにおいしく保存するためには、きちんと血を抜くことが大切です。 血を抜きはらわたを取り除き、水気をしっかりと拭いて寝かせましょう。 脂ののったきんきは2週間ほど寝かせると、とても美味しくなります。 きんきは冷凍保存も可能です。 保存袋や容器にきんきを入れ、そのまま水を張り氷漬け冷凍にしていきましょう。 下処理要らずで簡単に冷凍保存することができます。 解凍時は氷ごと水を張った容器に入れていきます。 |
その他、お役立ち情報 | きんきと呼ばれることが多いのですが、実は正式にはキチジという名前です。
ですが、キチジと呼ばれるのは宮城周辺だけで、その他にも地域によって呼び名が異なります。 きんきという呼び方は関東特有のものです。 北海道ではメンメと呼ばれたり、その他の地域ではアカジやキンギョなどと言われることもあります。 旬は秋から冬ですが、年間を通して流通があり美味しく食べられます。 赤い見た目が華やかでテレビに取り上げられることが多く、そのことがきんきの高値を呼んでいます。 |
「きんき」の特徴
きんきは今でこそ1キロ1万円を超えるような高級魚ですが、その昔はそうではありませんでした。
昔はきんきがたくさん獲れていたため、かまぼこなどの練り物の原料として使われることもあったようです。
しかし、乱獲によって数が減ってしまい、だんだんと高級魚となっていきました。
きんきの赤さはエサのエビによって作られています。
エビに含まれるアスタキサンチンの影響できんきは赤くなると考えられており、これは鯛赤いのと同じ理由です。
きんきは北海道から東北の太平洋側に多く生息し、日本海側にはほとんど見られません。
「きんき」のおすすめの食べ方・調理法
きんきはやはり煮つけで食べるのがおすすめです。
旨味があり脂ののっているきんきだからこそ、煮つけは美味しくできるのです。
きんきの煮つけは作り方も簡単。
きんきの中骨に届くくらいの十字の切れ目を、表にも裏にも入れます。
沸騰したお湯にきんきを入れて湯通しします。
フライパンに煮汁を作ったら、きんきを入れ煮れば完成です。
絶品の味わいであるきんきの煮つけを楽しんでみてください。
またクックパッドの「きんき」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
霎時施(こさめときどきふる)の旬の草花は「紫式部」
「紫式部」の基本情報
学名 | Callicarpa japonica Thunb |
科・属 | シソ科・ムラサキシキブ属 |
原産国 | 日本・朝鮮半島・台湾 |
別名 | ムラサキシキミ |
「紫式部」の特徴
紫式部は高さ3メートルほどに成長し、秋が深まり実が熟すると紫色に染まります。
この紫色の実の色が、名前の由来です。
緑の葉の付け根に紫の実がなる様子は色鮮やかで、人々の目を惹きつけます。
北海道から沖縄まで、日本各地で分布しています。
「紫式部」の花言葉
紫式部の花言葉は「上品」「知性」です。
由来は源氏物語を書いた、紫式部のイメージからです。
霎時施(こさめときどきふる)の旬の行事は「ハロウィン」
霎時施(こさめときどきふる)の時期の行事といえばハロウィンです。
もちろん日本の伝統行事ではありませんが、現代日本においてはかなりビッグなイベントとなりました。
ハロウィンは毎年10月31日に行われる祭りで、古代ケルト人が起源です。
古代ケルトでもこの季節は秋が終わり冬が始まるとされていました。
霎時施(こさめときどきふる)と同じように、西洋の人たちも季節の移り変わりを感じていたのですね。
10月31日には死者の霊が訪ねてくると信じられており、それと同時に出てくる悪霊や魔女から身を守るために仮装したと言われています。
宗教的な意味は薄れてしまいましたが、ハロウィンは広く楽しまれるようになりました。
ケルト人の思いと日本の私たちの思いを重ねて、季節の移り変わりを感じとっていきましょう。
霎時施(こさめときどきふる)の運気アップの方法は「洗濯」
雨が降ったり止んだりする霎時施(こさめときどきふる)の頃の運気を上げるためには、洗濯が重要です。
晴れ間が見えたら、ぜひ洗濯をして日光に洗濯物を当ててください。
天気予報で雨が降ることが分かっていれば無理はしなくてかまいません。
霎時施(こさめときどきふる)と聞くと、小雨の部分にだけ着目してしまいがちですが、気分まで沈んでしまってはいけません。
霎時施(こさめときどきふる)の期間に降るのはあくまでも小雨で、その雨が通り過ぎてしまえば空には秋晴れが広がるのです。
その晴れを感じ取りパワーに変えていくためにも、洗濯が重要となります。
天日干しをした洋服に袖を通せば、あなたの運気は自然と高まっていくでしょう。
小雨が降るからと諦めず、洗濯を心掛けてみてください。
他の七十二候の意味や時期の一覧
占い師 小鳥のワンポイントアドバイス「冬の入り口」
霎時施(こさめときどきふる)が終わると、いよいよ季節は冬になるわ。
この頃にはすっかり空気も冷たくなり、秋の終わりが感じられるはずよ。
悲しい気持ちになんてならなくていいの。
冬でしか見られない景色があり、寒く厳しい季節を超えるからあなたは成長するのよ。
だから、冬の入り口のこの季節を、前向きに楽しんで過ごしてちょうだいね。
霎時施(こさめときどきふる)が過ぎれば、本当の冬がやってくるわよ。