お正月に松の内が明けてから迎える、1月11日の「鏡開き」。
地域によって日にちが違うところもありますが、鏡開きは歳神様(年神様)のご利益をいただくことが出来るありがたい行事です。
今まで鏡開きを何となくで過ごしてしまっていたというあなたも、鏡開きをすることの意味や、由来、鏡開きをする際に抑えておくべきポイント、間違いのない鏡開きの方法を知って行うことで、歳神様(年神様)のご利益を最大限に受け取りましょう。
鏡餅のおいしいいただき方も、いくつかご紹介していきます。
また同じ「鏡開き」でも、酒樽の鏡開きもあり、鏡餅の鏡開きとの違いについても触れているので、参考にしてみてください。
最後には、酒樽の鏡開きの意味や本来のやり方も一緒に、お伝えしていきます。
目次
鏡開きは歳神様のご利益にあやかる行事
鏡餅とは、歳神様(年神様)の依り代である
鏡餅は、お正月の飾りの一つで、「門松」や「しめ縄」とともに、年末に飾るものです。
飾りにはそれぞれ意味があって、門松は「歳神様(年神様)を迎えるための目印」、しめ縄は「歳神様(年神様)をお迎えするにあたって、ふさわしい場所であるという目印」、そして鏡餅は「歳神様(年神様)の依り代」とされています。
鏡餅がなぜ「鏡餅」と呼ばれるようになったのかですが、三種の神器に由来があるのです。
日本で一番古い鏡とされているのは、丸い形をした「銅鏡」と呼ばれるもので、弥生時代や古墳時代の遺跡から多く発掘されています。
銅鏡は、特に銅鐸と並んで弥生時代を代表する出土品とされていて、三種の神器の一つである「八咫鏡(やたのかがみ)」としても知られているのです。
鏡は太陽の光を反射して光ることから、昔の人は太陽の神様である「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」に見立てて、神様が宿るものとして考えていたとされています。
多くの神社仏閣で、鏡が御神体として祀られていることからも、神様が宿るとされていたと考えられていたことが見えてきます。
このことから丸いお餅を鏡に見立てて「鏡餅」と呼ぶようになり、お正月に歳神様(年神様)の依り代として飾るようになったのです。
2段になっているのは、「円満」や「夫婦和合」といった意味が込められていて、「月」と「太陽」を表すとともに、「陰」と「陽」も表しています。
鏡餅には歳神様(年神様)の霊力が宿るとされている
鏡餅は、お正月の間にその年の歳神様(年神様)の依り代となるものです。
松の内の間は、歳神様(年神様)の「御魂(みたま)」が鏡餅に宿っているとされています。
歳神様(年神様)は、その年の幸福・恵みをもたらしてくれる神様のことです。
歳神様(年神様)の霊力が宿ったお餅をいただくことで、わたしたちにも歳神様(年神様)の力を分けてもらおうというのが、鏡開きとなります。
鏡餅を食べて身体に入れることで、歳神様(年神様)の霊力をもらうということ。
鏡餅をいただくことには、一年間の「無病息災」を祈願するという意味もあるのです。
鏡餅は、刃物を使わないで分ける
鏡餅をいただくときには、木槌や金槌で叩いて、食べやすい大きさに分けていきます。
包丁などの刃物を使って分けることは、避けられているのです。
なぜかというと鏡餅は、歳神様(年神様)の「御霊(みたま)」が宿った、縁起のいい食べ物であり、その縁起のいいモノを「刃物で切る」ということは、昔の人にとって、武士が行う「切腹」を連想させてしまうものだったから。
武家に鏡餅の習わしの始まりがあることから、「刃物」と「切腹」との結びつきが強かったことも、こう考えられた理由の一つといえます。
また「包丁で切る」ということが、「縁を切る」ことをイメージさせるというものであることからも、刃物を使うことは縁起が悪いことになると考えられているのです。
「割る」はタブー!「開く」を使うようになった理由は縁起がいいから
なぜ「鏡開き」というようになったかというと、縁起の良し悪しが理由といえます。
鏡開きに刃物を使うことは縁起が良くない、というのと同じで、「割る」という表現も縁起が悪いと考えられたのです。
