古代中国では、半年ごとの季節の移り変わりを示している「二十四節気(にじゅうしせっき)」というものがあります。
この二十四節気をさらに細かく、5日ごとに分けて、気象の変化や動物・植物などの変化などを示すものが「七十二候(しちじゅうにこう)」といわれるものなのです。
江戸時代以降、日本では時代が移り変わるにつれて、中国で作られた七十二候を日本の風土や気候に合わせて改訂されてきた日本独自の七十二候ですが、現在のものは明治時代に改定されてできたもの。
今ではあまり馴染みのない人も多くなってきた旧暦ではありますが、その時期に表れる兆しや移り行く季節の変化をいろいろと感じさせてくれるものなのです。
ここでは七十二候の第四候「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」の意味・時期・旬の野菜・魚介類・草花・運気アップの方法まで詳しく紹介していきます。
「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」とは、雪の季節が終わり、春を実感していくことが出来る季節です。
小さな変化だけでなく、視覚的にも春の訪れをハッキリと感じ始めることが出来ます。
日々の暮らしに季節を感じるための、参考にしてください。
目次
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)の意味
「春になって雪は終わり、あたたかな雨が降り注ぐことで、大地が潤い始めて目覚める頃」という意味になります。
徐々に春が訪れているという実感を日常的に感じ取ることができ、雨が降るごとに暖かくなってくる「三寒四温」という言葉も頻繁に聞くことが増えてくるこの時期。
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)は、二十四節気の「雨水」の初候であり、七十二候の第四候です。
降っていた雪もいつしか雨に変わり、真っ白な雪景色からだんだんと雪が解け、大地の色が見えてくることで、視覚的にも春の訪れを感じ始めます。
雨が多くなってくる季節ではありますが、その雨が雪解けを加速させるとともに、気温も少しずつ上げて暖かくなっていくのです。
雪解けが起こり、固く凍っていた大地がぬかるみ始めることから、昔の人はこの時期になると、農耕の準備を始める目安としていたといいます。
しかしながら現代では雪崩や大雨、突風など天気が荒れ始めるイメージのある人も少なくないといえ、昔と比べると大きく変化していることも多いものです。
もともとこの時期は「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」ではなく、「獺魚祭(かわうそうおをまつる)」でした。
これはカワウソが魚を捕まえた後にすぐ食べるのではなく、獲っては岸に並べている様子を見た昔の人が、「カワウソが祭りの供え物をしているようだ」と見えたことから生まれた言葉だったのです。
また中国から入ってきた七十二候ですが、そのまま現在も使われているものと、書き換えられたものがある中で、「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」は、日本向けに書き換えられた一つだといえます。
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)の時期は「2月19日~2月23日頃」
2022年 | 2月19日~2月23日 |
2023年 | 2月19日~2月23日 |
2024年 | 2月19日~2月23日 |
2025年 | 2月18日~2月22日 |
2026年 | 2月19日~2月22日 |
2027年 | 2月19日~2月23日 |
2028年 | 2月19日~2月23日 |
2029年 | 2月18日~2月22日 |
2030年 | 2月19日~2月22日 |
2031年 | 2月19日~2月23日 |
この時期の言葉には「藍蒔く(あいまく)」という言葉があります。
「藍蒔く」とは春の季語でもあり、この時期に種を蒔くことからできた言葉。
「藍」とは、タデ科の一年草のことなのです。
日本に中国から渡ってきたのは6世紀ごろで、最も古くからある染料植物の一つ。
2月ごろに種を蒔いて、苗が17センチほどに成長してから、畑に移植します。
昔は徳島の阿波はこの藍の名産地であり、種を蒔く際には御神酒(おみき)を苗床に振りまくという習わしがあったのです。
ところが江戸時代の中頃には盛んに栽培されていた藍ですが、明治時代ごろからは藍玉が輸入され始め、その後ドイツで人工藍の工業化となったことから、輸入する量が増えていきました。
そのため現在では、ほとんど日本で藍の栽培はされなくなってしまったのです。
日本では昔から「藍染め」が伝統的で、着物などに使われていたもの。
今でも藍染めはさまざまなものに使われています。
着物はもちろんのこと、スカーフやバックなどにも藍染めの技術が使われていて人気のあるものです。
藍といえばこんなことわざがあります。
「青は藍より出でて 藍より青し」
