
十三仏とは何か?その意味や役割から、真言の唱え方・十三尊の見分け方・曹洞宗での位置づけ・掛け軸を飾るタイミングまで丁寧に解説。
各仏の個別ページも掲載!
目次
十三仏とは?意味と由来をわかりやすく解説
十三仏の由来と成り立ち
十三仏(じゅうさんぶつ)とは、亡くなった人の魂を浄化し、極楽浄土へ導くとされる13尊の仏・菩薩・明王たちのことを指します。日本の密教や浄土系仏教、特に真言宗や天台宗を中心に広まった信仰体系であり、後には曹洞宗などの禅宗でも一定の受容を見せました。
この思想は、故人が亡くなってからの追善供養(ついぜんくよう)と深く関係しており、死後七七日(しちしちにち/四十九日)までの中陰法要や年忌法要にそれぞれ対応する仏が割り当てられています。十三仏は「冥界の導師」として、私たちの魂を段階的に浄化・審判・成仏へと導く存在とされているのです。
十三仏が供養・冥界で導く役割とは?
十三仏は死後の世界における各段階の裁判官や導師に相当すると考えられています。初七日から三十三回忌まで、それぞれの仏が法要の主尊として登場し、故人の罪を裁くと同時に、その魂を次の段階へ導いていきます。
この構造は、インドや中国の地獄思想と日本固有の先祖供養観が融合した結果とされ、十三仏信仰は日本独自の発展を遂げました。
十三仏一覧とそれぞれの役割・対応する日程
以下に、十三仏の一覧と、それぞれが対応する法要・真言・見分け方を示します。
①不動明王(初七日)
怒りの表情で迷いを断つ守護神。
怒りの表情、炎を背負い、剣と羂索を持つ忿怒の姿が特徴。
真言:ナウマク・サンマンダ・バザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン
②釈迦如来(二七日)
真理を説き、死後の魂に悟りを与える。
素朴で静かな顔立ち、螺髪、右手を挙げ左手を下げる施無畏印と与願印。
真言:ノウマク・サンマンダ・ボダナン・バク
③文殊菩薩(三七日)
知恵の象徴。故人の魂に正しい判断をもたらす。
獅子に乗り、右手に知恵の剣、左手に経典または蓮華を持つ。
真言:オン・アラハシャノウ
④普賢菩薩(四七日)
善行を導く菩薩。地蔵と対をなす存在。
白象に乗り、蓮華や経巻を持つ。女性的な柔和な姿。
真言:オン・サンマヤ・サトバン
⑤地蔵菩薩(五七日)
六道を巡り苦しむ魂を救う存在。
剃髪し袈裟を着け、錫杖と宝珠を持つ僧形の菩薩。
真言:オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ
⑥弥勒菩薩(六七日)
未来仏。来世で救いをもたらす。
右手を頬に添える思惟の姿。宝冠をかぶる場合も。
真言:オン・マイタレイヤ・ソワカ
⑦薬師如来(七七日)
病を癒し、現世・来世の安寧を与える仏。
左手に薬壺(やっこ)を持ち、右手で施無畏印。
真言:オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ
⑧観音菩薩(百か日)
慈悲の象徴。心を癒す女神的存在。
十一面や千手の形態もあるが、通常は蓮華を持つ優美な姿。
真言:オン・アロリキャ・ソワカ
⑨勢至菩薩(一周忌)
智慧の光で道を照らす。阿弥陀如来の脇侍。
頭上に水瓶を載せた宝冠を持ち、合掌印を結ぶことが多い。
真言:オン・サンザンサク・ソワカ
⑩阿弥陀如来(三回忌)
極楽浄土の主尊。救済を司る仏。
来迎印(合掌した手の中指を立てる)を結ぶ端正な姿。
真言:オン・アミリタ・テイセイ・カラ・ウン
⑪阿閦如来(七回忌)
動じない心の象徴。東方世界の如来。