そのため「開く」という言葉を使うようになったのですが、これは末広がりという意味でもあり、縁起がいい言葉だから。
言葉として「鏡開き」のことを「鏡割り」ともありますが、縁起の悪い言葉を使いたくない、特にお正月というおめでたい時期で、鏡餅には歳神様(年神様)の御霊が宿っていることから縁起を重要視していたことが、「割る」がタブーとなり、「鏡開き」となった所以だということが出来るのです。
鏡餅を食べる事には「歯固め」の意味がある
鏡餅には、「歯固め」という意味もあります。
丈夫な歯を持つということは、昔から健康に長生きできると考えられていました。
現在でも「8020運動」として、80歳まで健康な歯を20本持つことを目標に、といわれています。
そのため健康や長寿を祈願するために、固くなった鏡餅を食べるという「歯固めの儀式」が行われていたのです。
これが現在の「鏡開き」となります。
もともとの「歯固めの儀式」は、平安時代に行われていた、宮中のお正月行事の一つ。
健康と長寿を祈願して、天皇に硬いものを献上して、カタイものを食べる、というものでした。
鏡餅をはじめ、大根や瓜、勝栗、押鮎、猪肉や鹿肉、雉肉や焼き鳥などといったものを、1月1日から3日の間に食べるのです。
食べるといっても、実際に食べるのではなく、箸をつけることで食べたこととされていたといわれています。
庶民が食べるものと、天皇が食べるものには違いがあり、天皇は蘿蔔味醤漬瓜、糟漬瓜、鹿宍、猪宍、押鮎、二塩鮎です。
お釈迦様にお供えしていた鏡餅から作られるお菓子「花供曾(はなくそ)」
多くのお寺で行われる「涅槃会法要(ねはんえほうよう)」。
お釈迦様が仏様になられたことを偲んで、毎年3月15日に行われる仏教行事です。
この時に売られていたり、寺院によっては配られていることもある「花供曾(はなくそ)」というお菓子があるのですが、これはお正月に本殿のお釈迦様に供えられていた鏡餅を小さく刻んで作ったあられのこと。
お釈迦様にお供えしていたものを、おさがりとしていただくことで、「無病息災」のご利益を受けることが出来るのです。
名前が「花供曾(はなくそ)」となった経緯ですが、仏様へのお供え物のことを「花供御(はなくご)」と呼ぶことから転じて「お釈迦様のはなくそ」となったとされています。
鏡開きの日は地方によって異なる
武家で行われていた行事「具足の祝い(ぐそくのいわい)」は1月20日に行われることから「二十日祝い」ともいう
鏡開きの始まりには、武家の伝統的な行事が関係しています。
戦国時代や江戸時代には、お正月に鎧や兜といった甲冑に「具足餅(ぐそくもち)」を供えて、そのお餅を木槌などで割って食べるという「具足の祝い(ぐそくのいわい)」という行事が行われていました。
この「具足の祝い(ぐそくのいわい)」が現在に伝わる「鏡開き」となっていったのです。
「具足の祝い(ぐそくのいわい)」が行われていたのは、毎年1月20日。
1月20日になった経緯は、語呂合わせで決まったとされています。
武士にとっては、命ともいえる大切な刀。
刀の「刃(は)」と「柄(つか)」の音から、「刃柄の祝い(はつかのいわい)」となり、「20日の祝い(はつかのいわい)」とされ、1月20日になったのです。
また、もともと1月20日は、「二十日正月」という行事があり、お正月行事を締めくくる日とされてきました。
「語呂合わせ」と「二十日正月」という二つが重なったことで、「具足の祝い(ぐそくのいわい)」が1月20日に行われていたのです。
三代将軍・徳川家光が死去したことから、「二十日祝い」を取りやめることになった
初めは1月20日に行われていた「具足の祝い(ぐそくのいわい)」ですが、ある時を境に日にちが変わることになります。
それは1651年(慶安4年)のこと。
1651年(慶安4年)4月20日、江戸幕府の第3代将軍である徳川家光が亡くなったのです。
この日以降、徳川家光の月命日にあたる20日が忌避されることになり、お祝いの行事にはふさわしくない日となってしまいました。
その結果1月20日に行うことを取りやめ、「具足の祝い(ぐそくのいわい)」は1月11日に変更されることになったのです。