弟子が師匠の学識や技量を超えることのたとえとして、使われています。
またこの時期に多い雨にはさまざまな呼び名があるのです。
「養花雨(ようかう)」「甘雨(かんう)」「慈雨(じう)」「催花雨(さいかう)」などと呼ばれていて、これは「降り始めた雨が花や木に養分を与える」ということからきています。
二十四節気では「雨水(うすい)」に当たる時期なので、昔の人が雨を大切に思っていたことを感じ取ることが出来るのです。
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)の旬の野菜は「春キャベツ」
「春キャベツ」の基本情報
栄養 | ・ビタミンC:風邪の予防・疲労回復や、美容・肌荒れに効果があります。
・ビタミンK:血液の凝固促進・骨の形成に必要な成分です。 ・ビタミンU:抗潰瘍作用があるので、胃や腸などの潰瘍の予防や治療に効果があります。 ・ジアスターゼ:消化を助ける・胃もたれ・胸やけ・胃酸過多に効果があり。 |
選び方 | 外の葉がみずみずしいものを選びましょう。
緑色の濃いもので、艶のあるものを選んでください。 |
保存方法 | ビニール袋などに入れて、袋の口を緩く閉じて野菜庫に入れましょう。
軸の部分をくり抜いたところに水を含ませたキッチンペーパーを詰めておけば、長持ちします。 時々キッチンペーパーは新しいものに取り換えましょう。 |
その他、お役立ち情報 | ・冬キャベツは重い方がいいといわれますが、軽い方が春キャベツの良さが楽しめます。 |
「春キャベツ」の特徴
春キャベツは、冬キャベツに比べて巻きが緩く、ぎっしりとしておらず、葉が柔らかいのが特徴です。
中心の方まで緑色が強く、中の方は黄緑色をしています。
春キャベツが店頭に並び始めるのは、早ければ2月の終わりごろ。
5月ごろまで購入ができますので、春の間だけ楽しめることの出来るキャベツなのです。
葉が柔らかいこともあって、火の通りは早く、炒め物に使ってもキャベツの食感を楽しむことが出来ます。
「春キャベツ」のおすすめの食べ方・調理法
春キャベツは、葉が柔らかいので生で食べることに向いています。
千切りにせず大きめにちぎって、サラダにしてみてください。
胡麻和えや、蒸し焼きにするのもおすすめです。
春キャベツだけをニンニクで蒸したり、アサリなどの貝類と一緒に蒸してもおいしいもの。
ロールキャベツは定番ですが、春キャベツで作る方が、葉が柔らかいので包みやすく、調理がしやすい利点があり、口当たりもいいといえます。
炒め物に使うなら、最後にサッと炒めて食感を楽しみましょう。
またクックパッドの「春キャベツ」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)の旬の魚介類は「トビウオ」
「トビウオ」の基本情報
栄養 | ・ビタミンE:活性酸素を抑えてくれる効果があるので、不飽和脂肪酸の酸化を防ぎ、動脈硬化・心筋梗塞などの生活習慣病の予防に役立ちます。
・ナイアシン:二日酔いを予防する効果があります。 |
選び方 | 目が黒く澄んでいるものや、エラに赤みがあるものが新鮮。
全体的にツヤがあって、みずみずしさの感じられるものを選んでください。 |
保存方法 | トビウオを丸ごと保存したい場合は、下処理はせずに容器や袋に水を張って入れて、冷凍保存をしましょう。
フィレの場合は、ラップで等で隙間なく包むか、袋に入れて脱気包装をして冷凍してください。 |
その他、お役立ち情報 | ・トビウオは50種類以上が確認されています。
そのうちの4種類が食用として流通しているのです。 |
「トビウオ」の特徴
トビウオは胸びれと腹びれが、大きな翼のようになっているものを持っていることが、最大の特徴です。
名前の通り、海を泳ぐだけでなく、飛ぶことの出来る魚。
魚は普段、「一匹・二匹…」と数えるのが一般的ですが、魚の種類によっては数え方が違うものもいます。
トビウオはどうやって数えるかというと、実は「一羽、二羽…」と数えるのです。
これはトビウオが飛ぶことが特徴だから。
鳥のように数える魚は、とても珍しいということが出来るのです。
種類によってトビウオが飛べる距離は変わってきますが、平均すると約200メートル。
大型種では、600メートルほどの飛距離になるものもいるのです。
「トビウオ」のおすすめの食べ方・調理法
新鮮なトビウオは、お刺身でいただくのがおすすめです。
脂が少なく、生臭さもほとんど感じません。
焼き魚にする場合は、塩をたっぷりと塗り込んで塩焼きに。
ただ脂が少ないので、焼きすぎてしまうとパサパサになってしまいます。
トビウオは煮つけにはあまり向いていないので、おすすめはできません。
煮つけや汁物に使いたい場合には、つみれにすることでおいしくいただくことが出来ます。
またクックパッドの「トビウオ」に関連するレシピも参考になるので是非ご覧ください。
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)の旬の草花は「ツバキ」
「ツバキ」の基本情報
学名 | Camellia japonica |