金剛拳を結ぶ印相、怒りを鎮める力を象徴する落ち着いた姿。
真言:オン・アキシュビヤ・ウン
⑫大日如来(十三回忌)
宇宙の真理そのものを表す中心仏。
法界定印(両手を重ねて下腹部)を結ぶ、中央に座す荘厳な姿。
真言:オン・バザラ・ダトバン
⑬虚空蔵菩薩(三十三回忌)
記憶と智慧の宝庫。輪廻転生を超越する力を持つ。
宝剣や宝珠を持ち、記憶や学問の仏として尊ばれる。
真言:ノウボウ・アキャシャ・ギャラバヤ・オン・アリキャ・マリボリ・ソワカ
十三仏の真言の唱え方と覚え方
それぞれの仏の真言一覧
真言とは、仏や菩薩の名をサンスクリット語で音写したもので、念誦することで加護が得られるとされます。上記の一覧に記載した通り、十三仏それぞれに対応する真言があり、仏前や写経の際に唱えられます。
声に出して唱えるときのコツ
真言は、感謝の気持ちと一心な心で唱えることが大切です。発音や節回しは地域や宗派によって若干異なりますが、無理に正確に読もうとするよりも「心を込める」ことが重要とされます。
朝や仏前での唱え方のマナー
朝の静かな時間や、年忌法要の際、掛け軸や仏像の前で灯明をともして唱えると、より深い祈りとなります。
十三仏の見分け方【仏像・掛け軸のポイント】
持ち物・印相(手の形)で見分ける方法
それぞれの仏は独特の持ち物(錫杖、剣、宝珠など)や印相(手の形)によって識別可能です。不動明王は剣と羂索を持つ怒りの姿、大日如来は法界定印を結ぶ坐像などが代表例です。
仏像・絵像・掛け軸による違い
仏像は立体的で迫力があり、細部まで細工されています。一方、掛け軸は持ち運びやすく、年忌法要やお盆に飾る文化があります。十三仏が一堂に描かれた掛け軸も多く、見分けやすく配置されています。
仏師や地域によって異なる表現に注意
仏の姿かたちは、時代や地域によって少しずつ異なるため、細かい表現の違いにも柔軟に対応する姿勢が求められます。
宗における十三仏の扱いとは?
曹洞宗の年忌法要との関係
曹洞宗は本来、仏を一尊とする一仏教を重んじますが、民間信仰と融合する中で十三仏信仰が取り入れられました。特に年忌供養の際には、十三仏掛け軸を用いて行われるケースも見られます。
宗派との違い(浄土宗・真言宗など)
真言宗や天台宗では本格的に十三仏供養を行いますが、曹洞宗ではあくまで補助的な位置づけであり、導師の判断により柔軟に用いられます。
曹洞宗寺院での十三仏信仰の実例
寺院によっては独自の年忌表や説明書きと共に十三仏掛け軸を掲げることもあり、信徒にとって仏縁を深める入口となっています。
十三仏の掛け軸はいつ飾る?正しい扱い方と飾り方
十三仏掛け軸を飾る時期とタイミング
一般的に、初七日から三十三回忌までの法要やお盆、お彼岸などの先祖供養の際に飾ります。年忌に該当する仏が中央に描かれていることが多く、故人を偲ぶ心の支えになります。
お盆・法事・年忌での飾り方と作法
仏壇の上部や壁面に掛け、清浄な場所に供物や花、灯明を供えるとよいでしょう。正面に座り、静かに真言を唱えることで仏の加護を願います。
掛け軸の収納・保管方法の注意点
湿気を避け、桐箱や専用の保管箱に納めるのが理想です。年に一度は風を通して状態を確認するのがおすすめです。
まとめ|十三仏と向き合うことで得られる心の安心
十三仏は、単なる葬送儀礼の道具ではなく、私たちが「命」や「死後の世界」とどう向き合うかを教えてくれる存在です。日々の祈りの中で真言を唱えることは、心の安らぎや先祖とのつながりを実感する大切な時間となるでしょう。
信仰や宗派に関わらず、十三仏の教えはすべての人にとって「死を超えて生きる力」を与えてくれるのです。