ここでなぜ1月11日になったのかという理由ですが、大名家が米蔵などの「蔵開き」を行っていた日でもあったことから、選ばれた日。
これが現在の鏡開きの日にちとなっていることの、いきさつなのです。
一般的には「1月11日」
鏡開きの日は、一般的には1月11日とされています。
「具足の祝い(ぐそくのいわい)」が徳川家光の死を境に1月11日になったことから、江戸周辺では鏡開きが1月11日に行われることが広まっていきました。
そのため多くの地域では、現在でもこの風習のまま続いていて、1月11日に行われています。
昔の江戸を中心として、現在の関東地方、東北地方、九州地方など、ほとんどの地域ではこの日に行っているのです。
これは「松の内が1月7日まで」という地域に多く見られています。
実は「松の内が1月7日まで」と決められたのも、徳川家光が亡くなってから。
それまでは松の内は全国的に1月15日までとされ、鏡開きが20日でした。
大名家が行っていた、蔵開きに鏡開きが合わせられたことで、その前の1月7日までが松の内になったのです。
幕府が決めたことですが、現在みたいにすぐに日本中に伝わる時代ではなかったので、地域によってもともとの風習のまま残っているところもあります。
関西地方では「1月15日」
鏡開きが1月15日に行われる地域もあります。
関西地方では現在も1月15日に行われることが多く、これは江戸時代に関西地方では松の内が変わることなく1月15日だったから。
もともと全国的に松の内は1月15日までとされていたのですが、徳川家光の死後、江戸で「具足の祝い(ぐそくのいわい)」が1月11日へ変更された際、松の内が明けないうちに鏡開きをすることはおかしいとされ、松の内が明けてから鏡開きをすることになるよう、松の内を1月7日までとする、と決められました。
しかし江戸から離れていた関西地方には、この決まりがすぐに伝わらなかったこともあり、松の内が1月15日のまま続いてきたという背景があります。
そのため関西地方では、1月15日に松の内が明け、同じ日に鏡開きを行うという風習となって、現在まで残っているのです。
京都とその近郊の一部では「1月4日」
鏡開きをするのが1月4日だという地域もあります。
それは京都と、その近隣の一部地域。
京都とその近郊も関西地方なので、松の内の期間は1月15日までですが、鏡開きだけはほかの地方と違ってお正月の三が日が終わった後の、1月4日に行います。
なぜこの地域だけ1月4日に鏡開きをすることになったのか、その詳しい理由はハッキリとしていませんが、一説では「三が日が過ぎたら、お正月は終わりだという考えがあったから」と言われているのです。
しかし松の内まではお正月飾りを飾っておくことに、変わりはないので、理由としては明確なものではありません。
日本のほとんどの地域が1月11日か15日に行われますので、ほかの地域からすれば1月4日に鏡開きをするというのは、ビックリされるものです。
鏡餅の鏡開きの仕方
ホコリやカビを取り除く
鏡開きを行うための正確なやり方には、いくつかポイントがあります。
ポイントを守ってこそ、歳神様(年神様)のご利益が得られるのです。
鏡餅を下げる時は、神様への感謝を忘れないこと。
鏡餅は歳神様(年神様)の「御霊(みたま)」が宿っていますので、ご挨拶が必要です。
下げた鏡餅は、年末から2週間ほど飾っていますので、ホコリを被っていたり、表面にカビが生えている場合があります。
そのため濡れ布巾でキレイにしましょう。
カビが生えている場合は、拭きとった後に、鏡餅が水を被るくらいひたひたに水を張り、鏡餅を漬けます。
そのまま一晩置いておくと、カチカチだった鏡餅も少し柔らかくなりますので、カビが生えているところを少し広めに取り除きましょう。
表面には少しだけに見えるカビも、実際には奥の方まで入り込んでいる可能性が高いので、表面だけ取っておしまい、にはしない方がいいのです。
一晩水に浸けておいても、まだ固くてカビが取り除けない場合は、お皿に乗せてラップをかけ、レンジで20秒から30秒加熱してみましょう。
取り除ける程度の柔らかさになるまで、10秒ずつ追加しながら様子をみてください。
乾燥が強い鏡餅は、木槌や金槌で叩いて開く