科・属 | ツバキ科・ツバキ属 |
原産国 | 日本(本州・四国・九州・沖縄)・中国(山東・浙江)・台湾・朝鮮半島南部 |
別名 | ヤブツバキ・ヤマツバキ |
「ツバキ」の特徴
ツバキの持つ最大の特徴といえば、葉です。
光沢があり、濃い緑色をしていて、厚みがあります。
そして葉の周りには、上向きに細かいギザギザがついているのです。
花の色には、赤・ピンク・白色があります。
ツバキは日本を代表する花の一つで、その歴史は深く、日本書紀や万葉集に記述が残されているのです。
また縄文時代の遺跡からツバキの花の種が見つかった事例もあります。
神事には欠かすことのできない花の一つであり、神社やお寺にも植えられていることが多いことはよく知られているものです。
「ツバキ」の花言葉
ツバキは、「控えめな優しさ」「誇り」が花言葉です。
花の色ごとに別の花言葉もあり、赤いツバキは「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」「謙虚な美徳」。
白いツバキには「完全なる美しさ」「申し分ない魅力」「至上の愛らしさ」という花言葉で、ピンクのツバキについている花言葉は「控えめな美」「控えめな愛」「慎み深い」になり、どのツバキにも美しさに関しての花言葉が多いといえるのです。
その反面、ツバキには「死」を連想させるイメージがあり、日本でもお見舞いや、年配の方のお祝いなどには避けられることが多いもの。
人に送る際には、ツバキは気をつけるべき花でもあるということなのです。
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)の旬の行事は「お伊勢参り」
この時期の行事といえば「お伊勢参り」だといえます。
現在でも「一度は行ってみたい!」と思っている人も多い伊勢神宮。
時期を問わず、たくさんの参拝者が訪れています。
江戸時代中頃から、庶民の間で伊勢神宮に参拝することが盛んになってきたという背景があるのです。
今では交通機関の発達で各地から新幹線や飛行機、バスなどを利用すれば半日ほどで行くことが出来るのが当たり前のもの。
しかしながら昔は歩くことでしか移動のできなかった時代で、江戸からは片道15日、大阪からでも片道5日という距離になります。
自由な移動でさえ許されていなかった当時ですが、お伊勢参りであれば通行手形が認められていて、誰しもが憧れるものだったのです。
京や大阪へと足を延ばすこともできる、貴重な長旅。
季節がいいとされている春に、昔の人はお伊勢参りへと出かけたといわれています。
現在も昔も、「伊勢神宮へ参拝に行く」ということは人々にとって「憧れ」ともいうことが出来るものなのです。
伊勢神宮へ参拝する際や、「伊勢神宮にお参りがしたいな…」と思った時には、そんな昔の人の思いに気持ちを馳せてみてもいいもの。
なかなか当時の人と同じ思いを感じることは難しいといえますが、お伊勢参りに関してはそんな昔の人と同じ思いを感じることが出来る、素晴らしい機会だといえるのです。
土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)の運気アップの方法は「軽い運動から始めてみましょう」
この時期に運気アップをするには、運動をすることです。
日頃からトレーニングをしていたり、運動をしている人も多いですが、寒い冬は人も動かず、家にこもってしまいがち。
自分は動いているつもりでも、自然と身体が動きを制限してしまっていることもあるのです。
季節は春を迎えましたので、そろそろ動き始める準備を始めなくてはいけません。
暖かくなって動きやすくなったからといって、急に動いてしまうと身体はビックリしてしまいます。
身体の方の準備ができていないこともあり、急な運動は逆に身体を痛めてしまったりすることになってしまいかねません。
そうなってしまわないようにするためにも、この時期は身体を動かし始めるための準備をしておきたいところ。
軽いストレッチや運動でいいのです。
急にハードな運動をすることはおすすめしません。
まずは冬の間に動かしておらず、固まってしまっている筋肉をほぐしていくことから始めましょう。
少しずつ身体を動かして、慣らしていくのです。
この時期に身体を動かしておくことで、春に良く言われる5月病のような、春先に感じるだるさや不調を防ぐことにも繋がっていくもの。
無理をしない程度のことから始めましょう。
他の七十二候の意味や時期の一覧
占い師 RINのワンポイントアドバイス「五感で実感してみてください」
これまでは暦の上では春が近くなったとはいえ、気温もまだ低く、雪も残っていることでなかなか実感のなかったもの。
雪が解けることで大地の色が見え始め、花が咲き始めることで暖かな色合いに気持ちも昂ります。
雨が降るごとに気温も徐々に上昇していくということを、肌で感じることも出来はじめるのです。
視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の全てで、春への移り変わりを確かに感じることができるということ。
そんな季節の変化を五感で実感してみてください。