鏡餅の状態によって、分け方にもそれぞれのポイントがあります。
鏡餅がこのうえなく乾燥しているという場合は、まるで石のように硬くなっているものです。
表面にひびが入ってしまっているものも多いといえます。
しかし、鏡餅はひび割れている方が、分けやすいので好都合だといえるのです。
鏡餅を布巾や新聞紙などでキレイに包んでから、木槌または金槌などで叩いて開きます。
食べやすい大きさに分けて、いただきましょう。
布巾や新聞紙で包んでおいた方が、粉々になってしまった部分も集めやすいので、鏡餅を余すところなくいただくことが出来るのです。
柔らかさののこっている鏡餅は「水につけてちぎって分ける」
乾燥が強くなく、まだ柔らかさの残っている鏡餅で、そのまま手でちぎれるのなら、手でちぎって食べやすい大きさに分けましょう。
まだ柔らかさは残っているけれど、手でちぎるのは難しい…という場合は、大きめの容器に水をひたひたに張って、鏡餅を一晩かけて水の中に漬けておいてください。
水に浸けて一晩置けば、お餅は柔らかくなっています。
しかしそれでもまだ手でちぎれない…という場合は、電子レンジで少しずつ温めてください。
一気に温めてしまうと、お餅がドロドロになってしまいますので、気をつけること。
20秒から10秒ずつ確認しながら温めていくように、電子レンジから目を離さないようにしましょう。
現代の家庭に多いのは「真空パック」の鏡餅
鏡餅を飾る風習は残っていても、昔のように各家庭で作ったものを飾っていることは少なくなってきています。
昔は暖房もなく、寒かった家の中だったので、カビが生えるのも遅かったかもしれませんが、現代のように、冬には暖房で家の中は暖かく保たれている状態だと、カビが繁殖するのも早いもの。
スーパーなどで売られている、真空パックの鏡餅なら、カビの心配もなく衛生的です。
そのため多くの家庭では、真空パックの鏡餅を飾っていることが多いといえます。
真空パックの場合は、製品の箱などに食べ方が書いてありますので、それぞれの製品の指示に従って食べるようにしてください。
なかには、鏡餅の形をした容器の中に個包装の切り餅が入っているだけのものもありますので、買う時にチェックして購入しましょう。
鏡開きの後の美味しいお餅の食べ方
乾燥している鏡餅は「揚げ餅」や「かき餅」に
鏡餅をどのようにしていただこうか、その食べ方に迷う人も少なくないといえます。
食べ方の一つとして挙げられるのが、「揚げ餅」や「かき餅」です。
フライパンにサラダオイルを多めに入れて、小さめのかけらをじっくりと揚げていきます。
浮かんできたものから順番に、油からあげて、塩を振って塩味にするか、砂糖醤油と絡めた甘辛い味付けに仕上げてもおいしいです。
「揚げ餅」や「かき餅」にするには、しっかりと乾燥している鏡餅を使うのがおすすめ。
乾燥しているものこそ、カリッと揚がります。
お餅の定番は「焼餅」
お餅といえば「焼き餅」は定番。
網で焼くのも良し、フライパンで焼いても良し、トースターで焼いても良し、焼き方はさまざまです。
焼きあがったお餅をそのまま食べるのもいいですが、あんこやきな粉をつけたり、砂糖醤油で食べてもいいですし、海苔で挟んでお醤油をつけて食べる磯辺焼きもおすすめ。
ひと手間加えてバター醤油にしたり、焼いたお餅を活用して、餅ピザも子どもには人気の一品です。
お子様と一緒に作ってみると、楽しい時間が過ごせることも間違いありません。
ダントツで縁起のいい食べ方は「お雑煮」
ダントツで縁起がいい食べ方だとされるのは、「お雑煮」です。
お正月に食べる縁起のいい食べ物でもある「お雑煮」ですが、鏡開きの頃には「もう食べ飽きた…」という人も少なくないといえます。
しかし歳神様(年神様)の「御霊(みたま)」が宿っている鏡餅で作る「お雑煮」は、また格別。
歳神様(年神様)のパワーと、縁起のいいモノの組み合わせで、ご利益にも効果がありそうです。
「お雑煮」の始まりは、歳神様(年神様)にお供えしたお餅と、野菜を若水を使って煮込んで食べたことでもあります。
若水というのは、一年で一番最初に汲んだお水のことです。
もともと鏡餅を「お雑煮」にして食べていたことが始まりなので、鏡餅の食べ方としては、一番しっくりくる食べ方だといえます。
「お汁粉」や「ぜんざい」も縁起がいい食べ物の一つ
「お汁粉」や「ぜんざい」も、鏡餅の食べ方としては縁起がいいものだといえます。
「お餅」と「あんこ」はとても相性がいい組み合わせです。
昔から「お汁粉」や「ぜんざい」はよく食べられていたもの。
特に、あんこに使われている小豆には、魔除けのパワーがあるとされていて、「厄除け」や「無病息災」の願いが込められて食べられていました。
そんな小豆と鏡餅を使って作る、「お汁粉」や「ぜんざい」は、お正月明けに食べるものとしては、最適な食べ物だといえるのです。
また鏡開きの頃には、冬真っただ中なので、温かい「お汁粉」や「ぜんざい」で身体を温めながら、歳神様(年神様)のパワーと小豆のパワーがいただけるなんて、うれしいもの。
一年の「厄除け」と「無病息災」を願って「お汁粉」や「ぜんざい」を作るのもおすすめです。
いつも同じ食べ方で飽きたなら「くるみ餅」がおすすめ
北陸地方・岩手県の郷土料理である「くるみ餅」も、ぜひ食べておきたい一品。
お餅はいつも焼くか、定番の「お汁粉」や「ぜんざい」、「きな粉餅」くらいしか作らないし、お雑煮も飽きて変わり映えしないな…と思ってしまう人も多いものです。
そんな時におすすめしたいのが、「くるみ餅」だといえます。
作り方も、そんなに難しくはないですし、くるみダレが香ばしくて濃厚で絶品です。
軽くローストしたくるみを、すり鉢ですりつぶしながら、水を少しずつ加えてペースト状にします。
すり鉢でなくても、フードプロセッサーを作って簡単に作ることも可能です。
くるみのペーストが出来たら、お好みの甘さになるように砂糖で味を調節して、少量の醤油を加えればタレの完成です。
ゆでたり焼いたりした鏡餅に、くるみダレをたっぷりとかけて「くるみ餅」の出来上がりになります。
くるみダレが余ったら、サラダのドレッシング代わりにもなりますし、お肉を焼くときに使ったりと、いろいろな料理に活用も可能です。
「あんこ」と人気を二分する「きなこ餅」
お餅の食べ方で、「あんこ」と人気を二分する「きな粉」で食べる「きな粉餅」。
ゆでたお餅でも、焼いたお餅でも、どちらで食べてもおいしいといえる「きな粉餅」は、鏡餅の食べ方として人気の食べ方でもあります。
調理も簡単で、きな粉とお砂糖を混ぜてかけるだけ。
大人向けなら、黒蜜を追加してもいいですし、抹茶きな粉にしてみても、おいしいといえます。
「あんこ」も「きな粉」もどっちも捨てがたい、という人は贅沢に両方を使って食べてもいいかもしれません。
ボロボロになった欠片は「汁物」や「鍋料理」に入れて最後までいただきましょう
木槌や金槌で分けた時に出来た、ボロボロの欠片。
ほとんど粉状になってしまったものもあって、「捨てるしかないかな…」と思ってしまいがちですが、ボロボロの欠片とはいえ、歳神様(年神様)の「御霊(みたま)」が宿っているので、決して捨てるなんてことはしないようにしましょう。
寒さ真っただ中の季節なので、冬定番の鍋料理や温かい汁物が食卓に上ることも多い時期だといえます。
お餅は汁物や鍋料理にも、相性が合うといえる食材です。
ボロボロになった欠片は、汁物や鍋料理に入れてしまえば、ほかの食材と一緒にいただくことが出来るといえます。
もちろん、ボロボロになっていないお餅も一緒に入れてもおいしくいただけるのです。
またグラタンなどにチーズと一緒にふりかけたり、なかに混ぜ込んだりしてもOK。
どんなにボロボロになったとしても、鏡餅はすべて残すところなく、いただいてください。
酒樽の鏡開きの関係と樽酒の鏡開きの仕方
鏡は樽酒の丸い蓋を指している
「鏡開き」といえば、お正月に鏡餅をいただくための鏡開きではなく、お祝いの席でよく見かける、酒樽の鏡開きのことを思い浮かべる人もいます。
なぜ同じ呼ばれ方の「鏡開き」と呼ばれているのか、疑問に想っている人も少なくありません。
酒樽の鏡開きの鏡というは、酒樽の上に乗っている丸い蓋のこと、鏡板を指しているのです。
鏡餅の由来となっている、三種の神器である青銅と同じ由来が、酒樽の蓋にもあるとされています。
日本の主食はお米ですが、お餅もお酒も同じお米から作られるもの。
「稲魂(いなだま)」という言葉や「穀霊(こくれい)」という言葉を聞いたことがある人も多いものですが、昔から日本人は「お米一粒一粒には、霊力が宿る」と考えていました。
神事の時に、お餅やお酒をお供えすることが多いのは、お米を搗いて作るお餅、お米を醸造して作るお酒には、一粒一粒に宿っているお米の霊力がさらに増すと考えられたことからきているのです。
酒樽の鏡開きをする時には、神前にお供えされた後に、酒樽のお酒が振る舞われるのですが、これは神様に供えられたお酒を飲むことで、神様の持つパワーを分けてもらう、という意味があります。
鏡餅の鏡開きも酒樽の鏡開きも、基本的な部分は同じ理由なのです。
「割る」は縁起が悪いとされ、「開く」が使われるようになった
酒樽の鏡開きも「割る」ではなく「開く」が使われています。
これは鏡餅の鏡開きと、理由は全く同じなのです。
「割る」という言葉は縁起が悪く、その代わりとして、末広がりの縁起のいい「開く」という言葉が使われるようになったということ。
また「鏡を開くことによって、運が開けていく」という意味も込められています。
古来から樽酒は縁起が良いとされていて、お祝いの席には欠かせないものとされてきました。
大きな樽酒を多くの人で分け合って飲むことが、「幸せをみんなで分け合っている」という意味も持っているのです。
鏡板を開ける時に「刃物を使わない」
酒樽は、とても頑丈に作ってありますので、鏡板を木槌でコツンとしたくらいで簡単に開く代物ではありません。
鏡開きをする前にあらかじめ鏡板を開けておき、セレモニーの際に開けたように見せかけているだけなのです。
そのためセレモニーの前には、鏡板を開けておかなければいけません。
この時に、刃物を使って開けることはタブーだとされています。
酒樽も、鏡餅と同じように神様にお供えすることで、神様のパワーが宿るものです。
そんな神様のパワーが宿っているものに、刃物を使ったり、バールを使って開けようとするなんて、もってのほか。
刃物を使わずして、開けなければいけません。
刃物を使ってはいけない、というところも鏡餅の鏡開きと一緒なのです。
上部の太縄を切る
酒樽はとても頑丈に作られていいますので、鏡板を開けるまでの工程も、骨が折れる作業です。
本来は刃物は使ってはいけない、とされていますが、現在では開けるまでかなりの時間を要することから、実際には刃物を使って開けられることも多くなってきているのが事実。
初めに上部にある太縄をほどきます。
昔は手作業でほどいていたのですが、現在でのやり方は、カッターや鎌などを使って、肩の辺り、もしくは結び目に近い当たりを切るようです。
この太縄は、とてもきつく縛ってあって、太いので、切るのも一苦労します。
コモの細縄を外していく
太縄を切った後は、コモに組み込んである細縄を外していきます。
この細い縄は「くちかがり縄」と言って七五三に結んであるのです。
この細縄も、本来は一つ一つ手作業で外していくものですが、太縄と同様に、現在ではカッターで切っていくことが主流になっています。
コモをキレイに内側に織り込んでいく
コモに組み込んである細縄がすべて外れたら、コモを内側に織り込んでいきます。
樽とコモの間に織り込んでいくのです。
コモを織り込んでいく方法は、正面から織り込んだ方がいいとする説と、後ろ側の合わせ目のところから織り込んでいった方がいいとする説とありますが、どちらのやり方でも構いません。
大事なのは見た目がキレイに仕上がることなので、丁寧に織り込んでいくことです。
コモをすべてキレイに織り込んで終わったら、太縄を中に織り込んでいきます。
太縄が小物ストッパーの役割となって、コモが出てくることを防いでくれるのです。
鏡板を外す
コモをキレイに織り込み終わったら、いよいよ鏡板を外していきます。
鏡板の上や隙間に入り込んでいる藁のくずを取り除いた後、樽と鏡板の間にバールを差し込むのです。
この時に、鏡板の目に対して垂直になるように、バールを木槌で打ち込みます。
場所を変えながら、「テコの原理」を使って少しずつ開けていきましょう。
無理矢理力任せに開けようとしたり、一か所だけを集中的にこじ開けていると、樽の口がへこんでしまったり、傷がついてしまったりするので気をつけてください。
現在ではここでもバールを使うことが多くなっていますが、本来はかまぼこ板と木槌を使って、100回以上も打ち込んでやっとのこと。
昔の人は、毎回この作業をしていたと思うと、気が遠くなるような作業です。
切りくずや破片をキレイに取り除く
鏡板を外し終わると、お酒に入ってしまった切りくずや破片を取り除きます。
茶こしなどを使って、取り残しのないように、すくっていってください。
この時に樽とコモの間に残っている切りくずがあれば、一緒に取り除いてキレイにしておきましょう。
ただしあまり触り過ぎると、せっかくキレイに織り込んだコモが乱れてしまったり、新たにコモのくずがお酒の中に入ってしまうことが考えられますので、気をつけてください。
最後は「鏡板」を戻して「木槌」を乗せる
お酒に入った切りくずがキレイに取り除けたら、鏡板の形を整えて、もう一度樽に蓋をします。
鏡板の中央に木槌を置いたら、セレモニーへの準備は完了です。
場合によっては樽の周りに紅白のリボンで装飾を施したりする場合もありますので、そういった準備は、この時にしてしまいましょう。
太縄をほどくところから、セレモニーへの準備が完了するまでかかる時間ですが、慣れている人でも10分以上かかるといわれています。
慣れていない人だと、1時間以上は余裕でかかってしまうほどの作業といえるのです。
鏡開きのセレモニーでは「鏡板の中央」を叩いて開く
準備ができたら、いよいよセレモニーで鏡開きをする時。
セレモニーでは、数人が木槌で鏡板の中央をたたいて開きます。
「よいしょ、よいしょ、よいしょ」と唱和して、三度目の「よいしょ」の時に、木槌を振り下ろすのです。
鏡開きをした後は、酒樽の中のお酒をマスに注いで、みんなで乾杯します。
準備する樽のサイズですが、100名に対して1斗樽。
100名から200名で2斗樽、200名以上の場合は4斗樽を準備しておけば大丈夫です。
1斗樽は18リットルで、「斗」というのは、「升」の10倍という昔の単位になります。
結婚式やお祝いの席で利用可能!酒屋や通販でも取り寄せ可能
酒樽といえば、お祝いの席で準備されるものであり、結婚式や祝賀会など。
テレビで見かけることも多く、プロ野球の優勝祝賀会や、大相撲の優勝祝賀会、電車の開通式などのニュースでは、鏡開きをしている様子が流れることもあります。
なかなか実際に鏡開きをする機会というのはありませんが、結婚式やなどで参加したことがある人も。
自分が何かの幹事になった時に、「ぜひとも鏡開きをやってみたい!」と思うなら、近くの酒屋さんで聞いてみるのが一番だといえます。
鏡開きの準備を自分でしようと思えば、初心者では難しい部分があるのは事実。
実際にご紹介した方法ですれば出来ないことはないのですが、それでもかなり時間がかかってしまいますし、最悪できなかった場合を考えるとせっかく準備した鏡開きが出来ない、なんてことにもなりかねません。
その点酒屋さんに相談してみれば、準備までやってくれる可能性も高く、安心できます。
本来酒樽は1斗のものから準備されますが、1斗といえば18リットル。
「さすがにそんな大量にはいらないな…」と諦めてしまいがちですが、最近ではネット通販でも鏡開きセットが購入できます。
サイズも、ミニサイズのモノも売られていて、数人で鏡開きが楽しめるようになっているのです。
ただ、多くのものが受注生産となっていますので、実際に使いたい日からは余裕を持って注文するようにしましょう。
レンタルのものもありますので、用途に合わせて探してみてください。
占い師 RINのワンポイントアドバイス「鏡開きは一年を無病息災で過ごす願いを込めて」
歳神様(年神様)の「御霊(みたま)」が宿っている鏡餅をいただくためのポイントをしっかりと守って、一年間のご利益をいただきましょう。
鏡餅は年末に飾って、鏡開きで全てを食べ切ることで、ご利益があるものです。
ボロボロになった欠片まで、残してしまうことのないように、余すところなくいただいてください。